ラーメン&つけ麺食べ歩き
とら食堂
(福島県 白河市)
店名 手打中華 とら食堂(とらしょくどう) 住所等 福島県白河市大字双石滝ノ尻1 【地図表示】 禁煙 タバコ可(灰皿あり) 訪問日 2005年7月上旬 手打ち中華 630円 2006年7月上旬 ワンタンめん 780円
焼豚めん 840円2006年7月上旬2 二代目の味 業 950円
つけめん(冷) 630円
〜手打中華とら食堂 その1〜
JR白河駅から県道11号を東へ約5Kmほど進むと、
「とら食堂この先50m右」の看板が登場します。
黄色のセンターラインの道が県道11号です。
うむ、確かに・・・50mほどで到着しました。
駐車場はかなり広めですが、それでもほぼ満車状態・・・。
その上、店頭には待ち客も・・・。
一見すると、二階建ての民家風ですが・・・
内側は2Fまで吹き抜けになっていて、
完璧に「店舗」の造作です。
営業時間と定休日です。
高原ロッジを彷彿とさせる「オール天然木」仕様。
天井が高く二階部分まで吹き抜けです。
厨房にいらっしゃるのは二代目店主さんかな。
壁面に貼られたメニュー。
7月とはいえ「冷し中華」があるのは意外ですな。
「つけ麺」も白河では珍しいでしょうね。
「手打ち中華」を注文しました。
大満足で食べ終わり、とら食堂を後にします。
帰り道は逆の方向(南側)の道を使ってみました。
お店の南側一帯は・・・田んぼが広がる「のどか」な風景。
中央の白い建物がとら食堂です。
2005年7月上旬 手打ち中華 630円
(この写真はクリックで拡大します)
ともかく良質な「鶏」の抜群の旨味とコク、
第一級の「厳選素材感」に満ちたスープが実に「鮮烈」な美味しさ。
麺も、具も、本当に器の中に存在する「すべて」が完璧な作り込み。
実に隅々まで神経と愛情が行き届いていますね。
類まれなる自覚と情熱なくしては決して創れない味でしょう。
まさに、店主さんの「背負っているものが違う」と言う印象です。
見事な「鶏油」がキラキラと輝き、抜群に美しいスープです。
「フレッシュ、フレッシュ、フレッシュ・・・」、スープの風味がとびきり新鮮。
この美味しさ・・・「極上の鶏」特有の「オーラ」「魔力」を感じます。
うーんん、このお姿、そそりますなー。
実に柔らかく優しいコシで、品良く、かなーり優等生的な食味。
強い個性やカントリーっぽさよりも、ある程度万人向けにチューニング?
さらにもう一つかみ・・・ハフハフ、ズルズル・・・うーん、美味しいです。
手打ちの麺は長めに切られ、万遍なく小まめに縮れが付けられていますね。
ツルツルと口当たりは実に柔らかく、噛み締めるとやさしいコシ。
薫製風に蒸し焼きにされたチャーシューは抜群の美味しさ。
肉の繊維が精緻で肌理(きめ)が非常に細かく、
まるでシルクのように滑らかな歯触りと舌触りです。
そして優しく透き通るような清々しい「爽やかな香り」を感じます。
これこそが「白河チャーシュー」の本来の姿なのでしょう。
2005年7月上旬 手打ち中華 630円
ご存知、東北の雄「白河ラーメン」を名実ともに代表する名店。
先代であった故竹井寅次氏は、何物にも束縛されず、酒と博打の放蕩(ほうとう)の日々を送る一方で、地元ではラーメンを作らせたら右に出る者がいないまさに「天才肌」であったと言う。事実、現在の白河で名を馳せる名店も寅次氏の教えを受けたお店が多く、それらのお店を称して「とら系」などと言われているようだ。その総本山とも言うべきこちらの「とら食堂」では、寅次氏の生み出した味を、二代目である竹井和之氏が真摯に受け継ぐとともに、スープを無化調にするなど、さらに発展させている。
お店は、その周囲の半分を田んぼに囲まれたのどかな場所にある。残りの半分は広い駐車場になっていて50台ほどは停められるスペースが確保されている。一軒家風のお店の入口の前にはベンチがあり、入口を入ってもベンチがある。引きも切らない待ち客への入念な配慮であろう。
店内は二階部分まで完全な吹き抜けになっていて、高原のロッジを思わせる高い天井と天然木を生かした広々した造りであり、厨房を中心にしてコの字型に客席が配置され、テーブル席と小上がり席がある。
登場したラーメンは、ほんのりとフチが赤くなったチャーシューとやや多めに浮かんだ鶏の油が目立つ外観だ。
そうして、器が目の前に置かれると・・・その透明感にあふれた醤油スープは、表面のキラキラ光り輝く鶏油の層がまさに息を飲むほどに「美しい」と感じるスープであるとともに、醤油と鶏ガラの素晴らしい芳香が鼻先に豊かに香り立ち、まずは食べ手の「目」と「鼻」を一瞬にして占領してしまう。
いよいよ、そのスープを一口・・・・・「ズズーッ・・・ゴ、ゴクリ・・・・・」。
いやはや・・・・・何とも鶏の旨味とコクが実に「鮮烈」なスープである。まさに「目が覚めるような美味しさ」・・・とはこの事かと思わされる。
ナチュラルでしかも豊かな鶏の旨味、コク、風味が、キリリッとした醤油のキレのある醸造風味と見事にからみ合って、じんわりとしながらも、非常に「艶やか」(あでやか)、かつ、「奥深いコク」のある、パンチに満ちた非常に美味しいスープを生み出している。
しかも、ちょっと驚いたのは、その意外なほどの「都会派テイスト」ぶりである。白河ご当地の味・・・が念頭にあった私としては、昔ながらの素朴なスープを予想していたのであるが、このスープの美味から連想したのは、むしろ常に新しい厳選素材を追い求め、最先端の味を追求し続ける「中村屋」や「支那そばや」のスープであった。これらの超有名店と間違いなく「比肩」するレベルの美味と確信するが、素材の構成がシンプルな分、味の広がりや複雑さと言う面においては一歩譲る面はあるかも知れない。
