ラーメン&つけ麺食べ歩き
次念序
(埼玉県 鴻巣市)
店名 |
次念序(じねんじょ) |
住所等 |
埼玉県鴻巣市寺谷146-1 【地図表示】 |
禁煙 |
タバコ可否不明 |
訪問日 |
2006年8月下旬 つけめん 750円 |
2007年1月上旬 つけめん 750円 |
〜JINENJO その1〜
鴻巣市を縦断する国道17号から、少し入った通称「フラワー通り」を進みます。
お店の入居している「パンジーハウス」の三角屋根が、遠く道の正面に見えて来ました。
「パンジーハウス」は鴻巣の「農産物直売所」です。
敷地の入口に「ラーメン」の赤いノボリ旗が立っています。
この三角屋根の建物のウラ側がお店の入口。
建物をグルリと回ると・・・・お店を発見。
道路に背を向ける形なので、道路からは入口が見えないので注意。
「パンジーハウス」敷地内では
多くの「鉢植え」や「野菜」が直売されていました。
店内の造作は、店主氏の修行した「東池袋大勝軒」を模したものだとか・・・。
なるほど・・・席配置、窓の位置など、良く似ていますな。
奥に見える小窓の向こうが製麺室です。
メニューです。
この日は2時頃で既に「中華そば」は売切れでした。
「つけめん」を注文しました。
食べ終わってお店を出たところです。
すぐ左隣りが「鴻巣フラワーセンター」の正門です。
正門を少し入ると「フラワーセンター」の建物が遠くに見えます。
何でも、埼玉県は全国第2位の「鉢物」生産県だそうな・・・。
こちらはその「卸売市場」の施設です。
2006年8月下旬 つけめん 750円
(この写真はクリックで拡大します)
うむむ、今どき・・・・これほど「まじめ」に作るとは・・・・。
とにかく「つけ汁」も「自家製麺」も、徹底して「真面目&真剣」に作られ、
とことん「内容が濃く」、ごまかしや妥協が微塵もない印象。
それでいて、決して「鬼気迫る」感じではなく、
あくまで包容力のある優しい「やすらぐ味わい」の仕上がり。
ただ、「自家製麺」と「つけ汁」・・・それぞれ単体では「絶品」ですが、
なぜか両者に「世代間ギャップ」を感じるよーな気が・・・・。
「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」・・・・まさに「旨味のトルネード」。
「過剰品質」とも言えるほどの、恐れおののく図太い堅固な「旨味」の構成密度。
しかも、味に「閉塞感」がなく、きちんと「風が通る」感じもある。
細長いバラ肉チャーシューの両端がつけ汁の両側から「コンニチハ」。
修行先の「東池袋大勝軒」の「往年の味」を彷彿とさせる自家製麺。
「サクサク」と軽快ではなく、少し「モッチリ」「モニョモニョ」と粘りながら切れる感じ・・・。
割と多加水で、決して硬すぎず、柔らかすぎず・・・「ムニッ」とする適度なコシ。
うーん・・・何とも懐かしい「昔日の匂い」が鼻腔を抜けてゆく、独特な麺の香り。
玉子の風味はあまりせず、ちょっと「しけったような・・・」、「くすんだような・・・」、「湿っぽいような・・・」
最近ではあまり出会わなくなった「昔の小麦粉」テイストが口中にあふれ返る。
「麺量」はタップリの300g。
「大盛」は450g、「特盛」はドドーンと600g。
しかも、食べても食べても「食べ疲れ」せず、お腹に「ドカッ」と溜まる感じではなく、
ゆっくりと胃に「堆積」してゆく優しい腹心地のイメージが最高。
つけ汁に浸けて引き上げたところ。
「魚粉」がワラワラと唇回りにくっつき、ザラザラと舌に触る感じはあるものの、
あまりにも「ストロングな旨味」ゆえに、「辛味」や「酸味」等の定石「エフェクター」さえも
完璧に「無用」の物としてしまった驚異の「つけ汁」。
スープ割をして頂いた図。
味がガラリと変わるような事はなく、つけ汁の味わい「そのまま」に
ほど良く溶き延ばされたスープになって戻って来る。
スープを飲み干せば、相当量の動物性素材が胃の中に取り込まれた、
