ラーメン&つけ麺食べ歩き
井上
(東京都 中央区)
店名 |
井上(いのうえ) |
住所等 |
東京都中央区築地4-9-16 【地図表示】 |
禁煙 |
タバコ可 |
訪問日 |
2005年1月下旬 中華そば 600円 |
〜井上〜
(各写真はクリックで拡大します)
あと1Kmほどで東京湾・・・というこの地、
東京都民の胃袋を支える「築地市場」です。
目的のお店はその場外市場の一画にあり。
「場外市場」は一般客でも気軽に利用できますぞ。
外人観光客などもちらほら。
目的のお店は直進して50mほど。
お店を発見。
ここぞ、築地の有名店「井上」です。
市場に合わせて明け方から昼過ぎまでの営業です。
カウンターでの立ち食い形式。
うーん、「粋」ですなぁ。
一切の虚飾のない「食」の世界。
注文して手会計を済ませてから並びます。
無駄口一つなく黙々と自身の仕事に没頭するスタッフ。
数杯を一度に作ります。
メニューは中華そばのみです。
看板どおりのまさに「つきじ名物」ですな。
2005年1月下旬 中華そば 600円
言うなれば「築地ご当地」ラーメン。
築地市場という日本一のマンモス市場を背景に、
エキスパートな「顧客ニーズ」が生み出した
シンプルで飽きの来ないラーメンですな。
市場で働く多くの人達から「愛されている」ラーメンでしょうね。
あっさり醤油スープは豚骨&鶏ガラのじんわりとしたダシ。
それを化学調味料が適度にブーストし、
意外なほど上品な醤油ダレで穏やかに締めている感じ。
食べ手の舌を上手に「攻略」するフィールドワークの良さが光ります。
モモ肉チャーシューが4〜5枚載ってきます。
ミシミシッと固めでややパサ付いた物と、
サックリと歯切れが良く肉の旨味の豊かな物、
の二種類が混じってました。
味付けは薄目。
「ふぅわり」とした優しい食味の細麺。
「ツルツルすする」のではなく、
塊りのまま「ガバッと丸呑み」するイメージ。
早食いに向けたチューニングでしょう。
2005年1月下旬 中華そば 600円
ご存知、築地の有名店「井上」を訪問。
この「築地市場」・・・・言うまでもなく東京都民1200万人の胃袋を支える「食材」のメガマーケットである。
市場のピーク、朝の5時頃に来ると、台車にエンジンをつけたような特殊な車が鮮魚や野菜を載せて何十台も物凄い勢いで走り回り、「秒」単位の移動と商品の積み下ろしが成され、その「活気」「せわしさ」「あわただしさ」には度肝を抜かれてしまう。市場を往来する人達の顔は真剣そのもので、まるで「戦場」の如き緊迫感の漂う雰囲気である。
そんな、築地を舞台に日夜ハードな仕事にいそしむプロの職人さん達に人気の「御用達」店の一つが、こちらの「井上」に他ならない。
私が訪問した昼の1時頃は、既に市場関係者らしき人の姿は少なく、昼飯を取りに来た近隣のサラリーマン諸氏などで数名の待ち客の列が出来ていた。
メニューは「中華そば」の一種類のみで、大盛りなどもないようだ。
オーダーの仕方としては、道路に接客担当の人がいるので、その方へ注文を告げ、先に代金を渡す。そして店舗の前に整列して待っていれば、一度に数人分を作るので、一斉に出来上がったラーメンが差し出される。そして向かいの道路にステンレスのテーブルがあるので、そこで立ち食いをする仕組みだ。
ちなみに器の口切りいっぱいまで、なみなみとスープが注がれてくるので、受け取ってからテーブルへ持ってゆくまでの、十数秒間、結構な「スリル」が味わえる。
混んで来ると、テーブルなしで手に持って食べる人も出てくる。冷水は店舗の右脇に給水器があり、麦茶か中国茶のようなものが入っていた。ちなみにレンゲは置いていないようだ。
いよいよそのラーメンだが、スープは割とぬるめと言うこともあって、最初からとてもスムースに味を感じ取れるようになっている。
つまり、一口目からしっかりとこちらの舌を捕らえてくるスープなのだ。まるでこちらの「舌」を狙いすましていたかのように、右に左に追いかけてキャッチし、即座に「攻略」してしまうような・・・そんなフィールドワークの良さを感じるスープだ。
