ラーメン&つけ麺食べ歩き
すずき
(福島県 白河市)
店名 手打中華 食堂すずき(すずき) 住所等 福島県白河市瀬戸原4-9 【地図表示】 禁煙 タバコ完全禁煙 訪問日 2005年7月上旬 手打中華 600円 2006年7月上旬 手打ワンタンメン 980円
手打ザル中華 650円
〜手打中華 すずき その1〜
お店に到着しました。
右脇を通る道路は国道289号です。
駐車場は周囲に散在する形で25台分ほど。
ラーメン店と言うよりも・・・
高級感漂うちょっとした料亭風の佇まい。
植木のお手入れも完璧ですな。
正面から見た図。
一軒家風の瀟洒な建物です。
ちなみにトイレは店外で、お店の裏手にありますぞ。
店内はグッと大衆食堂風・・・。
オレンジ色のパイプ椅子が並びます。
奥の一帯が厨房ですね。
カウンター席と、小上がり席もあります。
壁には大型の鏡がビルトイン。
メニューはかなーりシンプル。
「手打中華」をオーダー。
2005年7月上旬 手打中華 600円
(この写真はクリックで拡大します)
ついに「白河」の地にて・・・・
驚愕の「手打ち麺」と出会いました。
21世紀を迎えた今でも、なぜ「手打ち」なのか・・・?
機械打ちの麺とは一体どこが違うのか・・・?
その回答の「すべて」がこの一杯にありますね。
鶏油が多めですが、醤油の醸造風味の香りが立つキレのある強い味。
穏やかで優しいガラ風味をベースとして、醤油の強いパンチで、
次々と「麺が欲しくなる」ように食べ進ませるイメージ。
麺の素晴らしさを最大限に引き立てるための、
まさにベストチューニングに感じます。
まさしく「千杯一遇」の麺。
その無類の美味さたるや・・・まさに圧倒的過ぎる「衝撃」ですね。
麺が舌にやさしく「寄り添ってくる」ような・・・・ヒューマンな感覚。
千杯食べても、果たして出会えるか、どうか・・・と言う超絶なレベルの世界。
舌の上でとろける・・・比類のない「口解け感」。
スル〜リと滑らかな・・・昇天するかのような「ノド越し」。
麺が口中で流れるように「円く」動く感じに満ちています・・・。
世の手打ち麺フリークにとって、
紛れもなく「究極の麺」の一つでしょう。
2005年7月上旬 手打中華 600円
白河でも良く名前の挙がる人気店で、特に地元の人達からの支持は絶大らしい。実はかなり以前から知人に「是非に」と薦められていたお店でもあり、今回やっと訪ねる事が出来た。
こちらの店主さんは名店「とら食堂」の先代である故竹井寅次氏から、手打ち麺の手ほどきを受けたと言う。
なお、白河には「食堂すずき」と「鈴木食堂」の二軒があり、しかもどちらも有名店なので混同しないよう注意が必要だ。こちらのお店は白河実業高校の斜め向かいにある。角地なので非常に見つけ易く、また丁寧に手入れされた植木群に囲まれて、随分と瀟洒(しょうしゃ)な佇まいである。至ってシンプルなメニュー構成に、麺とスープの自信のほどが伺え、また、店内は白河としては珍しく「全席禁煙」となっていることからも、味への強いこだわりが感じられる。
登場したラーメンを見て、一瞬、驚いてしまった。それはあまりにも修行元の「とら食堂」と寸分違わぬビジュアルであったからである。
実際、器の柄と海苔の大きさ以外では違いの見分けが付かないと思う。鮮やかな醤油色のスープにキラキラと多めの鶏油が浮いているのもそっくりだが、よくよく見れば、麺はこちらのお店のほうがやや太くなっているようだ。
まずは、スープを一口飲んでみると・・・・豚骨と鶏ガラをブレンドして使っているようだが、鶏油が多めに浮いている割には鶏ガラなどの風味やコクはあまり強くは感じられず、醤油の醸造風味の香りが強めに立ったキレのある強い味である。スープそのものの旨味や出汁の味をじっくりと堪能させると言うよりも、穏やかで優しいガラ風味をベースとして、全体的には醤油の強いパンチで、次々と「麺が欲しくなる」ような味付けに仕上げられたイメージだ。