しかし、逆に言えばいじられ過ぎていない味と言うか、シンプル&ストレートでありながら、非常に奥深い[美味」に見事に仕上げられていると思う。その到達レベルは・・・紛れもなく北日本「屈指」であろう。
後日、ネットで調べた限りでは、スープの素材は豚骨などともに、名古屋コーチンや山水地鶏の丸鶏をふんだんに使用しているらしいと知り、「ああ、やっぱりな・・・」と思った。
つまりは、こちらの「とら食堂」のスープも、やはり「中村屋」や「支那そばや」同様に、まさに厳選極上の「鶏」の滋味豊かなコクと油の美味しさを究極的に生かし切っているタイプの美味しさと思えるのだ。苦味や、酸味、辛味、甘味などの変化球ではなく、塩気や、あざとい旨味や、野暮な雑味も全くないスープ・・・・ともかく「鶏油」の抜群の旨味とコク、第一級の「厳選素材感」に満ちているスープである。
そして、何よりその厳選した「鶏」の素材感の風味が「フレッシュ、フレッシュ、フレッシュ・・・」であり、まさに作り立ての「鮮烈さ」に満ち溢れていて、スープの風味がとびきり新鮮なのだ。こういったところに、まさに大量調理&作った先からどんどん売れてゆく、行列の絶えない大繁盛店ならではのアドバンテージを非常に強く感じる。
一方の麺は、思っていたより長めに切られ、やや平打ちぎみ、そして満遍なく小まめにちぢれが付けられている感じになっている。
食べてみると、ツルツルとする口当たりが実に柔らかく、噛み締めるとやさしいコシで全体的にやや緩めの食感ではあるものの、決してダレている感じではなく品良くまとまっており、かなーり優等生的な食味と感じられる。麺もまた、「ご当地」と言うことで、どこかにカントリーっぽさを期待していた私の予想とは異なり、かなり洗練された現代的な食味に感じられる。
ただ、やや素直すぎると言うか、強烈な個性には欠けると言うか、思っていたよりもインパクトは控えめであった。もう少しクセがあっても良いような気がするが、ただ、これだけ人気があって老若男女、様々な人が訪れるお店としては、ある程度万人向けにチューニングするのが正しいのだろう。
また、スープ単体を飲むとコクのある深い美味しさなのだが、麺と一緒にすすると、なぜだかスープの鶏ガラによるとおぼしきグルタミン酸系の旨味が舌先に際立って感じられるのは不思議だった。
チャーシューはともかく抜群に美味しい、いや、単に美味しいと言うよりも「高品質」と言う表現の方が似合うだろう。
まるでお歳暮か何かで届くような高額な「超高級焼豚」ギフトセットのような「風格」がある味わいなのだ。
口に入れると、肉の繊維が非常に精緻で、信じられないほど肌理(きめ)が細かく、まるでシルクのように滑らかな歯触りと舌触りなのにまず驚かされる。そしてよーく噛めば噛むほどに、肉のナチュラルなタンパク質の繊細な旨味が内側から次々に溢れてくる感じなのだ。
今まで「白河ラーメン」のチャーシューと言うと、食感がモサモサ、パサパサしていて、やや肉の味が抜けたようなイメージがあったが・・・・・実はこのチャーシューこそが、いわゆる白河ラーメンが目指している「本来の姿」なのであろうと・・・強く確信させられる。
そして、さらに・・・チャーシュー全体に、何か非常に「清々しいナチュラルな香り」が付いていることに気付く。最初は八角などの中華系の香辛料が使われているのかと思ったが、そうではなく、もっとハーブのような・・・・優しく透き通るような「爽やかな香り」なのだ。ちなみにこちらのチャーシューは、まずは炭火でじっくりといぶして薫製風の蒸し焼きにしてから、醤油で煮込んで味付けをしているらしいので、おそらくは薫製風の蒸し焼きにする過程で、木炭の香りが肉に付き、薫製で言う「チップ」の芳香が肉に付くような効果が現れているのではないだろうか。
ちなみに今回、白河市内で7軒を回り、ほとんどのお店が同タイプのチャーシューを出していたが、こちらの「とら食堂」のチャーシューは明らかに群を抜いて美味しかった。
メンマはパキパキ、プキプキ、と繊維が軽く弾けるような小気味良い抜群の食感。非常に上質な食感でとても美味しいのだが、やや細めなのが惜しい。もう少し太い方がこの食感をより一層楽しめると思う。味付けは大変素直でスープと同化している。ホウレン草は苦味やエグ味がなく、とても丁寧に茹で上げられた感じ。しっとりとした舌触りながらも噛み応えが軽快で歯切れが良い。
食べ終わってみての感想としては・・・・・品の良い手打ちの麺も、絶品のチャーシューも素晴らしいとは思うものの、それらの麺や具の印象を薄くしてしまうほど、やはり「スープ」があまりにも圧倒的に美味しすぎる・・・・という事だろうか。
ともかく最後の一滴まで飲み干し、味わい尽くさずにはいられないスープには・・・・・やはり厳選された「極上の鶏」が持つ、特有の逃れられない「魔力」を感じてしまう。
そして、豊かな旨味と深いコクがあるのに、飲み口が非常に軽く、あっさりしていて、妙な「力み」が全くない。言うなれば・・・・窓辺やベランダを、無音で穏やかに駆け抜ける・・・「5月のそよ風」の如き、実にさりげなくも、あまりにも清々しく、爽やかな・・・・・ナチュラル・テイスト。
スープをすべて飲み干してもまったく喉の渇きや胃にもたれるような事がなく、後味が非常に素晴らしいのは、まさに「無化調」の証だろう。