例えて言えば、考え事をしながら食べても、二日酔いの頭で食べても、寝不足の頭で食べても、過労気味の状態の頭で食べても・・・・そういったすぐれない体調や悪コンディションを超越して、見事に「おお、うまいな」と確実に思わせてしまうような、「上手さ」「したたかさ」のあるスープだと思う。
まるで「自動追尾」ミサイルのような、こちらの舌がたとえどんな位置に、どんな状態であったとしても、見事に追尾して命中して来るようなイメージだ。
透明感のあるあっさり醤油スープは、豚骨&鶏ガラとおぼしきじんわりしたダシがいい感じに出ていて、それを化学調味料が適度にブーストし、最後に意外なほど上品な醤油ダレで穏やかに締めている感じだ。はっきりした旨味が、ややタクティクスに感じられるものの、醤油自体はふくよかな控えめの味わいであり、スープを飲み込んだ直後に、一瞬だけ「キラリ」と醤油風味が顔を出す感じになっている。決して旨味のゴリ押し一辺倒でなく、「あっさり」と力を抜いて食べさせる部分も備えた絶妙な構成である。
麺は、白っぽく弱いちぢれがあって、割とカンスイが少なそうな、「ふぅわり」とする優しい食味の麺だ。とてもデリケートな口当たりで、ソフトな歯応えが、何となく「ワタ菓子」のようなふんわりとした食感を連想させる。
ツルツルと「すする」ような長く伸びたタイプの麺ではなく、麺がちぢれてからみ合っていると言うこともあるが、麺を丸い塊りのまま箸で掴んで、口中へ押し込み、そのまま軽く噛んでゴクリと「丸呑み」するようなイメージの食べ方になる。塊りに内包されたたっぷりのスープが、飲み込む際に口の奥でドバッと放出されるのは、なかなか心憎い演出だ。
モモ肉チャーシューが4〜5枚載っていて、具としてなかなかの量感がある。
一つ食べてみると、ミシッとするやや固めの歯応えで、少しパサ付いており、肉の味の少ない物であったが、別な一枚を食べると、サックリと歯切れが良くて肉の旨味も豊かな美味しい物であった。やや固めのものが二枚、さっくりした美味しいものが二枚だったので、たまたまなのか、二種類の肉塊から切り出されたようだ。味付け自体は薄目で、臭みなどもなく、いかにも「昔ながら」の風合いを感じるチャーシューだ。
メンマも味付け薄めだが、割とエッジが立っていて、しっかりしたやや固めの歯応えがあり、噛み砕くと繊維が心地よくほぐれてゆく。
小口切りのネギや貝割ダイコンが載せられ、その清々しい風味とともに歯応えにおいても良いアクセントになっていた。
何となく周囲を見渡すと、食べている人たちは、なぜか皆、感慨深そうに自分の世界に浸って食べているように見える。
それほど高級な食材や珍しい食材を使っているようには思えないし、流行や新規性などとも無縁な感じなものの、ザワ付いた雑踏の中で「立ち食い」で食べる気取りのないラーメンは、何とも言えず実に「オツ」な味だ。この築地の独特な「雰囲気込み」の味わいは、おそらく他では滅多に味わえない代物(しろもの)だろう。
後味的には、やや化学調味料が舌に残って感じられるものの、15分ほどでスムースに消え去り、代わりに心地よいガラ風味の残り香がふつふつと顔を出してくる。なかなか巧みな「二刀流」のスープだ。こういったラーメンが大好きな人は多いと思う。
スープは割とぬるめなのだが、それは、忙しい河岸仕事の合間に素早く短時間で食べ切れるようにとのお店側の親切な「配慮」だろうし、麺がほとんど噛まずにノドを通るほどゆるめなのも同様に「早食い」を可能にするための「気配り」なのだろう。シンプルな構成で、旨味のはっきりした実に判り易い味付けになっているのも、市場のハードワークをこなす身を「考慮」しての味付けなのだろうと・・・容易に想像できる。
築地市場という日本一のマンモス市場を背景に、脈々と営まれてきたその辺の事情を前提に考えないと、このラーメンの真価を見誤るかも知れない。
例えるなら、「築地ご当地」ラーメンとも言える見事な「一杯」であると思う。
(麺は完食。スープは4割飲んだ。)
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