一口目だけ旨味が妙に強めに感じられたが、表面に浮く鶏油のせいだろうか。見た目は「とら食堂」と大変良く似ているスープだが、「とら食堂」がどちらかと言えばスープ単体としても美味しいのに対し、こちらはあくまで「麺」を食べさせるためのスープとしての仕上がりに尽力している印象を受ける。
そうして、実際に一口こちらの「手打ち麺」を食べてみれば・・・・先のスープの仕上げが、いかに「的を射ているか」が、はっきりと確信できる事になる。そう、そうなのだ・・・・あまりにもズバ抜けて、想像を遥かに飛び越えて・・・・この「麺」が実に素晴らしく美味しいのである。
一口食べて、数秒・・・・まさに時が停止し、目の前の器以外、周囲の景色がまったく目に入らなくなった・・・。
そうして次第に自分の腹の底から湧き上がって来る「歓喜」の感情・・・・。続いて、全身が激しい幸福感に襲われる・・・。
まさに筆舌に尽くせない味、「この美味しさを何と表現すればよいのか・・・・」の世界である。
敢えて表現をするとすれば・・・・まずはすすり心地としては、麺の表面の摩擦係数が非常に低く、とても滑らかなウエーブを奏でながらスムースに口に入って来る。その際に太麺で縮れているため、ややゴツゴツする量感はあるものの、柔らかな角のため丸く優しい口当たりになっている。そして歯を入れると、モッチン、モッチン・・・・と優しく噛み切れる感じ。
噛み締めるとコシはあるのに、粉っぽさが全くなく、舌の上で滑らかにとろけてゆくような・・・・剛と柔の口当たりを非常に高次元で両立させている。
そして飲み込んだ時のスルリと滑らかな喉越しと来たら・・・・・。まさに、言葉では表現しきれない比類のない「口解け感」と、昇天するかのような「喉越し」なのだ。
何より、一番の大きな特徴は、口の中で、麺が舌にやさしく「寄り添ってくる」ような・・・・ヒューマンな感覚があることだろう。
麺が機械的な直線の動きではなく、例えるなら、まるで太極拳の達人の演舞のよーな・・・・所々でゆっくりと真円を描くような、流れるように「円く」動く感じに満ちている・・・・のだ。
この一連の感覚・・・・・ソファでくつろいでいた所へ、ペットの可愛い子猫が「ニャァ〜ン」と、足元へと擦り寄って来て・・・・そして抱き上げたひざ元で、「丸く」なってまどろんでしまうような・・・・その「丸く」なった子猫に「寄り添われて」、子猫の頭を優しくなでている時の心理・・・・に限りなく近い気がする。
何とも言えない安心感、充足感、幸福感で満たされてしまう、食べ手の脳内に「アルファ波」があふれ出る超癒し系の食感であり、食べ心地であり、美味しさに他ならない。
豊富に乗る具の数々は、麺のあまりの素晴らしい印象の影に隠れてしまいがちだが、チャーシューは、繊維が密に固まったモモ肉特有の歯応えでモサモサとする感じがあり、さらに厚みがあるために歯切れが重く、ちょっとモッサリと感じられてしまう。モグモグとしっかり噛み砕くようにして食べると徐々に肉の旨味が出て来る。肉の繊維感がやや粗めに感じられ、また、微かではあったが、やはりとら食堂と同じような清々しい不思議な香りがチャーシューから感じられた。
ホウレン草はエグ味もなく、緑色野菜の風味がきちんと残っていて、軽く心地よい歯切れで美味しい。
メンマにはあまり力を入れていない感じで、シャクシャク柔らかめで味付けは薄め、量も少なめと言うこともあって存在感はあまりない。海苔は磯の風味がやたらと強く感じられた。
後日ネットで調べてみると、手作りのワンタンも人気らしく、「まるで雲を呑む様な食感のワンタン・・・・」などと表現されている。この手打ち麺の無上の食感を知った身としては、まさにその表現もむべなるかな・・・・であろう。次回、訪問する機会があればぜひ食してみたいものだ。
手打ちならではのメリットを一言で言えば、機械打ちの限界を超える「超多加水」と、同じく機械には不可能な「手ごね&延ばし」によるグルテン形成、の二点に集約されると思うが、しかし、実際には、機械のセンサーやプログラムでは到底実現できない職人の「勘」と「技」により、一食ずつ自分の手の感触を通して麺が作られるからこそ、何よりも言葉では表現しきれない食べ手の「心の琴線」に触れられる麺の美味しさが生み出されるのだと思う。