そして通常であれば、これだけスープが上出来だと、ついついスープに頼り切って、麺を機械打ちにしてしまったり、具などはオマケのようにおざなりに成りがちだと思うが、麺にも具にも一切の手抜きが感じられず、実に隅々まで神経と愛情が行き届いている感じなのには、客の身としては・・・・・実に頭が下がる想いである。
なにしろ毎日、何百食出ているのか判らないが、麺打ちだけでもすさまじい重労働だろう。そのせいか、二代目店主さんの肩や腕はしっかりと筋肉が盛り上がっているのが実に印象的だ。
「白河を背負って立つ」、「先代に恥じない味を出す」、その自覚と情熱なくしては決して創り続けられない味だと思う。
(麺は完食。スープも完飲。)
↓続きあり
〜手打中華とら食堂 その2〜
薄暮の差し始めた夕方、5:30PMに到着しました。
「夏」だと田んぼの緑が明るい彩りを添えてくれますね。
うーん・・・・夕方とはいえ、「七月の青空」がいい感じで似合います。
周囲を緑に囲まれて、ともかく「空気」も抜群に美味しいですね。
さすがに平日の閉店間際なので、席にも余裕がありました。
ウッディな店内は二階部分まで、広々とした吹き抜けになっています。
超有名店なのにマンガが置かれているのは、地元密着の証。
地元の小学生のグループが夢中になってラーメンを食べていました。
どうやら少年野球の帰り道、お腹ペコペコで寄ったようです。
こう言う光景・・・・いいですよね。
うむむ残念・・・お目当ての「業」の札が裏返っていました・・・。
一日限定30食なので仕方ないでしょう。
「ワンタンめん」と「焼豚めん」を注文しました。
2006年7月上旬 ワンタンめん 780円
(この写真はクリックで拡大します)
「広口」の器に入って登場したワンタン麺。
麺とワンタンの出来栄えは最高でしたが、
夕方の閉店間近だったせいか、単なるブレなのか・・・
スープ表面の油が結構多かったです。
油の多さに加え、スープがやや煮詰まっていて、
全体的にちょっと「コッテリ」気味に仕上がっていました。
きらびやかな鶏の美味しさが隠れて、豚骨の比率が多かったような気も・・・。
写真では判りづらいですが、スープの上一面を6mmほどの油膜の層が覆っています。
そのせいか、「コッテリ」した飲み口で、僅かに味がマスクされ、香りもやや閉じこもり気味。
十分美味しいですが、もう少し「鶏」の華やかさがあると更に良い感じに・・・。
非常に美しく「ツヤツヤ」している麺、去年と比較すると・・・やや茹で時間短めかな?
ムチムチした「歯応え」を出すためか、さほど「多加水」ではないようです。
ザラザラした粉臭さがなく、あまりスープを吸わず、時間が経ってもなかなか伸びない。
その分、おそらく「打つ」「延ばす」が、かなーり大変だと思います。
表面付近の「ツルツル」とした「光沢感」「コーティング感」のある舌触りが美徳ですね。
噛めば・・・ムッチリする小麦密度感、やや強めの反発力、そして角の丸さがある口当たりです。
おそらく製麺に「卵白」を多めに使っているのだと思います。
白河の・・・いや、他のどこの手打ち麺とも異なるバランスを持つ美味しい麺。
レンゲの上のワンタン左側は原形そのまま、右は皮から「餡」を出した状態。
トロントロンの長い皮はツルーリと喉の奥へ「滑り込む」ようなノド越し。
餡は「鶏肉、鶏油、椎茸、葱」の新鮮なミンチで美味しい。
「焼」豚は相変わらずワンランク上を行く美味しさ。
清清しい炭の香りと、淡白なモモ肉のミッチリした旨味がギュウ〜ッと詰まっています。
肉の周辺が赤みを持つのはじっくりと「燻した」証拠。
麺を食べ終えた状態でのスープ。
麺を食べ尽くしてもこれだけ油が残ると・・・私的には油が多めに感じます。
2006年7月上旬 ワンタンめん 780円
前回訪問以来、ずっと再訪問を考えていたが・・・・再び「夏」になり、ちょうど一年ぶりと言うこともあり、思い切って「白河」へ再び遠征をしてみた。
車での東京出発が遅くなってしまったため、白河へ着いたのが夕方の5時、そのまま一軒目のこちらの「とら食堂」を目指したが、お店へ着いたのは夕方5時30分だった。平日の営業は夕方6時までなので、ぎりぎりである。
さすがに平日の閉店間際と言う事で店頭には車も少なく、店内にも客はまばらだった。
しかし、良く見ると地元の小学生のグループが何組か輪になって、夢中になってラーメンを食べている。
どうやら少年野球の帰りのようだが、全国区で有名な人気店とは言え、平日の夕方ともなればこう言う光景が見られるのは気持ちの良いものだ。やはり地元にしっかりと根付いているお店なのだと再認識してしまった。
今回、実は、普通の手打ち麺ではなく、包丁による「手切り麺」を使った「二代目の味・業(わざ)」をお目当てに来たのだが、既に壁のメニューの「業」の札が裏返っている・・・・。
よく考えたら、「業」は一日限定30食なので、夕方には売切れてしまっても不思議ではない。気を取り直して「ワンタンめん」を注文した。
登場したワンタンメン・・・・醤油と鶏ガラの素晴らしい芳香が匂い立つ、キラキラ光り輝く鶏油の美しいスープとの再会に、胸を高鳴らせたのだが・・・・。
しかし、スープにはコッテリとした「厚めの油」の層が浮いており、その油がフタとなってしまったかのように、あまり「香り」も強く感じられない。レンゲでスープをすくってみると、表面を6mmほどの油膜の層が覆っていて、浮いた油が「玉状」にならないほどに油の厚みがある。
