ラーメン&つけ麺食べ歩き
源宗近
(東京都 武蔵野市)

(2007/9閉店)

店名 源 宗近(みなもとの むねちか)
住所等 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-30-16 【地図表示】
禁煙 タバコ可否不明
訪問日 2005年8月上旬 伊勢底引き溜り醤油ラーメン 750円



〜源 宗近〜

(各写真はクリックで拡大します)




お店が見えてきました。
吉祥寺駅の北口から徒歩3分ほど。
三越百貨店の裏手になります。






瓦をあしらった「和風」のデザイン。






つけ麺もあります。あぐーラーメンって何だろ?
「伊勢溜り醤油ラーメン」を購入。






店内はL型カウンター形式。
厨房との距離が近いので調理の様子が良く見えます。






店内に飾られた額入りの口上書き。
額縁もオリジナルの特注のようですな・・・。






お品書きです。
伊勢底引き溜り醤油がキーテイストのようです。






メニューの裏にも口上書きが。
「魚系」「肉系」「貝系」のトリプルスープのようですね。










2005年8月上旬 伊勢底引き溜り醤油ラーメン 750円



これだけ濁りのあるスープでありながら・・・実に「澄んだ」美味しさ。
まるで雲の上を歩くかのような軽快感です。
まさに「味」が、舌へ優しく「ソフトランディング」してくる・・・イメージ。

塩気や添加物感を一切感じさせず、
滔々(とうとう)とした豊かな量感の旨味にあふれながらも、
スイスイ、スルスルと・・・・驚くほどに喉の通りがスムースなラーメン。









「魚系スープ」「肉系スープ」「貝系スープ」の三種を、
「黄金比率」にて紡ぎ出したトリプルスープ。
様々な素材片が溶け込んでいるのが肉眼でも良く見えます。
ほんのりとした甘味がベースに敷かれ、非常に優しい口当たり。






中太麺は、すするとユルユルとしなやかで滑らかな口当たり、
噛み締めるとポクポクとするとても素直で優しいコシ。
卵を贅沢に使った豊かな味わいです。






本物志向の「焼き豚」です。
「ブリブリ」「プキプキ」する特有の反発力のある硬めの食感。
香ばしい風味があり、肉の旨味もギュッと詰まった感じ。




2005年8月上旬 伊勢底引き溜り醤油ラーメン 750円

2005年2月創業の無化調&厳選素材系ラーメンを出すお店。吉祥寺駅北口の三越デパートの裏手にある。
気合の入った店名と言い、店内の口上書きの凄さと言い、長いメニュー名と言い・・・・いやが上にも期待感の高まる要素が満載である。
そんな中でもお店のこだわりの筆頭が、どうやら「伊勢底引き溜り醤油」をタレとして使用している事のようだ。溜り醤油とは「味噌」を作る工程で、底に溜まった液体を味わってみたところ、これがあまりにも美味であったことから、「溜り醤油」として生産されるようになったものらしい。通常の醤油よりも遥かにアミノ酸(=旨味の元)が豊富な醤油で、現在も伊勢地方で多く生産、消費されている。

店主さんの調理の様子を見ていたら、ラーメン一杯を作るに当たり、ともかくその調理の「工程数」が非常に多いことにまず驚かされた。
おそらく他店の倍以上は手数を踏んで調理されているのではないだろうか。若いながらも気合を感じるその調理の様子に、ますます期待感がアップする。

スープは店内の口上書きによれば「魚系スープ」「肉系スープ」「貝系スープ」の三種を、「黄金比率」にて紡ぎ出したトリプルスープのようだ。
一口飲んでみると・・・・・優しく、柔らかく、厚みがあり、幅のある旨味が、じんわりと舌の上へ満ちあふれて来る感じで・・・いかにも円い旨味であり、天然の旨味、天然のアミノ酸が非常に豊富な感じの美味しいスープである。
ただし、ワラワラと味がうるさく押し寄せて来る賑やかなスープや、何か一つの素材、例えばカツオなどの風味が華々しく香り立つストレートな味わいのスープ・・・・ではない。
動物系も魚介系も、その味わいは見事に「渾然一体」となっていて、「まろみ」「円」の中で、まるで行儀良く「正座」しているかのような・・・・そして、実にきれいな日本語と品の良い語り口で・・・優しく理路整然と語りかけて来るようなイメージである。

個性的なインパクトのある味とか、何かの素材を突出させるとか、そういう路線ではなく、まさに「黄金比率」と言えばいいのか、素材同士の「和」「バランス」「融合」を、実に品良く高い位置で統率している味と感じられる。そのため、ダシの味も簡単に「何味」とは表現できない複雑で奥の深い味である。
もしも敢えて、最も近いイメージのものを挙げるとしたら・・・・スープにほんのりとした甘味があることもあるが、どことなく高級な料亭などで出される「スキヤキ」の、様々な豊富な旨味が凝縮した鍋底の残り汁の味わい・・・・であろうか。