以前、「備前焼」か何かの有名な「窯元」のご主人が、コンピューター制御のガス窯や電気窯では、大量生産の工業品は焼けても、人を感動させる「芸術品」となると、手作業による炭焼き以外では絶対に創れないと言っていた言葉を思い出す。
「21世紀を迎えた今でも、なぜわざわざ手打ちなのか?」「機械で打つのといったいどこが違うのか?」・・・・・と、もしそう尋ねる人がいるならば、ぜひこちらのお店を訪ねて食べてみて欲しい、と答えたい。
「手打ち」の看板を掲げながらも、せっかくの手打ちの意味が上手に表現されていないと感じるお店も決して少なくない中、こちらのお店には、麺を手で打つことの「真の意味」、その回答の「すべて」がある・・・・と思う。
(麺は完食。スープは4割飲んだ。)
↓続きあり
〜手打中華 すずき その2〜
ちょうど一年ぶりの再訪問。
相変わらず美しい植木に囲まれた瀟洒な雰囲気。
壁面のメニューと案内書き。
この一年の間に、価格改定があったようです。
念願だった「手打ワンタンメン」を注文。
手打ち麺をつけ麺風にして食べてみたかったので、
「手打ザル中華」も注文しました。
2006年7月上旬 手打ワンタンメン 980円
(この写真はクリックで拡大します)
信楽焼のきれいな器に入れられ、
何とも美しく豪華なビジュアルで登場した「手打わんたんめん」。
動物性のコクや旨味が一層増した美味しいスープ・・・・
手打による小麦粉風味が満点の太縮れ麺・・・・
まるで雲を呑む様な食感のワンタン・・・・
具も充実して・・・・「あっさり系」ながらも、
「ゴージャス」と言う言葉が良く似合う「一杯」です。
ホワッとする動物系素材の豊かなコクと旨味があり、一切の雑味がないきれいな味のスープ。
そこへ醤油の深い風味が見事に重なり、「キリッ」として凛々しい美味しさですな。
去年の記憶と比較すると、鶏ガラの「コク」や「旨味」が厚く出ている印象。
今回の手打ち麺は、意外にも、わずかにゴツゴツするストロング調の感触が見え隠れ。
さほど縦に伸びる「アシ」が感じられず、やや練り固めたような動きの硬さがあり、
ちょっと「すいとん」を連想させるかのような・・・「小麦粉の練り物感」「粉臭さ感」がありますた。
さほど芳醇な「多加水感」が感じられず、麺に透き通る感じがなく、ほぼ「不透明」な色合い。
中力粉を使った「うどん」や「すいとん」に近い、表面はとろけていながら、
中心部はやや「ザラッ・・・」とする「粉っぽさ」「粉の粗さ」を感じる舌触りですね。
かなりの「薄皮」に、小さな「餡」がプックリと浮き出るワンタン。
あくまで、「チュルルン」とする「皮」の舌触りと滑らかなノド越しを楽しむタイプ。
ともかく皮が柔らかくデリケートなので・・・・あまり高く持ち上げられない。
掴もうとしても、スルスルと箸をくぐり抜けてしまう感じ。
口の中へ「トロトロトローリ・・・・」と、柔らかい「猫足」で進入して来るワンタン。
口中では、まさしく「方円の動き」の如く、口の形に沿って舌の上にトロトロ「なまめかしく」横たわる感じ。
私が過去食べて来たワンタン史上、間違いなく「最トロ」の一つ。
小さな餡は香辛料が効いていて、画竜点睛的に味のワンポイントになっている。
2006年7月上旬 手打ワンタンメン 980円
去年、こちらの手打ち麺に大きな感動を頂いて以来、手打ち麺もさることながら、ぜひワンタンメンを食べてみたいと思っていたが、このたび成就。
ちょうど一年ぶりのお店は、相変わらず植木の手入れが行き届いた高級感漂うちょっとした料亭風の佇まいである。
壁面のメニューを見ると、この一年の間に価格改定があったようで、ワンタンメンは80円ほど値上がりをして980円になっていた。
登場したワンタンメン・・・・細かな紋様の入った器になみなみとスープが注がれ、黄金色の鶏油がキラキラと光り輝いている。
深く透明な醤油スープは、底へ行くほどに濃くなってゆく見事な明暗のグラディエーションが描かれ、息を飲むほどに美しい。さらに麺や具の盛り付け方、色彩的なコントラストも実に素晴らしい出来栄えで、ラーメンが目の前に登場した途端、その美しさに心の中で「歓声」を上げてしまうほどだ。ちなみに、このゴージャスな盛り付けを彩る美しい器は「信楽焼」なのだそうだ。