一口飲んでみると、油の多い飲み口に加え、閉店間際の遅い時間であったせいかスープがやや煮詰まっている感じで、全体的にちょっと「コッテリ気味」「落ち着いた味」に仕上がっている。
飲み口に軽さがなく、やや脂っこい感じで、そのせいか味のキレもやや鈍く感じられてしまう。。
じっくりと落ち着いた味で十分美味しいが、私的な好みとしては、明るく、きらびやかな鶏の美味しさが好きなので、もう少し「鶏」の華やかさがあると更に嬉しい。
一方の麺は・・・・箸でつかみ上げてみると、前回同様にやや平打ち気味で、万遍なく緩やかな縮れが付けられている。
その姿は非常に美しく「ツヤツヤ」と光輝いていて、思わず見惚れてしまうほどである。
一口すすってみると・・・・去年と比較すると、やや茹で時間短めだったようで、明らかに麺の歯触りに硬さが増して感じられた。
こちらのお店の麺の特徴は、何と言ってもこの麺の表面付近の「ツルツル」とした「光沢感」「反発感」のある舌触りにあると思う。それゆえ、今回の茹で加減のほうが、その特徴を一層生かしているように感じられ、去年の麺にさらに輪をかけて、文句なく美味しいと感じられた。
噛んでみると・・・「ムッチリ」とする小麦「密度感」、やや強めの「反発力」、そして角の「丸さ」がある口当たりであり、シコシコした「歯応え」を出すためか、さほど「多加水」ではないようだ。
手打ち麺としては珍しく、絶妙にプラスチッキーさが感じられるのだが、しかし、さらに噛み砕いてゆくと「モッチ、モッチ」と、歯を包み込むような心地良い粘りが出て来て、この麺の食感は・・・・白河の・・・・いや、他のどこのお店の手打ち麺とも異なる独自のバランスを持っているように感じられる。
さらに舌触りにザラザラした粉臭さがなく、あまりスープを吸わず、時間が経ってもなかなか伸びないのも、こちらの麺の特徴だと思う。
ツヤのある見事な「光沢感」からしても、おそらく製麺時に「卵白」を多めに使って、麺にこれらの様々な特徴を出しているのは間違いないと思う。
ワンタンは、ほぼ想像していた通り、薄くて大きめの皮に小さめの餡を包んだタイプである。つまり、餡とともに、何より「皮」の舌触りの良さを楽しむタイプだろう。
レンゲに乗せてすすってみると、トロントロンの長い皮は・・・・熱々のスープを大量に抱き込んだまま舌の上へ移動し、ひとしきりドバッとスープの旨味を舌の上へと放出した後は、そのままツルーリと喉の奥へ「滑り込む」ように自ら進んで落ちて行くノド越しである。
餡は「鶏肉、鶏油、椎茸、葱」の新鮮なミンチだそうで、鶏の良い味がして、とても美味しい。
ただ、そのデリケートな「薄皮さ」ゆえ、やはりスープの熱には弱いようで、後半になると皮がだいぶ柔らかくなってしまう。
そうなるとモチモチし過ぎて、むしろ粘り気が出てしまい、「モッチョン、モッチョン・・・」と舌にからみ付き、やや歯にまとわり付く感じにもなってしまう。
ワンタンは硬質系の「ツルッ」とした軽快感があるうちに、なるべく早めに食べ切るのがコツだと思う。
「焼豚」は相変わらずワンランク上を行く美味しさ。モモ肉らしい「モッサ、モッサ」とする歯応えだが、しっとり感があり、決してパサパサと乾いた感じではない。
清々しい炭の香りと、淡白なモモ肉のミッチリした旨味が「ギュウ〜ッ」と詰まっていて、噛めば噛むほど、まさに「サキイカ」のようにじっくりと旨味が流れ出して来る。すぐに飲み込まずに、じっくりと何十回も噛む事が、このチャーシューの美味しさを堪能するコツだろう。
メンマはパリポリ、パリポリと上等な歯応えがあり、ホウレン草もシャクシャク歯応えが良く、きちんと野菜としての味がする美味しさ。
昼前から何も食べておらず、お腹が空いていた事もあって一気に食べてしまったが、麺や具を食べ終えた後のスープを見てみると、まだかなりの油が浮いている。
やはり今回のスープは、華やかな鶏のあっさりとした旨味よりも、豚骨やラードのドッシリ感が増えたような感じがあり、前回のスープは後口ももう少しサッパリとしていたように記憶している。
ただ、「あっさり系の華やかな旨味のスープ」と「コッテリ系の落ち着いた味わいのスープ」・・・・どちらも魅力があり、いずれが好きかは、食べ手の好み次第と言うことになるのだろう。
(麺は完食。スープは5割飲んだ。)
↓続きあり
〜手打中華とら食堂 その3〜
会計は食べ終わった後の手会計です。
客もいなくなり、既に後片付けの始まった厨房前で会計をしますた。
厨房の右脇に立派な神棚があります。
カーテンの奥のスペースが「麺打ち場」のようですね。
小さなテレビが点いていました。
同上日 焼豚めん 840円
(この写真はクリックで拡大します)
通常のモモ肉に、バラ肉の焼豚がプラスされた「焼豚めん」です。
表面を覆う焼豚で麺が見えないほどに・・・豪勢です。
さらにそのせいか、焼豚の炭の香りが一段と「冴えて」いますな。
焼豚が抜群に美味しい「とら食堂」ならではの一杯でしょう。
同上日 焼豚めん 840円
チャーシューメンは、モモ肉を使った通常の焼豚に加え、巻いたバラ肉等の焼豚がプラスされる。
そのため、丼の表面を覆う焼豚で全く麺が見えないほどだ。
スープを飲んでみると、こちらも去年と比較すればだが・・・・やはり明らかに油が多めで、スープの旨味も落ち着いている感じだ。
ちなみに、化学調味料や濃縮エキスを大量に使って「味」を出しているスープは、年間を通しても、一日を通しても、常に「同じ味」になる。
