ラーメン&つけ麺食べ歩き
栄屋ミルクホール
(東京都 千代田区)
店名 |
軽食・喫茶 栄屋ミルクホール(さかえや) |
住所等 |
東京都千代田区神田多町2-11-7 【地図表示】 |
禁煙 |
タバコ可否不明 |
訪問日 |
2006年4月中旬 ラーメン 550円 |
〜サカエヤ ミルクホール〜
お店に到着しました。東京メトロ「淡路町駅」から徒歩1〜2分。
「小川町駅」「神田駅」「新御茶ノ水駅」「御茶ノ水駅」「秋葉原駅」等も徒歩圏内。
この界隈は伝統ある「神田の老舗」の名店のメッカです。
ほう・・・こちらのお店、昭和初期に流行した壁を銅版で装飾する「看板建築」という貴重な様式ですね。
昔は軽食や喫茶のお店を「ミルクホール」と呼んだそうな・・・。
「軒先」が低いのもレトロ感をあおります。
店内は小型のテーブル席が散在します。
メニューの一部はお休みなのか・・・白紙で隠されています。
現在の主力は麺類とカレーライスのようですな。
白と茶のツートーンの落ち着いた店内。
外観から想像するほどレトロな感じではないかな。
配膳用のスペースから少しだけ厨房が見えます。
麺上げは平ザルを使用していました。
「ラーメン」を注文。
おお・・・やはり「ラーメン」を食べるなら、
この「メラミンテーブル」+「パイプイス」のコンビが無敵でしょうな。
2006年4月中旬 ラーメン 550円
(この写真はクリックで拡大します)
「昭和」の老舗テイストを良い感じで残しつつ・・・・
スープも、麺も、具も、味はしっかりと「平成」に「歩を進めて」いるイメージ。
決して「アッサリ」し過ぎず、しっかりと「深み」と「旨味」のあるスープ。
濃い味好きな人でも物足りなさはないでしょう。
さすが「鶏ガラ+醤油」のコツを知り尽くし、「円熟」した味わいながら、
現代人の舌を「判っている」な・・・と感じる。
最初に醤油の明るい醸造風味が「キリリッ」と効き、
続いてガラの旨味が「ジワー・・・」と舌へ染み入るようにやって来て、
最後にミリンの甘味が「ホワホワーン・・・」と味わい立つ、美味しさの「三重奏」。
うーん・・・まさに、日本人のDNAに働きかける味・・・?
麺は決してレトロではなく、見た目からして明るい風合いの現代的な食味の中細麺。
ホワホワと柔らかな口当たりに「心なごみ」ます。
すすると「ユルルル〜ン」と柔らかで、唇や舌先を舐めるようにして口へ入って来る。
もちろん、こちらの醤油スープとの相性はベストな仕上がり。
絶妙な表面の「ハリ」や「輪郭」を残しながら、「たおやか」「ふくよか」な食感を持っているのはお見事。
麺の「ゆるゆる〜」とするリラックス感が絶妙、それでいて全く「古臭くない」。
常に現代人の価値観に照らし、良いところは残し、そうでない所は「改良」している「研究熱心さ」を感じる。
2006年4月中旬 ラーメン 550円
ご存知、神田にある老舗ラーメン店。
「江戸三大祭」の一つであり、「天下祭」「江戸の華」とも謳われた「神田祭」(神田明神)で広く知られる「神田」の街。
清水の次郎長の浪曲、「江戸っ子だってねえ」、「おうッ、神田の生まれよ」、「寿司喰いねえ」・・・・の「森の石松」の一節でも「江戸っ子=神田」のイメージが出て来るように、この「神田」界隈は江戸時代から庶民文化の中心地として非常に栄え、無数の歴史を育んで来た「由緒ある街」である。
それゆえに、今なお長い伝統と歴史のある「老舗」の名店も数多く、日本蕎麦の「まつや」や「神田藪そば」、甘味処「竹むら」、鳥すき焼「ぼたん」、鮟鱇鍋「いせ源」などは、その不朽の名声はもとより、お店の建物自体も東京都選定歴史建造物にも指定されているほどの貴重な存在となっている。