言いようのない独特な「満足感」が現出します。
お腹の中では、「ジンジン・・・・」と、長く、長く、素材の旨味が
心地よく「こだま」する感じが、食後もかなりの長時間コンティニュー。
2006年8月下旬 つけめん 750円
2006年5月創業、こちらの店主さんは「東池袋大勝軒」(東京・豊島区)で修行し、その後「六厘舎」(東京・品川区)を経て独立された方だそうだ。
お店は、鴻巣市にある「鴻巣フラワーセンター」入口の右隣りにある「鴻巣農産物直売所パンジーハウス」にテナントとして入居している。なお、間違って「鴻巣フラワーセンター」へ入ってしまうと大変な徒労に終わるので注意したい。
「鴻巣フラワーセンター」と「パンジーハウス」は隣接してはいるものの、全く別の施設であり、お店があるのはあくまで「パンジーハウス」の敷地内である。
店内の造作は、店主氏の修行した「東池袋大勝軒」の店内を模したらしいと言う話を聞いていたが、なるほど・・・・フロア面積自体はこちらの方がずっと広いものの、席配置や窓の位置など、確かに似ている。卓上の水差しや箸入れ、コップや調味料の容器までほぼ同じ物のようだ。
「中華そば」か「つけめん」のいずれにするか・・・・迷っていると、午後2時を少し過ぎた時間だったが、既に「中華そば」は売り切れと告げられ、自動的に「つけめん」をオーダーすることとなった。
なお、インターネットの情報によると、開業以来、「東池袋大勝軒」路線の味で営業していたのを、ちょうど先週の8月中旬から、メニューや味付けをリニューアルして独自色を打ち出した路線に変更したらしい。
登場した「つけ麺」・・・・魚粉の混じる「つけ汁」は大勝軒スタイルとは異なるものの、「自家製麺」は見た目ほぼそっくりである。
まずは、汁に浸けず麺だけをすすってみると・・・・ポヨポヨと軽く弾む感じではなく、ググッ・・・とした落ち着きのある動きで、決してストレートではなく、麺のウエーブによる「左右の動き」があることが感じられる。
噛み切る際も「サクサク」と歯の通りが軽快なのではなく、少し「モッチリ」と粘りながら切れる感じがある。
奥歯で噛み砕くと、「モニョモニョ」「モチモチ」と粘る感じがあり、割と多加水で「ムニッ」とする適度なコシ、決して硬すぎず、柔らかすぎず・・・・新規店にもかかわらず、最近流行の「がっつりタイプ」とは趣きを異にする、どちらかと言えば「レトロ」な食味である。
そしてその直後・・・・何とも「懐かしい昔日の匂い」が鼻腔を駆け抜けてゆく・・・・。
この懐かしい香り、何と言うか・・・・最近ではほとんど出会わなくなった「昔の小麦粉」の風味が口中にあふれ返る感じなのだ。
玉子の風味はあまりせず、カラーイメージで言えば「まっ白」でもなく、「グレイ」でもなく、「茶色」と言う感じだ。
ちょっと「しけったような・・・」、「くすんだような・・・」、「湿っぽいような・・・」、この匂いは、コンクリートとブロックで囲まれた湿っぽい「古い倉庫」に入った時に感じる匂いを連想する。
同じ自家製麺でも、高価な国産小麦を使って現代風に洗練された「白っぽい」「明るい」「瑞々しい」自家製麺の味から比較すれば、イメージとしてはかなり「古典的」「庶民的」「素朴」・・・と思えてしまうが、逆に言えば、「昭和」の時代はどの店もおそらくこういう小麦粉を使っていたと思え、これぞ「ラーメンの原点」とも確信できる何とも「郷愁心」をくすぐられる風味だ。
そして・・・・この麺の「味」「香り」「食感」は・・・・どこかで味わった麺と非常に良く似ているな・・・・と思ったのだが、ズバリ、大勝軒の老舗格「滝野川大勝軒」(東京・北区)の自家製麺と、かなり「共通項」があるように思えた。特に使っている小麦粉の独特な「湿っぽい」「茶色っぽい」風味はかなり近いものがある。