そして、顔を近づければ、鶏ガラと醤油が組み合わされた馥郁な香りが匂い立ち、一瞬にして食べ手の鼻腔と思考を占領してしまう。
スープを飲んでみると・・・・きちんと動物系素材の豊かなコクと旨味が感じられ、一切の雑味がないきれいな味わいだ。
そこへ醤油の深い風味が見事に重なり、「キリッ」として凛々しい美味しさを醸している。
色の濃さから想像できるように使われている醤油ダレの量は決して少なくないが、去年の記憶と比較すると、今回のスープは明らかに動物系の「コク」や「旨味」が厚く出ており、その分、醤油が目立たず、醤油のキレに頼っていない口当たりの「ふくよかさ」「柔らかさ」があり、「あっさり」でありながらも「芳醇」な旨味を湛えた美味しいスープと感じられた。
ちなみに「白河」のラーメンスープは、都内などの新進ニューウェーブ系のラーメンなどと比較すると、あれこれいじられておらず、ガラの下茹が長くて量もやや控えめな感じで、あまり旨味を欲張らないシンプルな「あっさり」路線を貫き通しているようだ。
同じく「ガラ」メインでも、都内などでは一ひねりある独特なクセのあるスープを出すお店もあるが、こちらはそう言う「クセ」のない味を美徳としているように感じられるお店が多い。
特にこちらのお店は、ひと際その傾向が強く、この系統の中でもリーダー的存在に感じられる。
そのため、あれもこれもと、ゴテゴテとした濃い味に慣れている人にとっては、味がやや一本調子と言うか、味に化調感やクドさがない分、後口がサッパリとし過ぎていて、さほど後を引く感じにならないように思えるだろう。後半になるとその「フラット」な味の調子に、物足りなさや飽きを感じてしまう人もいるかも知れない。
一方の手打ち麺は、前回食べて非常に感動したのだが・・・・今回、箸で掴み上げてみると、意外にも、ややゴツゴツする感触が箸を通して伝わって来た。
すすってみると、グルテンが少ないのかあまり縦に伸びる「アシ」が感じられず、やや練り固めたような動きの硬さがあり、去年のように所々でゆっくりと真円を描くような、流れるように「円い」「ヒューマンな」動きはあまり感じられなかった。
噛んでみると、ちょっと「すいとん」を連想させるかのような・・・・ややボソボソするような「小麦の練り物」感があり、噛み切る際にも「プツ、プツッ」と「歯離れ」が良くて粘るグルテン感が少なく、多加水系太麺ならではの歯を楽しませるような「モチモチ感」が去年よりも弱くなっているように思えた。
うむむ・・・・去年と比較してこの食味の変化は、こちらのお店を訪問する直前に「とら食堂」でツルツルとした光沢感の強い麺を食べた影響なのか・・・・それともたまたまの製麺の仕上がりのブレなのか・・・・は判らないが、改めて表現すれば、中力粉を使った「うどん」や「すいとん」に近い、やや「ザラッ・・・」とする「粉っぽさ」「粉の粗さ」「不透明感」を感じる舌触りだ。
そして、まさに「すいとん」のように、後半は麺の表面がトロトロと溶けかかって来るので、一層「練り物っぽさ」が増して感じられる。
待望のワンタンの皮はかなりの「薄さ」であり、大きな薄皮に包まれた小さな「餡」がプックリと浮き出て透き通りそうなほどだ。
見るからに、「餡」の味わいを楽しむのではなく、「チュルルン」とする「皮」の舌触りと滑らかなノド越しを楽しむタイプである。
箸で掴もうとしても、スルスルと箸をくぐり抜けてしまう感じで・・・・スープから持ち上げるのにもちょっと慣れが要る。コツとしては「餡」の部分を含めて箸で掴むと、丁度良い滑り止めになるようだ。
食べてみると、口の中へ「トロトロトローリ・・・・」と、柔らかい「猫足」で進入して来る。
口に入ったワンタンは、まさしく「方円の動き」の如く、口や舌の形に沿って「トロロロ〜ン」と舌の上に「なまめかしく」横たわる感じである。