他に、文豪の池波正太郎や夏目漱石も通ったと言う洋食の「松栄亭」、200年以上も続くうなぎ「神田川本店」、江戸末期創業のフルーツパーラー「万惣」なども良く知られている。
実は、私も一時期「神田の老舗店巡り」に凝っていた時期があり、これらのお店へもほとんど行った事がある。伝統の味もさることながら、歴史ある木造家屋の持つ「時空を超えた魅力」は素晴らしく、ちょっとした「非日常体験」「タイムスリップの世界」を楽しませてくれる。(松栄亭は数年前に建替えられてしまった)
また、神田須田町からこちらのお店のある神田多町の辺りを歩くと、昭和初期に流行した、建物の壁面に銅板製の装飾を施した「看板建築」と言う古い様式の建物を見つける事ができる。
実は、こちらのお店も、その「看板建築」の代表的なお店の一つとして知られているようだ。創業は1945年、太平洋戦争の終戦の年とのことなので、既にこの地で60年以上もの歴史を持つお店と言う事になる。
今では壁面の銅版が酸化して「緑青」(ろくしょう)となっており、「ミルクホール」と書かれた大きな白いノレンがかかっている。看板には「軽食・喫茶」とあるように、初期の頃はコーヒーやミルク、軽食などを出す、当時としては「モダン」なお店であったようだ。
白い大きなノレンと低めの「軒」をくぐって入店すると、さほど広くはない店内は白と茶の落ち着いたツートーンカラーでまとめられ、懐かしい「メラミンテーブル&パイプイス」のコンビが迎えてくれる。壁面のメニューを見ると一部が白紙で覆われ、どうやら休止中のメニューもあるようだ。現時点では「麺類」以外では、「カレーライス」、「おにぎり」、「いなり寿司」などの文字が見て取れる。
「ラーメン」をオーダーして、待つこと数分、配膳用の細長い窓を通して、厨房では平ざるで麺上げをしている様子がわずかに見える。
ラーメンが目の前に置かれると、スープからは醤油とガラの風味が混じり合った良い匂いが立ち込めて来る。
表面に油がほとんど浮かないため、スープの香りが油膜に遮断されることなく、「ホワホワ」と・・・湯気と一緒になって周囲一帯にまき散らされている感じだ。
そして飲んでみれば・・・・一口目から明確に舌を覆う美味しさ。
まず、舌の中央に柔らかな醤油風味が「キリリ」と立ちながら、ガラの風味が周囲から覆い囲むように味を固めていて「万全」の包囲網が敷かれる。そして数秒間・・・きっちりと「旨味」を堪能させてくれた後には、ミリンの甘味がホワーン・・・と口の中に広がる印象だ。砂糖なども使っているのかどうか、やや後口の甘味が強すぎる気もするが、本格的に飲もうと思えば、レンゲが止まらない美味しさである。
醤油ダレは、塩気が強いとか、味が濃いとかではないのだが、「ビシッ」と見事に喉元へ決まる「水平チョップ」のように巧みに効いていて、何と言うか・・・・・鶏ガラ醤油スープを「知り尽くした」かのような、円熟し切った味のまとまりの良さは、さすがとしか言いようがない。そこへ、さらに白ネギと青菜の「パリッ、シャクッ」とする清涼感と、鮮度感のある香りが心地よいアクセントになって加わり、全体のトーンを見事に「明るく」している。この二者の果たしている役割は想像以上に大きいだろう。
加えて、ラードがないので、口当たりがとても「柔らかい」スープなのが印象的だ。そのせいで味が舌へ実に良く「密着する」と言うか、味の細い線やデリケートな部分まで非常に伝わりやすく、後口もスッキリとして感じられる。
ちなみに、途中で隣の客が頼んだ「タンメン」からは、淡色野菜とゴマ油の美味しそうな香りが「ホワ〜〜〜ンッ」とこちらまで匂って来て、思わず「タンメン」も追加したくなる・・・・ほどの良い匂いであった。
そして、この醤油スープと一体化した麺の「相性」もまた実に素晴らしい。
