01ch グルメ食べ歩き
高勢
(東京都 豊島区)
店名 |
名代玉子寿司 高勢(たかせ) |
住所等 |
東京都豊島区南大塚1-45-3 【地図表示】 |
禁煙 |
タバコ可否不明 |
訪問日 |
2006年3月下旬 にぎり 2700円 |
〜大塚 高勢〜
2006年3月下旬 にぎり 2700円
今回は、都内でも屈指の名店との評価を誇る「お寿司屋さん」の一つ、巷で評判の「鮨 大塚高勢」(豊島区・大塚駅)さんを訪問してみました。
こちらのお店は、かって・・・政財界の大物陣ご用達の寿司の名店と謳われた、「根岸の高勢」の暖簾分けのお店だそうです。
お店は大塚駅の南口を出て左へ、「三業通り」と言う小路を進んだところにあります。
「三業」とは、昔の言葉で「料理屋、待合、芸者屋」を指すそうです。つまり、この辺り一帯は、以前は旦那衆が芸者さんと遊ぶ茶屋があり、そこへ料理や酒を仕出す料理屋と、芸者さんを派遣する置屋の、三つが揃う、いわゆる「花街」であったようです。
ちなみに、この通りには、今でも多少その「名残り」らしき建物も見受けられます。
大塚「三業通り」の奥
お店が見えてきました。
写真の中央付近に「高勢」の白い看板が見えます。
大塚「三業通り」の比較的奥の方、大塚駅からは徒歩4分ほどでしょうか。
大塚「高勢」
周囲の街並みに溶け込んだ佇まいです。
「これみよがし」のギミックがないのは好ましいですね。ヒサシには「寿司」ではなく、「鮨」の文字。
店内はL型カウンター
入店すると、とても元気のよいご挨拶で大将が出迎えてくれます。
カウンターへ座りました。
店内はL型カウンターのみのように見えましたが、他サイト等を読むと、奥には座敷があるような記述も見かけます。
ちなみに店頭にも店内にも、メニューらしきものは見当たりませんでした。
「にぎりお願いします」と言うと、元気な声でお返事を頂き、握り始めてくれます。
ちなみに最後のお会計は、2700円でした。
「あがり」
シンプルな箸袋です。
お茶はタンニンが渋すぎず、苦味がうっすらと感じられるシンプルなものでした。
さほど濃くは淹れていないようです。
また、考えすぎかも知れませんが、三回淹れて頂いて、食前は「やや温め」、食中は「しっかり熱く」、食後は「ゆったりと温め」・・・・に感じられました。
この、それぞれのシーンに応じた見事な「適温ぶり」・・・・・もし、配慮してやっているとしたら、凄いことだと思います。
「前菜」四種
さて、まずは、「前菜」が四種類ほど登場しました。
左上の淡い桃色のものは、なんとも貴重な「鯛子」、つまり鯛の卵です。
この「鯛子」、桜が満開となる直前の、まさしく鯛が産卵期を迎える今のこの季節だけの極めて短い旬の美味なので、偶然とは言え、巡り合えるのは・・・なんとも幸運で、嬉しい限りです。
口に入れてみると、「プチプチ」する感じではなく、「ふんわり」、「ホワホワ」とする食感と、極めてデリケートな、まるで夢見るような・・・・優しく「淡〜い旨味」です。
まさしく、「桜鯛の卵」・・・・幼く、儚い、けがれなき味です。乗せられた木の芽の香りが見事なアクセントになっていました。
そして、その下の緑の葉に包まれているのは、「サゴチ」(サワラの幼魚)を西京焼きにしたものです。
この「葉」・・・・なんと「桜の葉」なのです。
まさに桜満開のこの旬のシーズンならではの・・・・何とも、「粋なはからい」「心憎い演出」ですね。
この辺り、伝統一本槍ではない、お寿司屋さんとしては、かなりクリエイティブでアーティスティックなセンスを感じます。
食べてみると、うーん・・・・素晴らしく美味しいです。
桜餅を連想するような素晴らしく馥郁な香りに包まれた、このサゴチの美味しい事と言ったら・・・・「よくぞ、日本人に生まれけり」、と言いたくなります。
サゴチは焼き立てを出してくれますので、時間を空けずに食べた方が良いと思います。
脂が乗っていて、クセが少なく、確かにサワラよりも若い味です。
他に「生海苔」と、「子持ち昆布」がありました。いずれもお酒の肴にぴったりでしょう。
「香の物」
香の物は、いずれも美味しいですが、特に大根の「糠」(ぬか)の香りが素晴らしくふくよかです。
良い糠を使って、毎日丹念に「糠床」の手入れをしているのかと思いますが、ともかく「風味」が良く、全く「臭くない」のです。
しかも、野菜として「生き生き」しながらも・・・見事なほどに「枯淡な味わい」になっています。
うーん・・・これぞ漬物の醍醐味でしょう。市販品では到底出せない素晴らしい「香り」と「食味」です。
また、大根などは巧みな隠し包丁が入り、食べる際の歯触りを増幅させています。
いかにも自家製、手作りと言う美味しさに、温かな「おもてなしの心」を感じます。
冷蔵ケースの毛蟹
この日は、男性スタッフお二人と、女性スタッフお二人で切り盛りされていました。
雰囲気は、気取りのない「地元密着」な感じもありますが、「ツケ場」に立つ店主さんの眼光やオーラは、名店の風格を湛えるのにも十分なものです。
そして、元気良く、愛想が良く、江戸っ子の粋と博識さが同居したような雰囲気で、
「色々とお話をしてみたくなる」「親しくなってみたくなる」印象を受けます。
何と言うか・・・・「背負っているものがある」人に特有のオーラを感じます。
名物の「玉子焼き」