また、最近は「がっつり太麺」が流行しているようで、太麺を使っているお店の多くが、麺の持つ「本来の旨味」や、「ベストな食感」が出るポイントの「かなり前」の「硬すぎる」段階で茹で上げているように思え、時折、私には到底「半生」か「生煮え」にしか思えない麺を出されてしまい、戸惑ってしまう事がある。
実は訪問前は、こちらのお店もおそらくはそのような「麺硬め」志向である事を予想していたのだが、実際にはきっちりと「完璧なベストポイント」に茹で上がった「見事な茹で加減」で麺が登場して来たのには、正直驚かされた。
若い店主氏にもかかわらず、「麺の旨さのなんたるか」をきちんと理解している方のように思う。
そのため、決して食べ手にゴリ押しするような「インパクト系」「ストロング系」なのではなく・・・・この感触は「東池袋大勝軒」譲りの素晴らしい「優しさ」「柔和さ」に満ちた大らかな味が現れている印象だ。適度にしっかりとした歯応えがありながらも、食べても食べても食べ疲れせず、また、お腹に「ドカッ」と溜まる感じではなく、ゆっくりと優しく堆積してゆくイメージなのだ。
要は食べ手と「勝負する」麺ではなく、食べ手を「優しい幸せな」気持ちにできる麺だと思う。
食べ終えるとアゴが疲れてしまうとか、多めのカンスイで胃がキリキリ言うとか、硬すぎて胃の中でゴツゴツ言うとか・・・・等の麺とは完全に「別ジャンル」の美味しさを持つ麺である。
一方の「つけ汁」は、ゼラチンがトローリとしていて、様々な素材の風味に混じってサバ節や煮干の香りがビンビンと感じられた。
いざ、麺を浸けてみると・・・・「トプトプトプ・・・・」と沈んでゆくのだが、あまりにもトロミがあるので「底」が見えない感じであり、一瞬、まるで「底なし沼」のイメージを連想した。
そうして、麺を口に入れてみれば・・・・「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」・・・・まさしく、他店とは、あまりに桁違いな「素材」の「量」を背後に確信する、恐れおののくほどの、「過剰品質」とも言えるほどの、図太い堅固な「旨味」の構成密度だ。
しかも、それでいてパーフェクトな「味のパランス」を実現し、さらに味に「閉塞感」がなく、きちんと「風が通っている」感じがあるのは素晴らしい。
麺と一緒に口に入って来る魚粉が、多少はワラワラと唇回りにくっつき、ザラザラと舌に触る感じがあり、やや油が多いようにも感じられたが、すぐに気にならなくなった。
そして、何より驚いたのは、「つけ麺」の常套手段である「辛味」や「酸味」などの「エフェクター」がほとんどゼロであることだ。
あまりにも「ストロングな旨味」の強固さゆえに、これらの定石「エフェクター」さえも「無用」の物としてしまった驚異の「つけ汁」である。
うっすらとした甘味がほんのりと感じられるが、いかにも素材から出たと思われる・・・・どこまでも「素直」で、限りなく「自然な甘味」であり、「砂糖」などはほとんど使っていないか、もしくは「ゼロ」であろう。もちろん、塩気や醤油風味や化学調味料に頼った味でもない。実に、一切のごまかしのない「真っ正直」な味である。
この手の「超濃厚ゼラチン魚粉系」のつけ汁は、ここ数年で「ブーム」とも言えるほどに急速に人気を集めているが、その中で果たして「本物」と呼べるお店がどれだけあるだろうか・・・・。
実際、こちらのお店のような「本物」のつけ汁を味わってしまうと、いかに世の多くの「つけ汁」が、本来の旨味やコクの不足を、「塩辛さ」や「しょっぱさ」でごまかしていたり、「砂糖」や「酢」や「唐辛子」や「背脂」と言う安易な「エフェクター」に頼った味になっているか・・・・が嫌と言うほどに良く判る。
特に最近は「旨味」や「コク」の不足を大量の「砂糖」を投入して「甘味」でごまかしているつけ汁がとても多いと感じる。
そして、ここまでギュウギュウに「味が濃厚」なのだから、相当に膨大な素材を投入&凝縮しているのは間違いないのだが、それが決して「脅威」と感じられるような、食べていて気が抜けない感じや、「鬼気」迫る感じにはなっておらず・・・・圧倒的な凄い素材感を放ちながらも、あくまで包容力のある優しい「やすらぐ味わい」に満ちているのも、実に素晴らしいことである。