「スルゥーリ・・・・」と音もなく、舌の上を「行き来する」、そのウルトラスムースなワンタン皮の動き、噛めば微妙にモチモチする感じがあり、非常にデリケートな口解け感と、上品でナイーブな美味しさを持っている。私が過去食べて来たワンタン史上、間違いなく「最トロ」の一つである。
小さな餡はそのサイズゆえか、さほど肉の旨味は強くないが香辛料が効いていて、味のワンポイントになっている。
次にワンタン単独ではなく、麺と一緒に頬張って口中での様子を伺ってみたが・・・・大きなワンタン皮が麺を覆って包み込んでしまい、そのためやや麺の存在感を消してしまう感じがある。麺の方も表面がトロトロとしているせいか、いつの間にかワンタンと食味が同化してしまう感じで・・・・この二者の食感の対比が生み出す「コントラスト・テイスト」「組合せの妙味」はあまり感じられなかった。
チャーシューからはやはりスーッとする爽やか系の炭の香りが感じられる。
この清々しい植物性の香りを感じると「あぁ・・・・白河ラーメンだなぁ」と感じる。歯応えはモソモソするモモ肉独特な硬さがあり、旨味は極めて淡白なもの。
半分乗る茹で玉子は3片に輪切りスライスされていた。おそらく玉子に隠し包丁を入れて、麺やワンタンの柔らかさと一致するように、柔らかな口解け感を付与しているものと思われる。
去年のホウレン草の代わりに、今回はサヤインゲンが乗っていたが、このサヤインゲンが「ホクホク」「ホコホコ」として、野菜独特の甘味があり、とても美味しい。メンマはショキショキ、ジョクジョクする繊維のやや粗いもので、味はスープと同化したもの。
食べ終わってみると・・・・さすがに去年の記憶から、事前の期待が高くなり過ぎていた事もあるのかも知れないが、ワンタンは良いとしても、ともかく「手打麺」の仕上がりが去年とは微妙に異なっているように感じられた。
写真を見ても判るが、去年の手打麺はもっと透き通るような透明感があり、言うなれば「半透明」で、淀みのないヒューマンな動きと食味であったが、今回の麺はほぼ完全に「不透明」でわずかにゴツゴツ感のあるストロング調の食味に感じられた。
どちらも魅力があり、いずれが好きかは、食べ手の好み次第と言うことになると思うが、あくまで私的な好みとしては、前回の麺の方が気に入って感じられる。
ただ、一方で、スープは明らかに今回の方が出来が良く、動物系のパンチがありつつマイルドな味わいであり、それでいて見事に「あっさり」とした後口の軽さがある美味しいスープだった。
これらの微妙なブレは、まさに「麺」も、「スープ」も、「具」も・・・・すべて「自家製&手作り」と言うことの証明なのだろう。
そう言う意味では、微細な範囲内の事ではあるが、毎回、さまざまな表情を見せてくれると思われ、むしろ、その日の「出来」を想像しながら通うのも一興なのかも知れない。
(麺は完食。スープは4割飲んだ。)
↓続きあり
〜手打中華 すずき その3〜
同上日 手打ザル中華 650円
(この写真はクリックで拡大します)
まさに「ザルうどん」をイメージした「ザル中華」。
うどん風の「ツユ」でシンプルに手打中華麺を頂くコンセプトです。
「具」が全く付かないとは・・・・やや予想外でしたが、
暑さであまり食欲の出ない夏に、冷たい麺とヒンヤリしたツユで
「サッパリ」と食事を済ませたいと言うニーズを狙っているのでしょう。
ワサビも加わり、後口が爽快なので、
「さっぱり」路線が好きな人には大いにウケそうですな。
ラーメン用の麺とは異なるのか、「縮れ」が少なく、いかにも「饂飩」チックな口当たり、歯応え。
うーん・・・・「中華麺」と「うどん」のハイブリッドと言うイメージでしょうか。
たまたまなのか、やや短く切れている麺が多かったような・・・・。
プルプル弾けるような動きは少なく、ゆったりと落ち着いた動き方をする麺。
すすってみると表面に粘度のある水膜をまとったような、水がうっすらと「したたる」感じがある。
口に入れても「フワリッ」とするような軽い食感ではなく、
やや練り固めたようなモッチリ感を持つ。
ヒンヤ〜リと冷やされたカツオ出汁の効いた和風の「ツユ」に、
薬味のワサビも付いて・・・・気分はまさに「ザルうどん」?
