ラーメン＆つけ麺食べ歩き
神名備
（東京都 文京区）

2004年5月下旬　塩ラーメン　714円　

ご夫婦とおぼしきお二人で営まれている極めて本格志向のお店。
店内はウッディでシックな造り。待ち客用の席が６席ほどあり、そこにはコミックなども置いてある。カウンター上にはスープ作りに生かしていると思われる漢方薬素材の入ったビンがズラリと並んでいる。

器を十分に温めてラーメンを出しているお店は多いが、こちらでは陶器製のレンゲまでもが温められて出てきたのには少し感激した。
スープからは、少々だがニンニクの香りがゆるやかに漂ってくる。一口スープを飲んでみると、ややしょっぱめに感じられるが、その奥底には素晴らしい密度感のある旨味が豊かに広がっている。何種類もの、海、山、大地、動物達のさまざまな素材が使われ、その中から根気良く濁りと雑味を取り除き、極めて丹念にクリアな旨味だけを上手に引き出している印象だ。
その中でも鶏の風味が穏やかに姿を見せてくれる。舌の上にしっかりと素材の旨味が乗って来て、かなりハイレベルな「出汁」の美味しさである。
スープに浮いている油が出汁の旨味を一層豊かに膨らませている。やはりラーメンのおいしさには動物性の脂肪がある程度必要なのだろうと改めて感じる。

しかし、ちょっと残念なのはそのおいしさを堪能しようと、舌が出汁の旨味を追いかけようとすると、やや強めの塩分がしゃしゃり出てきて、舌の行く手をさえぎる気がすることだ。ただ、この辺は、じんわり徐々に味わいが深まるタイプのスープよりも、多少高めの塩分で一口目から強いインパクトでビシッと決めてゆく事を選択したのだろう。ガツンと一口目から判りやすいインパクトのあるスープを好む客も、実際に少なくない。
スープには清涼感と舌触りを加えるためか、多めのワケギが乗っているが、風味が穏やかなので、まったくスープの邪魔にはなっていない。

太目の黄色い麺は店内の説明によると玉子麺ということである。確かに味は、カンスイ臭さは皆無で、とても良いと思うが、食感はプリプリする感じはなく、ちょっとモソモソする感じで歯応えは弱めである。しかし、そこへ多目のシャキシャキするモヤシをうまく絡めており、麺を食べた時の食感、歯応えを非常にうまく向上させている。
チャーシューは大き目のスライス一枚と、ブロック肉が入っていた。食べてみて驚嘆したのは、この適度にサシの入る柔らかなチャーシュー、その口解け感、旨味の豊富さである。実に最上レベルの美味しいチャーシューだ。肉桂（ニッキ）や八角のような、ちょっとスースーする清涼感のある甘く華やかな香りがつけられていて、この香りが多少スープにも移っており、清涼感を演出している。

ご夫婦らしきお二人で切り盛りされていて、明るく真心のこもった調理と接客である。ただ、会計する客が出るたびにレジへ向かい、そのため調理や接客がたびたび中断しているようなので、できれば小型の券売機などを置いてはどうかと思った。


（麺は完食。スープは８割飲んだ。）

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