つまりは、徹底した品質管理の下で精製された工業製品なので、常に一定のアミノ酸組成&濃度であり、加熱にも強く(あまり味が変性しない)、スープへも容易&均一に溶け込むため、粉末の量を間違えない限り、誰がやっても寸胴の中は、常に、容易に、一定の同じ味になる訳だ。しかも今では、単純な「旨味」だけでなく、「煮込んだような香り」や「燻したような芳ばしさ」などの複雑なフレーバーを加えた調味料も何十種類も出ている。
要は、誰が、どう作っても同じ味になる「インスタントコーヒー」の仕組みに限りなく近い原理で・・・・容易にそれなりのスープが作れるのである。
しかし、天然素材による「ナマ」の旨味や香りは、その「ナマモノさ」ゆえに、扱いが非常に難しい。
例えれば、まさしく煎り立て、挽き立ての良質なコーヒー豆を、非常に上手にサイフォンでドリップし、出来上がった「直後」に飲めば、確かに抜群に風味がフレッシュで、ビビッドで、「インスタントコーヒー」など到底比較にならない素晴らしい美味しさだろう。
ただ、その反面、本物の豆から煎れるコーヒーは、どうしても素材のバラ付きや、保存条件、焙煎の微妙な出来具合、鮮度、そして何よりドリップの技術に「味」が大きく左右されてしまう。
しかも、もし・・・・そのコーヒーが「絶品の出来上がり」だったとしても、それは極めて「一瞬」の出来事なのであり、その風味は極めてデリケート&不安定で、保温のための加熱や空気に触れる時間の経過とともに、味わいはすぐに刻々と変化し始めてしまう・・・・。
ラーメン職人の中にも、「例えば10分間だけ抜群に美味しいスープを提供するのは、一定の技量があればさほど難しくはないが・・・・もしも、その「絶品」の美味しさを一日中ずっと同じ味で出そうとすれば・・・・これはもう、非常に、極めて、想像を超えて、至難の業なのだ・・・・」と言う人もいる。
また、天然素材を使ったスープは、すべてが完全には「均一」にならず、寸胴の上には比重の軽い油が多く浮き、逆に底の方には素材が多く沈殿しやすい・・・・。そのため、柄杓(ひしゃく)で寸胴のスープの「どこ」を「どの様に」すくうか・・・・その「すくい方」一つで、一杯のラーメン毎に油分が増えたり減ったりするし、旨味も香りも口当たりも、微妙に変化してしまうことになる。
そう言う意味では、無化調のこちらのスープ・・・・時間帯によって微妙に味が変わるのは、むしろある意味「自然」な事なのだろう。
ところで、スープを飲んですぐに気付いたのだが、「焼豚」がどっさりと増えたことで、その焼豚の「香り」がややスープの風味に影響を与えているように思う。
こちらの焼豚は、日常ではほとんど出会うことのない不思議な香りが付いていて、それは焼豚を炭火で燻す過程で付着した「炭焼き」の香りであるようなのだが、焼豚の量が増えた事で、その香りがさらに一段と「冴え渡って」感じられるのである。
この香りは、何かに似ているな・・・・とずっと思っていたのだが、この時に初めて、何と似ているのか理解できた。
それは・・・・ズバリ、「木酢液」(もくさくえき)の香りである。
木酢液とは、窯で炭を焼く過程でエントツから出る煙を冷却し、雫として採取した強酸性の液体である。これを精製し、タールなどを除いて製品化したものがホームセンターや100円ショップなどで売られている。
その液は、実に「木の精」そのものであり、殺菌、防カビ、防虫、消臭、炎症抑制などの優れた効果があり、アトピー性皮膚炎の治癒にも大いに効くと言われている。農業においても化学肥料や農薬の代わりに、この無害な液体が土壌の改良や害虫駆除に使われ、家畜の飼料に混ぜれば、何と抗生物質の代わりにもなるとも言う・・・・。
その何とも不思議で爽やかな・・・・この、甘さを取り去ったニッキ系のハーブのような「スーッ・・・・」とする爽やかな香りが、少なからずスープから感じられた。
また、食べていて少しだけ気になったのは・・・・脂肪のない「モモ肉」も、脂肪のある「バラ肉」も、私には「良く似た食味」に感じられてしまったことだ。
とら食堂のパンフレットによれば、「歯ごたえのある肉と柔らかくジューシーな肉、2種類のチャーシュー・・・」となっているが、せっかくのバラ肉も炭火で燻していることで、脂が抜けてしまい、そのため「モサッ・・・」とした食感になっており、個人的にはモモ肉とだいぶ似通った味わいになって感じられた。
せっかく二種類が乗るのであれば、バラ肉はじっくりと醤油と日本酒に漬け込み、コトコト低温で煮て、トロトロに仕上げるなど、それぞれの肉の持ち味を生かす仕上げにしてみても、良いのではないかとは思う。
もちろん、厳密に比較すれば、確かにバラ肉の方が柔らかくジューシーであるのは言うまでもないし、何ぶん、やはり「白河ラーメン」を名実ともに代表するお店であるだけに、白河ラーメンの定理にはない調理法を安易に取り込むことは、タブーと言うか・・・・容易ではないのかも知れない。
ただ、いずれにしても、それらは些末なことであり、焼豚が抜群に美味しい「とら食堂」ならではの魅力的な一杯に仕上がっている納得の「美味しい一杯」であった。
(麺は完食。スープは4割飲んだ。)
↓続きあり
〜手打中華とら食堂 その4〜
新幹線の東北への玄関口「新白河駅」の東口です。
いかにもビジネスライクな佇まいですのー。
広場に立つ銅像は、かの江戸時代の俳聖・松尾芭蕉。
白河はご存知、「奥の細道」の冒頭に登場する始点地ですな。
駅前の観光案内マップ。
小峰城跡、白河の関跡、南湖公園、小原庄助の墓、金勝寺温泉など、盛り沢山。
