ラーメン&つけ麺食べ歩き
春木屋 ラーメン博物館 店
(神奈川県 横浜市)

店名 春木屋 新横浜ラーメン博物館店(はるきや)
住所等 神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 ラーメン博物館内 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2005年5月上旬 中華そば 750円



〜春木屋 ラー博店〜

(各写真はクリックで拡大します)




ラーメン博物館の地下2階。
「春木屋」は左奥のスペースに出店しています。






昭和24年創業・・・という老舗です。
昭和30年代をイメージしたと言うラーメン博物館の
コンセプトに、まさにうってつけですな。






券売機です。
ワンタンメンもあるようですね。
「中華そば」を購入しますた。






店内はカウンターとテーブル席。
木製のカウンターや、すりガラスが実にレトロチック。










2005年5月上旬 中華そば 750円



創業昭和24年・・・・老舗中の老舗・・・・
戦後の東京ラーメンシーンの礎・・・

確かに・・・これらの言葉が実にぴったりと当てはまるラーメンですね。
ある意味、「老舗」でないと絶対に出せない味でしょう。

悠久の「歴史」を感じる一杯です。









30種類以上の素材を使うと言う醤油スープは
絶妙にクラシカルな味わいながらも、明瞭な旨味路線。
多めの油とともに、素材の微細な滓(おり)が浮いています。






加水率が低いちぢれた太麺はゴワゴワと硬めのコシで歯応えが図太い感じ。
戦後の「闇市」を連想させられる、意外にワイルドな食味です。
レトロな中華麺らしいカンスイ感が前面に出て、玉子の風味は控えめ。






モモ肉チャーシューは結構厚めに切られています。
肉のコクはやや薄めでも、サクリと歯が入る食感はなかなか。




2005年5月上旬 中華そば 750円

2004年1月にラーメン博物館へ出店した老舗「春木屋」の支店。
荻窪の春木屋本店には過去に一度だけ行った事がある。確か14年ほど前の事だが・・・当時は特に意識してラーメン食べ歩きをしていた訳ではないので、今となっては「麺が太くてしっかりしたすすり心地」「旨味があり輪郭の整った醤油スープ」位の記憶しかない。15年ほど前の、都内では「荻窪」が美味いラーメン店のメッカと言われていた頃の話だ。

入店すると、店内は木製のカウンターやテーブル、厨房を仕切る「すりガラス」等が実にレトロチックな雰囲気を醸している。接客も近年のマニュアル化されたような接客ではなく、どこかしら家族経営的な雰囲気がある。
登場したラーメンは、鳴門や玉子、青菜などのカラフルな具材が入らないため、器の中すべてが「ブラウン調」一色でまとめられている。見た目からして、歴史のありそうなラーメンだなぁ・・・という事が判る。

スープを一口飲んでみて、まず真っ先に感じるのは、何よりも「懐かしい味」「クラッシックな味」・・・ということだ。
素材がどうのとか、醤油ダレがこうの・・・とかではなく、ここ数年で開店した真新しいラーメン店ではおそらく絶対にお目にかかれない味・・・・つまりは、「古き佳き時代」をしっかりと感じさせてくれるスープなのだ。

スープは、まずは煮干やカツオ節のような風味が感じられるのだが、それらが「ガツン」とか「ビンビン」とか強引に突き上げるように来るのではなく、舌をつかんでグーンと奥へ引き込むような奥の深い味わいを生んでいる。魚ダシが何かのフィルターにかけられて一度「濾された」かのような、とても繊細で、非常にきめ細かな・・・何とも口当たりの良い、優しい風合いで舌を誘う感じなのだ。
動物系ダシも穏やかで、魚介系ととても品良くバランスしている。そして、スープのダシの風味を主役にしたいという意図なのか、醤油ダレはちょっとだけ一歩後ろへ引いたような印象だ。ミリンのような軽妙な甘味もあり、口当たりを良くしている。
口に入れた瞬間、口中にとてもスムースに魚介系の味わいが広がるスープであるが、飲み込む頃になると昆布や化学調味料の旨味が目立ってくる。
そしてこのスープへ、麺に使われているカンスイの風味がからんで来ると・・・・これは、もうまるで絵に描いたような、伝統的「中華そば」テイストを一切の妥協なく具現しているイメージだ。
使っている化学調味料も決して少なくはないと感じるが、きちんとダシとの二人三脚と言う感じであり、後味もそれほど悪くないのはさすがと感心するとともに、一方の「麺」自体に「旨味」があまり感じられず、かなり素朴な風味なので、スープ側にこの位の強い旨味がないと、バランスが悪くなってしまうのだろうと思う。