チャーシューは巻いていない「バラ肉」であった。細長いバラ肉の両端がつけ汁の両側から顔を出している。食べてみると、とろける感じではなく、ちょっとモサモサするが、肉の旨味はしっかりと残っていて、なかなか美味しい。
メンマは、たまたまなのか数本程度しか入っておらず、やや量が少なめに感じられた。つけ汁の旨味に圧倒されてしまうのか、味付けもやや大人しめに感じられた。
また、大勝軒系とは異なり、茹で玉子が入っていなかったが、こう言う濃厚ゼラチン系には玉子の無垢な味が、「口直し」に最適なのでデフォルトで半分は入れて欲しいと思う。
スープ割をお願いしても、味がガラリと変わるような事はなく、つけ汁の味わい「そのまま」に、適度に溶き延ばされたスープになって戻って来る。
カツオや煮干の風味で溶き延ばされることはなく、動物性の旨味とゼラチン質が豊富なスープである。
さて、食べ終えての感想としては・・・・・
「今どき・・・これほどまじめに、真剣に、とことん突き詰めたつけ麺を作る人がいるとは・・・・」と、感慨しきりである。
ともかく「つけ汁」も「自家製麺」も、本当に徹底して「真面目&真剣」に作られていて、とことん「内容が濃く」、ごまかしや妥協と言うものが微塵も感じられない。
この一杯を食べると、店主さんがどれだけ、この「つけ麺」作りに全身全霊で「打ち込んで」いるか・・・・その「思い」が、客である私にも、ひしひしと伝わって来る。
ただ、少々気になったのは・・・・「つけ汁」と「自家製麺」との相性だ。
実際に食べてみると、「つけ汁」はまさに「流行の最先端の味」なのだが・・・・一方の「自家製麺」はどこかしら「昭和の味」・・・・・と感じられてしまう気がするのだ。
それぞれ「単体」で味わうと「絶品」の出来栄えなのだが、両者を組合せて味わうと、両者の間に「世代間ギャップ」のようなものが感じられ、どこかしら「ちぐはぐ」に感じられてしまうのである。
この点、食べていて、「それぞれ」が絶品なだけに、何とも惜しい・・・・どうにもやるせない「ジレンマ」を感じてしまった。やはり、どちらかの「世代」に味を統一するべきだと思う。
果たしてこちらの店主さんは、どういうコンセプトの「つけ麺」を目指しているのだろうか・・・・。
それとも、8月に入ってから味をリニューアルしたばかりなので、まだこの辺りは「微調整中」なのだろうか・・・・。
また、塩気や化学調味料にも頼っていないため、後味も非常に心地よいのだが、さすがに、これだけ「旨味の溶岩流」のようなつけ汁を味わった後では、食後しばらくしても、多少の味が舌に残り、味が一斉に「サーッ・・・」と姿を消すことはなかった。また、極僅かにだが、煮干の独特な生臭味が後味として感じられる。
ただ、それら以上に、相当な動物性素材が胃の中に取り込まれた、言いようのない独特な「満足感」が確実にある。
私のお腹の中では、「ジンジン・・・・」と、長く、長く、素材の旨味が心地よく「こだま」する感じが、食後もかなりの長時間に渡って続いた。
(麺は完食。スープ割も完飲。)
↓続きあり
〜JINENJO その2〜
壁面に貼られたメニュー。
既に「中華そば」は売り切れておりました。
去年の夏以降、リニューアルしたと言う「つけめん」を注文。
2007年1月上旬 つけめん 750円
(この写真はクリックで拡大します)
前回の訪問以降、リニューアルした「NEWつけめん」です。
なるほど・・・・「麺」と「汁」が見事に「均衡」しましたね。
これぞ、昨今の「つけ麺ブーム」を牽引する
王道の「がっつり極太硬麺+濃厚豚骨魚粉汁」スタイル。
ただ、閉店ギリギリの時間だったせいかどうか、
「つけ汁」の状態がやや本調子でなかったような気が・・・・。
粗く切ったネギが多めに浮く茶濁のつけ汁。