同上日 手打ザル中華 650円
せっかく白河まで来た事もあり、こちらのお店の手打麺の食味が、より一層ダイレクトに堪能できる「つけ麺」を頼もうと思ったのだが・・・・どうやら「つけ麺」と言うメニューはなく、「手打ざる中華」がそれに近いメニューとして置かれているようだ。
注文の時は、その「ザル」の意味をあまり深く考えなかったのだが、実際に登場してみると、明らかに「つけ麺」とは意味の異なるメニューであった事に気付いた。
そう、陶器の平皿に盛られた麺には、まさしく「ざるうどん」「ざるそば」の如く、刻み海苔が載せられ・・・・動物性の濁りのある「つけ汁」ではなく、和風のあっさりとした「つけツユ」が添えられて来るのだ。
しかも小皿でネギと薬味のワサビも付く一方で、チャーシューやメンマ、ナルトなどの具はまったく添えられず、何とも実に潔い構成であり・・・・気分はまさに「ザルうどん」と言う雰囲気だ。つまり、このメニュー・・・・「つけ麺」ではなく、あくまでネーミングが示すとおり「ザルうどん」をもじった「ザル中華」のコンセプトなのだろう。
ちなみに・・・・「つけ麺」系のメニューを食べていつも思うのだが、麺に「刻み海苔」が乗るのは個人的にはあまり好きではない。麺の小麦粉の香りを堪能するのに邪魔になってしまうし、食感にも刻み海苔特有の細かくカサカサとする食感がうるさく感じられてしまうのだ。これは日本蕎麦を食べる時も同様に思う。
まずは、海苔をどかし、手打ち麺をそのまま何も浸けずに食べてみた。
箸で掴むと、ゆったりと落ち着いた動き方をする麺であり、すすってみると全体に粘性のある水膜をまとったような、水がうっすらと「したたる」感じがあり、麺同士がくっつく感じがないのは良いのだが、「ツルツル」とする速くてビビッドな動きがなく、「モチモチ」「グルグル」と口中で動き回るような躍動系の感じでもない。
麺は噛み砕いても小麦粉の風味がさほど湧き立たず、多加水なのだが、冷水締めされているせいか、どこかしら麺のコシや躍動感をつぶしてしまったような感じで・・・・玉子をあまり使っていないのか、口に入れても「プリプリ」とか、「フワリッ」とかするような軽い食感でもなく、やや練り固めてしまったような印象がある。
その分、モッチリとして、「うどん」っぽい感じで悪くないのだが・・・・「うどん」と言うにはやや練り込みの足りない印象を受け・・・・「中華麺」と「うどん」のハイブリッドを狙っているのかも知れないが、人によっては多少中途半端なイメージに受け取られかねない気もする。
また、なぜかラーメンの麺よりも「縮れ」や「ネジレ」が少なく、たまたまなのか・・・・プツプツと短く切れている麺が多かったように思う。
「つけ汁」は、動物系が感じられず、カツオが香るほんのり甘口の「ツユ」・・・・そう、まさに「うどん用」「そうめん用」の「ツユ」そのものである。
塩気の少ない口当たりの良いもので「ヒンヤリ・・・」と冷たく冷やされていた。この辺りは「夏季限定メニュー」らしく、きちんと「涼感」の提供を意識しているようだ。
つけ汁に麺を入れ、食べてみると・・・・十分に美味しいが、食べ進むにつれカツオ風味がややあざとく感じられ、おそらくは市販品のツユをそのまま使っているか、もしくはそれらと同レベルのツユと感じられる。