東北三名城の一つ「白河城」(白河小峰城)。
庭木や芝生がきれいに手入れされ、均整の取れた美しいお城です。
2006年7月上旬2 二代目の味 業 950円
「とら食堂」の二代目店主氏が、
この道30年の節目に創り上げたと言う一品。
手打ち麺よりさらになめらかな食感の「手切り麺」を使い、
一日30食限定、その名も「業」(わざ)です。
「とら食堂」の伝統の味を大切に守りながらも、
半熟煮玉子、炙りチャーシューなど、時代の流行を融合。
エッジとキレの豊かな「手切り麺」が加わって「確かに違う」一杯が誕生。
これです、このスープです。
これでこそ「とら食堂」。
キラキラと美しく輝く鶏油が描く黄金色の「水玉模様」。
「鶏の旨さ」と「醤油の美味しさ」が生き、実に「鮮やか」で「艶やか」、
「フレッシュ」「出来立て」の若々しい味わいです。
これが「業」の真髄でもある「手切り麺」です。
普通の麺はカドが丸く、少し平打ち気味なのに対して、
「業」の麺は断面がほぼ真四角で、「カド」が立ち揃い、「エッジ」が良く効いている印象。
そのため、食感に「キレ」があり、動きが「速く」かつ「シャープ」。
「手打麺」とは言え、適度なストレート感と太さによる「量感」の豊かさがあり、
「ツルツル」とした光沢感やコーティング感によるツヤのある「高級感」を持った食味がウリ。
さほど熟成した様子はなく、いかにも打ち立てと言う食味で、
さほど多加水ぽくないのに、噛んだ時の心地良いモチモチ感が強いのは共通。
巻きバラチャーシューに炙った跡が見えます。
細長いチャーシューは「ヒレ肉」かと思いますたが・・・どうやら「モモ肉」(?)のようですね。
非常に微細ですが、鼻に「スーー・・・・」と来る、心地良くも不思議な炭の香り付き。
巻きバラだからなのか・・・炙ってあるからなのか・・・
モサモサする感じが少なく、口解け感が「ふうわり」として柔らかくて、非常に美味しいチャーシュー。
ギットリとした余計な脂のしつこさが全く無く、肉の中間域の旨味が「ぎっしり」と言う感じ。
半熟の煮玉子。
わずかな時間にスープを吸って色づき始めています。
特段の味付けは感じられないものの、黄身の味が非常に深く、
かつ、柔らかな味わいで美味しい。
2006年7月上旬2 二代目の味 業 950円
実は、今回の白河紀行、白河市内に宿泊してラーメン店を食べ歩いた。
二日目は、とら食堂出身で評判の高い「彩華」、そして独自色豊かな名店と言われている「カネダイ」の二軒を訪問する予定だったのだが・・・・「彩華」があるはずの場所へ伺ったところ、お店の看板が外された建物がポツリとあるだけで、これにはちょっと驚いた。後日調べてみるとどうやら数ヶ月前にお店を移転し、現在は新店舗で営業されているらしい。また、「カネダイ」は店舗建替え中で7月上旬にリニューアルオープンとの情報を得ていたのだが、私が訪問した日は新店舗はほぼ完成していたものの、まだ営業はしていなかった。
と言うことで、二日目の一軒目は、またまたこちらの「とら食堂」に決定。
「小峰城」など白河市内を軽く観光してから、一日30食限定の「業」を食べるため午前11時開店の10分前に伺ったところ、先客5名ほどが店頭に並んでいた。平日ではあったが、開店時間には待ち客は15名ほどに増えていた。
登場したラーメン・・・・器が目の前に置かれた瞬間から・・・・その透明感にあふれた醤油スープからは、醤油と鶏ガラのフレッシュで芳醇な芳香が豊かに匂い立ち、レンゲですくってみると、キラキラと美しく輝く鶏油が黄金色の「水玉模様」を描いている・・・・。
この瞬間、 「これだ、このスープだ。」「これでこそ、去年食べて唸ったとら食堂のスープだ」と確信する。
そうして一口、口に含めば・・・・まさに、香りも旨味も「フレッシュ、フレッシュ、フレッシュ・・・」であり、とびきり新鮮な生まれ立ての味の「鮮烈さ」に満ち溢れている。まさしく、去年食べた時の記憶を正確にトレースする味わいがそこにあった。
何より鶏のグルタミン酸系の旨味とコクが「キラリ」と、実に「鮮やか」で「艶やか」(あでやか)なスープ・・・・やはり、こちらのスープの美味しさのポイントは「鶏の旨さ」と「醤油の美味しさ」なんだなぁと再確認する。
ただ、昨日食べたばかりのスープのコッテリの記憶が影響しているのか、去年のスープに比較して「あっさり感」が強調され、風味がやや「若い」と言うか、スープの「押し出し」が微妙に大人しいように感じられる気もした。
言うなれば、それぞれ、午前中の開店一番の「あっさりでフレッシュ」なスープ、夕方の終了間際の「コッテリでコクがある」スープ・・・・と言うところだろうか。
そう言えば、去年食べたのは、まさにその「中間」の時間帯、お昼過ぎの時間帯であった事実を思い出す。
一方の「麺」は、これぞ「業」の真髄でもある「手切り麺」だそうだ。
「手切り」とは、つまりローラー状の切り歯で切るのではなく、包丁で切っていると言う事なのだろうか。
見た目は、普通の手打中華の麺の断面がほんの少し平打ち気味で、茹でる事で麺がやや膨らんで、カドが多少「丸く」なっているのに対し、こちらの「業」の手切り麺は、断面がほぼ真四角で、茹でてもあまり膨らまず「カド」が立ち揃い、エッジが効いている感じがある。そのためすすり心地に、明らかな「キレ」を放ち、何より動きが「速く」かつ「シャープ」だ。
あまり熟成感がなく、いかにも打ち立てと言う感じで、さほど多加水感は強くないのに、噛んだ時の心地良いモチモチ感が強いのは「とら食堂」の他の麺と同じである。