「ザラリッ」とする魚粉が投入され、前回とは明らかに方向性が変化。
「昆布」を練り込んだと言う自家製麺。
強力粉による「ゴワッ・・・」とするヘヴィ&ストロングな重量級の歯応え。
箸で持ち上げると「バランバラン」と強く&重くうねり、
押さえ付けるように噛めば・・・とにかく「がっっつっり」感が満開。
「硬太麺」が好きな人には堪らない食感でしょう。
粗めの魚粉が麺にからむ、からむ・・・・。
「ザラザラ・・・ザラザラ・・・」と常に歯や舌に触りまくる
この「スクラブ感」が強いアクセント。
ラストのスープ割りの図。
今回は煮干の風味がメイン・・・・かな。
スープがもう少し「アツアツ」だとさらに嬉しい気がします。
2007年1月上旬 つけめん 750円
今では埼玉県北部に「その店あり」との高い評価を確実な物とした人気店。
こちらでは去年の2006年8月に「つけめん」を食べたのだが、たまたまその数日後に、それまでの「東池袋大勝軒」系統の味から、オリジナリティを追求した味へとレシピを大幅にリニューアルしたと知り、再訪の機会をうかがっていた。
スープなくなり次第終了と言う話も聞いていたのだが、夕方の4時少し前、閉店ギリギリに滑り込みで入店できた。平日終了間際にもかかわらず席は7割ほど埋まり、既に「中華そば」は売り切れとなっていた。ちなみに、店員さんの話では「中華そば」は昼過ぎには売り切れとなってしまう事が多いようだ。
登場した「つけめん」・・・・・うむ、確かにビジュアルからして、以前の物とは異なっている。
「麺」は野太さが増して加水率が少し下がった感じになり、明るい肌色から暗色系の不透明がかった色合いになった。つけ汁の表面の層はゼラチン感が減り、魚粉が投入されている。チャーシューは長い一枚物のバラ肉から、小間切れ状になり、荒切りのネギが増えた。
まずは、汁には浸けず、麺を一つかみそのまま食べてみた・・・・。
箸で持ち上げた感じからして、「ゴワゴワン」としたハードストロングな重めの手応えが伝わって来る。
すすってみると、「バランバラン」と強く&重くうねり、その麺を歯で押さえ付けるように噛んでみると・・・・極太と言う事もあり、とにかく「がっっつっり」感が満開である。
前回と比較すると、麺からは「モチモチ感」が全くなくなり、「ゴワンゴワン」とする硬直したような食感に完全に支配されており、いかにも硬く「練り固めた」と言う感じが強い。そのため、歯に力を入れて「噛み潰す」感じの食べ方になるのだが、小麦粉の香りや旨味まで麺の中に練り固まっている感じで、口中にはあまり風味が湧き立つ感じがない。
また、インターネットの情報で、麺に「昆布」を練り込んでいると言う情報を得ていたのだが、麺をそのまま食べても、やはり麺の中で練り固まっているのか、残念ながら昆布の風味はあまり感じ取れなかった。どうやら、「コチコチ」と硬く締まった極太麺は、噛み砕いてもなかなか細かく砕けず、そのため麺の「断面積」があまり広がらず、麺の中の香りや味が開放されづらいのかも知れない。
中華麺用の小麦粉と言えば「準強力粉」が定番だが、こちらの麺の小麦粉は「強力粉」の比率が極めて高いようで、「プルプル」とか「モチモチ」とかの軽快で弾力のある、愛嬌のある食感ではなく、「ガッツリ」とする硬さと「ズッシリ」とした歯応えの量感を楽しむ「ストロング&ヘヴィ」なタイプである。
こう言う、人によっては「硬すぎる」「太すぎる」と感じてしまうようなインパクトの強い硬めの極太麺が、昨今、増えているような気がするが、単に食感を楽しむだけでなく、大量の硬い極太麺を、次々に「噛み砕く」「やっつける」と言う・・・・達成感や征服欲を満足させてくれる面にも人気の秘密があるような気がする。
つけ汁に浸けて食べてみると、たっぷりと投入された節粉が麺に万遍なく絡み付き、「ザラザラ・・・ザラザラ・・・」と常に歯や舌に触りまくる。この「スクラブ感」を、面白い食感のアクセントと受け取るか、ヤスリのようで舌にうるさいと受け取るかは、食べ手の好みと言う事になると思う。