途中でワサビを使ってみたが、こう言うツユと麺の組合せには、やはり薬味のワサビやネギが良く合う。食べ進むうちに、「手打中華麺」でありながらも、いつの間にか「手打うどん」を食べているような気になって来た。特に歯を入れると、「プツ、プツ」とあっさり簡単に切れる感じが「うどん」チックに感じられる。
ちなみに改めて、「うどん」と「中華そば」の違いとは・・・・と考えると、一つ目は「カンスイの有無」であろう。
これは、農林水産省が定めるJAS規格(日本農林規格)で、「かんすい」(鹹水)が入っている麺を「中華麺」として定義している由である。そのため、この規格の趣旨に沿えば、「カンスイ」の入らない麺は「中華麺」とは呼称できないことになる。しかし・・・・もともとのラーメンのルーツである中国も、現在では体に悪いからと、「かんすい」を使わない麺が主流になっていると言う話も聞くので、そろそろこの定義は見直しては如何かと思う。
事実として、強いアルカリ性を示す「カンスイ」はタンパク質を溶かす作用があり、そのため程度の差こそあれ、胃腸の壁を溶かして「ただれ」させてしまうのだ。
私もラーメンを連食すると、時折、ひどい下痢に見舞われる事がある。これは、カンスイによって胃腸壁が侵食されているのを感知して、体が防衛反応の一環として「カンスイ入りの麺」を強制排泄(下痢)しているのだ。
カンスイ多めのラーメンやつけ麺だと、たとえ「一食」だけでも、ひどい下痢になる事もある。ちなみに「蕎麦」や「うどん」や「スパゲッティ」では、決してそのような事がないので、やはり「カンスイ」は摂取し過ぎると「有害」なのは間違いないと実感する。
そして二つ目は小麦粉の種類の違いであろう。「うどん」は中力粉で打つが、中華麺はそれよりグルテンの多い「準強力粉」を使う事が多い。もしくは「グルテンの精製粉」を追加したりする。中華麺はこの豊かなグルテンにより縦に伸びる「アシ」の豊かさが特徴だ。そして三つ目は「縮れ」や「ネジレ」の有無だと思う。もちろんラーメンでもストレートの麺はあるが・・・・蕎麦やうどんには「縮れ」や「ネジレ」はないので、これこそ中華麺ならではの特徴と言えるだろう。
おそらくは、このメニュー・・・・地元の手打のうどん屋さんの「ざるうどん」にインスパイアをされて、誕生した経緯にあるメニューなのではないだろうか。
ただ、具が全くなく、麺だけをあっさりしたツユですするのは・・・・普段「つけ麺」に慣れている身としては、どうしても物足りなく感じられてしまう部分がある。
特にこのメニューは、「ラーメン」(手打中華)と同価格なので・・・・原価のかかったスープがたっぷり注がれ、多めのチャーシューやメンマ、青菜などの具が載せられるラーメンと比較すると、単に「麺とツユ」だけのセットでは、あまりお得感が感じられず、せめてもう少し何らかのプラスアルファが欲しい気がしてしまう。
しかしその一方で、7月、8月、9月の夏季限定メニューと言う事からも判るように、冷たい麺とヒンヤリしたツユで、暑さであまり食欲の出ない時期に「サッパリ」と食べたいと言うニーズには見事に的を射ているメニューだとも思える。ワサビなども加わり、何よりも後口が爽快なので、「さっぱり」路線が好きな人には大いにウケそうだ。
スープ割は・・・・あるのかどうか判らないが、「ツユ」のコンセプトや器の大きさから考えても、可能性が低そうに思えたので、スープ割はせずにそのままお店を後にした。
(麺は完食。スープ割はせず。)
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