中細の麺は、カンスイ臭などはなく、見た目からして既に「レトロ」の範疇ではなく、色白の現代風のルックスである。しかし、すすってみると昨今流行の「硬め」とは趣きを明らかに異にし、「ユルルル〜ン」と柔らかで、唇や舌先を舐めるようにして口へ入って来る。
噛むと「フニフニ」と言う、優しい、柔らかな風合いを備えた麺だ。しかし、決してフニャフニャとかデロデロとかにのびている感じではなく、絶妙な表面の「ハリ」や「輪郭」を残した「たおやか」&「ふくよか」な食感を持っている。
この「ゆるゆる〜」感が絶妙。それでいて全く「古臭くない」。まさに、現代人の価値観に照らし、良いところは残し、そうでない所は「改良」している見事な麺。
老舗と言うとチャーシューはモモ肉が多いと思うが、この点もこちらでは珍しく「肩ロース」を使っている。
醤油で強めの味が付けられ、醤油の鋭角的なキレが残ったややしょっぱめの味付けになっているが、肉質自体はホロホロと自然にほぐれるまでは行かないものの、ギシギシとかミシミシ硬いタイプではなく、肩ロースらしいふっくらしたもので、厚みもあり、肉の旨味もゆっくりと感じられて来る。
メンマは繊維が太く、コリコリする食感で、やや大味な感じだが、ほんのりとした甘味が付いている。
途中、試しにコショウを少し振ってみたが、スープに「厚み」と「体力」があるので、多少のコショウを振っても、スープの味が微動だにしないのも凄い。
ともかく、スープのまとまりの良さ、その構成の巧みさは見事で、おそらくはほとんどの「日本人」が納得する味の作り込みに思える「味のDNA」を感じさせられる・・・・。それでいて、「古さ」とか「弱さ」とかは全くなく、逆に「初心者っぽさ」なども当然ながら全くない。
いやはや、こちらの現店主さん、相当「研究」しているな・・・・と思う。
素材は鶏ガラと昆布と野菜などで取ったスープと言うことらしいが・・・・確かに鶏ガラだけではない旨味の「深み」がある。これが昆布の旨味の成せる業なのだろう。味付けは決してナチュラルさばかりではないようだが、もっと「あっさり」「うっすら」「物静か」な味を想像していた私にとって、伝統的な東京「中華そば」の路線を感じさせつつも、このしっかりと「パンチ」のある味わいは、「十分過ぎる」ほどに美味しいと感じられた。
つまり、この味・・・・決して「昔のまま」なのではなく、現代の味覚水準や嗜好に合わせて、割と積極的に「チューン・アップしている味」だと思う。
と言うよりも・・・・世の中が「無化調だ」「ダブルスープだ」「新素材だ」・・・・などと騒いでいるのを尻目に、いつの間にか、それらの一部を明らかに「凌駕」してしまっている印象さえ受けてしまう。
ただ、後半になると、やや舌に味が蓄積し過ぎてしまうと言うか・・・・どちかと言えば「前半」にウェイトを置いている味の造り込みにも感じられた。
もし、こちらのスープと似た味を都内で探すとしたら・・・・「光江」や「来集軒」(いずれも台東区)、「かいらく」(北区)などが近いと思う。
いずれも「老舗」である訳だが、「きっちり」と旨味とパンチのあるスープを出している。つまり、「老舗」のテイストや路線を上手に残しつつも、その味は常に「時代とともに歩んでいる」事を強く感じさせる。
逆に、あくまで想像の範囲になってしまう訳だが、確かに「50〜60年前」の味はきっとこうだったのだろう・・・・と納得させてくれる「真に100%昔のままのラーメン」だと感じるのは、私の知る限り・・・・・都内では「福寿」(渋谷区)ただ一軒だけである。
「福寿」のラーメンは、到底、考えて作れる味じゃないからなぁ・・・・。
(麺は完食。スープは6割飲んだ。)
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