チャーシューは、うっかり食べるのが遅れてしまい長らくスープに浸っていたせいか、せっかくの「炙り」による香ばしさはさほど実感できなくなっていたが、他のメニューのチャーシューと比較すると、モサモサする感じが少なく、口解け感が「ふうわり」として柔らかくて、非常に美味しい。ギットリとした余計な脂が上手に抜けていて、しつこさが全く感じられないのに、肉の中間域の旨味が「ぎっしり」と言う感じである。
茹で玉子は特段の味付けは感じられないものの、黄身の味が非常に深く、かつ、柔らかな味わいで美味しい。ただ、白身にはその味の無垢さゆえか、スープが湿潤したような味と、おそらくはチャーシューからの炭の香りがほんのりと移り香として感じられた。チャーシューが増えたこともあるのかと思うが、この爽やかな炭の香りは、やはり木酢液のような、ミントのような、ニッキのような、ハッカのような・・・・鼻に「スーーー・・・・」と来る、心地良くも不思議な香りだ。
ホウレン草はシャクシャクとして歯応えが良く、よくアクが抜け、新鮮で優しい味わい。メンマは最初はカリコリした歯応えだが、次第にシャクシャクとして来て歯切れが良い、薄味で美味しいもの。
食べ終わってみての感想としては・・・・昨日食べた普通の手打ち麺も非常に美味しかったし、スープとの相性も良く、一切の不満はなかったのだが、いざこの「手切り麺」と比較してしまうと・・・・普通の麺はレスポンスが僅かに鈍いと言うか、動きがやや「モッサリ」としていて、全体に「丸み」があるように感じられる。
特にこちらの「手切り麺」の方が「カド」が良く立ち揃い、エッジが効いているので、すする際にそのエッジを「トレース」するような楽しみがある。それが麺の動きの明瞭さにつながり、レスポンスの良さと相まって、明快な「キレ」、動きの「速さ」「シャープさ」になって感じられるようだ。
また、麺の断面が普通の麺は平打ちによる「楕円形」なのだが、こちらの麺は真四角に近い「正方形」である分、厚みがあり、噛み心地も量感もアップしているように感じられた。
いずれにしても、地方の手打ち麺にありがちな、いかにも多加水で縮れやネジレが舌先で柔らかくピロピロと動き回るような愛嬌のある麺とは・・・・「一線を画す」手打ち麺を目指しているようだ。
適度なストレート感と太さによる「量感」の豊かさ、そして表面付近の「ツルツル」とした光沢感やコーティング感によるツヤのある「高級感」のある舌触り、そして良い意味で絶妙にプラスチッキーで、ムチムチする小麦密度感、やや強めの反発力、あまりスープを吸わず、時間が経ってもなかなか伸びない歩留まりの良い麺を・・・・目指しているような印象を受ける。
(麺は完食。スープは8割飲んだ。)
↓続きあり
〜手打中華とら食堂 その5〜
同上日 つけめん(冷) 630円
青い平皿が涼感を演出する「つけ麺」。
暑い夏には特に人気を呼ぶメニューになるのでしょう。
つけ汁の中にはネギ以外の薬味や具は入らず、
平皿に盛り付けられた麺の上に、具が放射状に並べられています。
つけ汁は「香味油」と「辛味」と「酸味」が強く効いていて、
ラーメンと比較すると、やや「大味」なまとめられ方と言う印象です。
値段がラーメンと同一なのは良心的ですな。
つけ汁は、透明なオレンジ色の香味油がしっかりと表面を覆います。
ラーメンのスープに、「ゴマラー油」「一味唐辛子」「酢」の三者を投入したイメージ。
ありがちな強い塩分ではなく、鋭角的で強めの「酸味」と、
一味唐辛子の「辛味」が味の輪郭を描きます。
麺は冷水締めされたせいか、すすり心地は「モソモソ・・・・」とやや麺表面の粘り気を感じます。
歯に当たるとプニプニ感があり、噛めば穏やかにモチモチするものの、
全体的には「あっさり」とした素直な食味の麺ですな。
つけ汁の味は透明感があり、辛味や酸味はあるものの、さっぱりとして、粘度が少ないタイプ。
首都圏で流行中の動物性のコクやゼラチン、魚粉が濃厚なタイプとは一線を画します。
微細な一味唐辛子が麺に均一に「まぶされる」ように密着。
スープ割をして頂いた図。
割った後も鋭角的な「酸味」が残るせいか、
ラーメンスープよりも随分とあっさりと透き通った味わいに感じられる。
多めのラー油が唇回りに残る感じはあるものの、
酸味や辛味が舌の上の雑味を「さっぱり」と洗い流し、後味スッキリ。
同上日 つけめん(冷) 630円
果たして、手打麺のメッカ、白河の「つけ麺」とは如何なものなのか?気になってオーダーしてみた。
壁のメニューによれば、つけ麺には「冷」と「温」があり、「温」、つまり「あつもり」もできるようだが、夏と言うこともあり「冷」を選択。
登場したつけ麺は、麺は平皿に広げて盛られ、具が円周状に並べて配置されている。
つけ汁には、多めのネギが浮き、オレンジ色のキラキラと輝く油の層が目を引く。香味油と言う事だが・・・・匂いからするとどうやら大量のゴマラー油に近いように感じられる。
まずは汁に浸けず、麺だけを食べてみると・・・・やはり暑い夏の7月の水ではさほどヒンヤリと冷やされることはないようで、麺の温度は「常温」(室温)であった。
汁に付けていないため、すすり心地は「モソモソ・・・・」とやや麺表面の粘り気を感じる。噛み砕いてみると、歯に当たるとプニプニ感があり、噛めば穏やかにモチモチするが、全体的には「あっさり」とした素直な食味の麺である。