麺は、箸でつかみ上げた瞬間、その意外なほどの太さと強いちぢれにちょっとびっくりしてしまった。
一口すすってみると・・・・ゴワゴワする口当たり、ザラっとする舌触り、スイトンのような噛み応え、カンスイの独特な風味・・・・現代風に洗練された自家製麺などから比較すれば、イメージとしてはやはり「古典的」・・・と思えてしまう。
また、頑固なほどのちぢれに加え、たまたま茹で加減が短かったのか、かなーり硬めに茹でられていて、そのゴワゴワ、ワッシワッシ、ボソボソ・・・というハードなすすり心地は、アゴの弱い人には結構食べ疲れしそうな印象を受けた。
噛み締めると、玉子の風味はほとんどせず、小麦の「茶色」を連想する素朴でシンプルな「穀物」の味わいである。
ただし、春木屋創業当時の56年も前の日本の食事情を考えれば、ラーメンは屋台で食べる庶民の味であり、あまり高級ではない小麦粉で、玉子などの高級食材などほとんど使わずに麺を作っていたわけであるから、その「伝統の味」を守ろうとすれば、当然、ある程度「古典的」「素朴」な麺であって当然なのだろう。
ちぢれて硬く、やや粒子が粗い感じであり、食感はザラ付き、カンスイ臭が割としっかりと感じられる・・・この麺・・・・以前にどこかで食べた麺と良く似ていると思ったところ、なんと「赤羽二郎」(マルジ)の麺と良く似ているような気がした。

モモ肉チャーシューは意外に柔らかで結構厚めに切られている。醤油の味付けも塩の味付けもあまり感じられず、スープで煮ただけの様な淡白な味わい。肉のコクはやや薄めだが、サクリと歯が入る食感はなかなか心地よい食感。メンマは全体は柔らかめだが繊維感が良く残り、なかなか上品な風味。

食べ終えてみて、思ったことは・・・・スープ、麺、ともに、やはり「時代」を感じずにはいられない味・・・と言うのが正直なところだ。
その点、ラ博のHPなどを読むと、春木屋には「40年以上も通い続けている常連や、親、子、孫と三代に渡ってのファンも数多くいる・・・」と言うような事が書かれている。おそらくは、長年に渡るあまりに熱心なファンが多く、また「老舗」として有名になり過ぎてしまった事などから、オリジナルの味をあまり大きくは変えられないと言うしがらみがあるのではないだろうか。
もちろん、春木屋自身も、「昔から変わらない味」とは、本当に何も変わっていない味なのではなく、実は世間の味覚の進歩に合わせて常にたゆまぬ進歩を続ける味・・・と位置づけている旨の話を以前何かで読んだことがある。実際、春木屋の公式HPを拝見しても「変わり続け、守り通した、この味、50年・・・」と言う事が書いてあるし、「妥協を許さず日々研究を重ね、一流を守りつづけています・・・」とも書かれている。
ただ、それでもここ数年ほどで、異業種からの参入や巨大資本の参入などもあり、ラーメン業界の長足での急速な進歩、急激な価値観の多様化、厳選素材系ラーメンや創作料理的ラーメンの登場、等々を考えると・・・・・やや「頑なすぎる」(かたくなすぎる)味・・・とも感じられてしまう。

ただ、言い方を変えれば、「老舗」でないと絶対に出せない「味」ということにもなるだろう。
どこがどうとはうまく言えないのだが、昨今のニューウェーブ系ラーメンなどと比較すると、イデオロギー自体に「隔世」の感がある気がするのだ。
現代のように、ここまでラーメンが多様化してしまい、まさに「何でもあり」の時代になってしまう遥か以前の、「ラーメン創世期」を彷彿とさせるかのような当時の味を、今なお守り通していることは非常に貴重だと思う。
決してファンを裏切ることのないそういうお店の姿勢はとても素晴らしいと思うし、また何より、色々なものを背負って長い長い道のりを歩いて来たこの伝統的で正統派的な「中華そば」が、今でも健在である事はとても嬉しい。
確かに・・・・今から他店で同じ味を探そうとしても極めて困難と思える味、40年以上も通い続ける人がいるという話も大いに頷ける気がする。


(麺は完食。スープは3割飲んだ。)










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