ただ、トローリと粘る「ゼラチン感」や分厚く乳化した「コロイド油感」は、思っていたよりも感じ取れなかった。実際、汁が冷め始めても表面にゼラチン膜が張ることはなく、脂が乳化した重めのマッタリ感もさほど舌に乗って来ない。その分、「魚粉」のザラッとした硬さや粗さが前面に一層むき出しになって感じられてしまうようだ。つけ麺の汁にありがちな、後付けの「甘味」や、「辛味」や、「酸味」と言うものは・・・・相変わらずほとんど感じられない。
ただ、前回のつけ汁に比較すると、今回は豚骨などの動物系の旨味が明らかに控えめで、その分、魚粉に味の構成を頼っている印象を受ける。また、なぜか最初から汁の温度がかなり控えめであったため、「熱さ」と言う要素が加わらず、味わいにパンチや活性と言うものが湧き立たないと言うか、どこかしら「無表情」な大人しい印象に感じられてしまう。
つけめんの場合、冷たい麺を浸け続けるうちに汁の温度が低下してしまうのは仕方ないが、最初の一口はアツアツで、食べ進むに従い次第に温度が低下して行くことで、移りゆく様々な「表情」を楽しめるのが魅力の一つだと思う。
つけ汁の中にはチャーシューが入っている。チャーシューは焦げ目があり、炙ってあったようだが、最後の方でつけ汁がすっかり冷めてしまってから食べたため、肉の旨味や脂肪が活性化しておらず、大人しめの食味となってしまっていた。
スープ割をすると、僅かだが、やや煮干の生臭みが感じられた。これは前回も同様に感じられたのだが、前回は濃厚な動物性のゼラチン感や旨味に包み込まれてさほど気にならなかったものの、今回は動物性のゼラチン感が控えめなため相対的に目立ってしまった物と思われる。また、終了間際のせいなのか、割ったスープ自身の温度も多少低めであったようで、そのことも関係しているかも知れない。
食べ終わって、お店を後にして10分も経つと、舌に不思議な香りと味が漂っている事に気付いた。
予期せぬ出来事に、何の味だろうと思ったところ、どうやら磯の海草の香りであり、ヌメリのある旨味は「昆布」の味わいである事に気付いた。
口中に広がる昆布の香りと味・・・・どこか「懐かしい」気持ちに包まれるなあ・・・・と思ったら、おやつの名品、赤い箱のロングセラー、子供の頃に食べた「都こんぶ」の記憶が脳裏に呼び覚まされ、口中の様子のイメージと重なったようだ。
この「昆布」の後味は、驚いた事にその後も一時間ほどの長きに渡って、私の舌の奥の両脇辺りに存在し続け、アフターを楽しませてくれた。麺を食べていた際は、ほとんど感じられなかったが、かなり遅効性であったものの、実際にはやはり「昆布粉」がしっかりと麺に練り込まれていたようだ。
麺の色的には、さほど緑色がかってはいなかったが、白いとろろ昆布を粉にした物を使っているのだろうか。
また、前回感じたような「麺」と「汁」の世代間ギャップのような物が完全に解消され、「麺」と「汁」のバージョンが見事に「均衡」「一致」したように思う。
ただ、つけ汁については・・・・前回のつけ汁の「絶品ぶり」を知る身としては、その変化にややとまどってしまったと言うよりも・・・・この日たまたまなのだろうと思うが・・・・どうもあまり本調子ではなかったような印象を受けた。
それとも、閉店ギリギリの時間に滑り込みでの入店だったため、寸胴の中の残りスープの状態があまり本調子ではなかったのかも知れない。
他店であれば、ここぞとばかりに「砂糖」や「酢」や「唐辛子」や「化学調味料」や「エキス類」を投入して、味の補強に走るところだろうが、そう言う誤魔化しを良しとしないのであろう。
次回はぜひとも、評判の高いこちらのお店の「絶好調」の時に味わってみたいものだ。
(麺は完食。スープ割も完飲。)
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