やはり卵白が多めに使われているような印象を受け、そのせいか取り立てて小麦粉の風味が湧き立つとか、馥郁な穀物風味があるとか、粉っぽいという感じではない。強い塩分や、カンスイと小麦粉が混じった時の独特の匂いなどは感じられず、玉子の黄身の風味もさほど強くなく・・・・ともかくクセの少ない素性の良い麺と言うイメージを受ける。
麺を汁に浸けて食べてみると・・・・つけ汁はやや油が多めなせいで、麺の口当たりにも影響を与え、少し油がクドく感じられるようだ。
つけ汁の味付け自体は醤油がやや強めに立って感じられるものの、塩分がかなり控えめで、味わいに透明感があり口当たりは良いのだが、その分、全体を「ゴマラー油」のような香味油の強い風味が支配している印象を受ける。
加えて、麺をすする際に、微細な一味唐辛子が麺に均一に「まぶされる」ように密着し、さほど強くはないものの「辛味」もはっきりと感じられる。
そして、視覚的にこのラー油や唐辛子などの「辛味」にばかり気を取られがちだが、実はその裏に、多めの「酢」とおぼしき鋭角的な「酸味」が存在しており、この酸味が一枚足元に敷かれるように「ピシリッ」と強めに効かされていて、味を引き締めているようだ。
そうして、この「辛味」と「酸味」の二者がひとしきり味を放出した後は、後味としてゴマラー油のような香ばしい風味が口中いっぱいにゆっくりと押し寄せて来るシークエンスになっている。
つけ汁に入れ、その熱と水気でほぐされた麺は、先の「業」の手切り麺と比較すると、やはりカドの「丸さ」が感じられ、動きもおっとりとしているように感じられるが、手打としては麺に太さと適度な硬さがあり、ゆるくウェーブしていることもあるが、スルスルと次々に軽快に食べ進む感じではなく、一口ずつになかなかの量感を持ち、しっかりとした食べ応えがある。
つけ汁の色がきれいな透明であり、濁りがない事からも容易に想像できるが、さほど動物性のコクとかゼラチン濃度は多くなく、かといって繊細な和風ダシが香るようなタイプとも異なる。
あまり東京では見かけないタイプと言うか、昨今の東京で流行の濃厚な動物性ゼラチン路線や強く濁った魚粉路線、やたらと甘さを強調した砂糖路線とは異なり、どちらかと言うと透明なあっさり汁に辛いラー油をたっぷりと入れる「広島つけ麺」のようなつけ汁に近いように感じられる。
ただ、何と言うか・・・・どこにも一切「迷いが無い」感じの白河ラーメンと比較すると、つけ麺は食べていても「目指している味」のイメージや主張が、あまりはっきりと伝わって来ないように感じられてしまうのは・・・・私の単なる気のせいなのだろうか。
本来なら、「つけ麺」にすることで手打ち麺の魅力がストレートに堪能できそうなものだが、全体の「完成度」「満足度」と言う点においては、あくまで私見だが、ラーメンとは少なからず「差」を感じてしまった。
つけ麺は、ズバリ「麺」こそが最大の主役である。そのため、まずいかに「麺」の魅力を前面に強く押し出し、多めの麺をいかにスムース&ストレートに気持ちよく食べさせるか・・・・が重要だと思う。そう言う意味では、平皿に盛り付けられた麺の上を覆うように、具が放射状に並べられているのは、見た目には楽しいが、麺をすくう時に具が邪魔になってしまう。
つけ汁も、ラーメンのスープに、単に「ゴマラー油」「一味唐辛子」「酢」を投入しただけと言う安易な感じが拭えず、せっかくの「麺の味」も、多めのラー油によるマスキングで裏方へ回ってしまっているようにも感じられる。
実際、この後も白河市内の他店で二杯ほど「つけ麺」「ざるそば」などを食べ歩いたが、大正時代からの長い長い歴史によって磨かれて来た白河ラーメンの見事に「洗練された味」、非常に高く「完成された味」の数々から比べると、白河の「つけ麺」はどこかしら「文化の専門外」「地元のニーズが不明瞭」と言うイメージを受けてしまった。
何と言うか、単にメニューのバラエティの一つとして「一応、作ってみました」と言う感じが強く、「つけ麺」ならでは真の魅力、その大いに深遠なる世界を・・・・・まだまだ、あまり追求していないような印象を受けてしまうのだ。
美味しい「ラーメン」を作るのは大変だが、美味しい「つけ麺」は簡単に作れる・・・・と言うことはあり得ない。
「つけ麺」もまた「ラーメン」同様に、一朝一夕には、容易には高みに到達しないと思う。
ただ、白河伝統の「手打ち麺」と言う・・・・他の地域に無い非常に強力な「アドバンテージ」があるだけに、今後の展開次第では大化けする可能性は高いと思う。
個人的な好みとしては、この手打ち麺と透明なあっさり路線のつけ汁・・・・と言うことであれば、もともとあっさりしたつけ汁に多めの挽き肉を投入してコクを出している東京で大人気の「丸長・目白店」(新宿区)のようなタイプのつけ汁が非常に良く合うような気がするが・・・・。
スープ割をしてもらうと、ラーメンスープよりも、随分とあっさりと透き通った味わいに感じられるのは、やはり鋭角的な「酸味」が加わっているからだろう。
多めのゴマラー油が唇回りにペトペトとややクドく残る感じはあるが、それでも飲み干した後の口内と舌の上は、酸味や辛味が舌の上の雑味を洗い流してくれたように非常に気分良く、実に「すっきり」としている。旨味がスーッとどこへともなくきれいに消えて行くのは、まさしく無化調のなせる技だと感じる。
冷水締めやスープ割など、手間がかかるにもかかわらず、値段がラーメンと同一と言うのも実に良心的だ。
(麺は完食。スープ割も完飲。)
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