そして何より驚いたのは、これだけ濃厚に濁りのあるスープでありながら、まるで「無重力」のような軽さに支配されていることだ。
この飲み口の心地よい「軽快さ」は、まるで「味」が舌へ優しく「ソフトランディング」してくる・・・イメージなのだ。決して「ドスンッ」とか「ビシッ」とかハードな伝わり方や無粋な伝わり方をしない、「ふぅんわり」とした優しい感触、まるで雲の上を歩くような軽快感で味が伝わって来るのである。
自然で、末広がりな、優しい旨味に満ちていて、塩分感や化学的な味が一切存在しておらず、見た目は濁っているが、実に「澄んだ」味わいなのだ。

麺は一見すると低加水タイプかと思ったが、ユルユルとしなやかで滑らかな口当たりで、ポクポクとするとても素直で優しいコシである。噛み締めても粉っぽさが全くなく、非常に入念に練り込んでいるような麺。卵もかなりぜいたくに使っていると思う。
随分と麺が色濃くスープを吸っているのは、提供直前に、麺をスープで軽く煮込んでいるようだ。麺をせっかくの美味しいスープと十分に馴染ませた状態で提供したいという事なのだと思うが・・・・・昨今、「つけ麺」などが人気化しているように、むしろ麺にも麺自身の持つ美味しさや本来の素晴らしい風味があると思うので、私的な好みとしては、最初からあまりスープを吸った状態で提供されるのは、いかがかと思えた。

チャーシューは口上書きにも「煮豚ではなく焼豚」とあるように、オーブン等で焼いたもののようだ。そのため、歯応えは厚手で硬めのキクラゲを噛み砕くような「ブリブリ」「プキプキ」する特有の反発力のある個性的な硬さを持っていて、香ばしい風味があり肉の旨味もギュッと詰まった感じである。しかし、たまたま今回はやや筋の部分に当たってしまったようで、噛み切るのに時間がかかる部分があった。
いわゆる「焼豚」としたのは、あくまで「本物」志向の一環と言うことなのだと思うが、サクサクとかホロホロとか歯切れが軽い感じのチャーシューや、トロトロと蕩(とろ)けるようなタイプのチャーシューが大勢を占める中、新鮮な感覚ではある。

メンマはザキザキと言う硬めの歯応え、繊維が密に結着しあったような感じで、やや薄めと言うこともあって、歯でザキザキと噛み刻むように食べる感じになる。味付けはスープと同化したもの。
白髪ネギには、水菜(?)とおほしき緑色の刻み葉が混ぜられているのだが、この刻み葉がまるで蓬(よもぎ)のようなちょっと野性味の強い香りに感じられ、その香りの強さがちょっと気になった。また、白髪ネギはとても上手に細く切られているのだが、マイルドで素直な麺の食感と一緒になると、相対的に白髪ネギの食感が結構目立って感じられる。

器の一画に揚げ玉が固まって乗せられているのが目を引く。その部分のスープをレンゲにとって飲んでみると、これが醤油味のスープとなかなかの好相性で、揚げ玉の芳ばしさと油のコクが食欲をそそるとともに、ちょっと「たぬきそば」テイストを連想させる。これ位の量であれば全体のバランスの中にも上手く溶け込んでおり、個性的で面白いと思う。

スープは、完飲することを全く意識しないまま、まるで導かれるように自然と完飲に至ってしまった。
そうして食べ終わってみると・・・・・改めて、これは相当「潤沢」に素材を使っているなぁ・・・と感心させられる美味しいスープである。
旨味は濃い口でしっかりと軸のある味なのにもかかわらず、「力み」が全くなく、その旨味の舌への触れ方といい、塩分の存在感の無さといい、ともかく非常にナチュラル&スムースなのである。
要は、強めの塩っ気がテコとなって素材の旨味を倍増させるとか、化学調味料や粉末エキス類で旨味を補強するとか・・・・そう言う、何とかより多くの旨味を演出しようとする「あくせく」とした行為とは、完璧に「無縁」と言う印象なのだ。つまり、投入している素材群のもともとの「質と量」が、並々ならぬ「潤沢ぶり」であり、そこから産み出される旨味のみで明らかに十分過ぎるほどであり、一切の「小細工は無用」と言う堂々としたスタイルを確実に実現させていると思う。

滔々とした豊かな量感の旨味にあふれながらも、塩気や添加物感を一切感じさせないスープは、スイスイと口に入って来て、麺もスルスルと軽快に口に入って来る。この「抵抗」の無さ、「ひっかかり」の無さ・・・・驚くほどに喉の通りがスムースなラーメンである。
そして、至極、当然のように・・・・・ラーメンを食べる前と食べた後で、一切の体調の変化を起こさせないのは、まさに「お見事」と言う他ないだろう。


(麺は完食。スープも完飲。)










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