お寿司のトップバッターは、こちらのお店の名物の「玉子焼き」です。
箸で持つと「ズシッ」と重く、かなり玉子の密度が濃い感じです。よく見てみると、驚く事に「気泡」や「す」(焼きムラによる断層的な空間)が全く入っていません。これは相当な長時間をかけて、じっくり・・・・と焼いているのだと思えます。
食べてみると、しっとりとした柔らかな口当たりで、滑らかな口解け感があり、甘味が効いていて、まるで高級なカステラのような味わいです。後口にはほんのりとダシ汁の味も感じられます。
温度はひんやりとしていて、焼き立てとはまた違った、とても落ち着いた味わいですね。
この、良く冷やされ、「きちんと落ち着いている味」が、こちらの玉子焼きの持ち味だと思います。しっとり柔らかですが、食感は重めで、食べ応えがあり、さすがに看板メニューになるだけの事はあります。
ガリは普通の甘酢漬けで、やや甘めに感じました。
「トロ」
そして、握りはいきなりの「トロ」からスタートです。
トロはやや薄めに切られていて、その分、「口解け感」を狙っているようです。
そのせいか、口に入ると・・・・極めてナチュラルなトロの香りと旨味が、ゆっくりと口中に広がってゆきます。
脂がトロけて、香りと旨味とコクが、「ドカンッ」と来るほどの状態ではありませんが、立ち上がりから、見事なジャブを数発打ち込まれたような・・・巧みな先制パンチと言う印象です。
「鯛」と塩昆布
今が旬真っ盛りの、「真鯛」の握りです。
煮切り醤油を塗って、さらに塩昆布をアレンジしたものです。
口に入れた途端、「パーンッ・・・・」と旨味が溶け合いながら、炸裂します。
これは抜群に美味しい握りです。今日食べた中でも一番気に入りました。
仕込みの段階で、鯛の身を昆布で長時間挟んで旨味を移す、「鯛の昆布〆」は有名ですが、それをさらに一歩先へ「進歩させた」味ですね。
口中で、鯛と昆布の旨味が溶け合い、渾然一体となり、マリアージュして誕生する美味しさは、まさしく「サプライズ」。
さらに上手に鯛の皮の旨味が残してあり、塗ってある煮切り醤油も加わって、舌の上で、旨味の「四重奏」が奏でられます。
いつも思うのですが、食べ手は、「食」に対して、常にこういう新鮮な驚き、未知なるテイストとの出会い・・・・を期待しているのだと思います。
また、基本的なことなのですが、こちらのお店のお寿司・・・・ネタとシャリの「温度管理」が抜群です。
ネタの冷やし方、シャリの温度・・・それらの舌に触る温度次第で、「味」は大きく左右されます。
この辺に無頓着なお店も少なくないのですが、こちらのお店は、「適温管理」を完璧に実践している気がします。
「青柳」
北海道産の「青やぎ」だそうです。上に小柱が添えられています。
いかにも「貝」という食感と味わいです。貝独特の肉身の歯応えが堪能でき、貝独特の旨味と香りがはちきれんばかりにあふれ返る・・・まさしく、「貝一色」、「貝尽くし」・・・と呼びたくなる一品です。
「スミイカ」
春が旬の「すみいか」です。別名、「甲イカ」とも呼ばれます。
これまた、適温にひんやりと冷やされ、「ネットリ・・・・」と舌にからみつくイカ独特の食味が楽しいです。しかも、それでいて歯切れが悪いわけではないのに驚きます。
歯を入れれば、「サックリ・・・・」「サクサク・・・・」と心地よく噛み切れ、イカの旨味があふれます。
この握りはイカの美味しさを堪能させてくれますね。
シンプルなのですが、「イカ」にしかない旨味と香り・・・・イカの持つ魅力を全開で感じます。
この握りを食べると、「イカ」は、明らかに他のネタの「魚」や「貝」とは違う味わいを持つ、別種のネタであると悟らされます。
「車エビ」
見事な「車エビ」です。写真では力を入れて握り込んだように見えますが、実際は全く逆です。
全く硬くなく、身肉がベタッとつぶれた感じがなく、非常に口当たりがふっくらとしています。
口の中でホロホロと身がほぐれるほどに・・・・不思議な無重力感のある身肉の食感が非常に心地よいです。
味は、エビの香りと淡白な旨味と繊細な甘味が口中を満たしてくれるとともに、煮切り醤油なとで多少の「お化粧」をしている味わいです。
特に後口に素晴らしく上品で繊細な甘味が広がるのですが・・・・エビの甘味だけではないような気もしました。ひょっとして、タネとシャリの間にオボロなどを仕込んでいたのかも知れません。
「平貝」
「平貝」は、別名、「タイラギ」とも言います。シャリとの間に「大葉」が挟まれています。
見た目同様に、ホタテの味と似ていますが、こちらの方が口当たりがのっぺりとしています。
噛んでみると、筋肉繊維が密な感じで、歯応えが強く、身肉がやや粘る感じがあります。
コリコリ、シコシコと噛み切る食感を楽しむ感じで、ホタテのように柔らかく繊維が裂ける感じではありません。
味わいは・・・・例えるならホタテをややあっさりさせたような・・・・それでいて、ミルキーっぽさもあります。
ふんわりと立ち昇る大葉(紫蘇)の香りが白い貝の身の風味と非常に良く合っていて、なかなか「粋」な味わいです。
「ヅケ」
最後に登場した「マグロのヅケ」です。
舌に触れた途端、あまりの「切っ付け」の見事さに舌を巻いてしまいます。つまり、マグロ表面が、舌がツルツルと滑りそうなほど、恐ろしく「滑らか」で、表面が驚くほど「スベスベ」なのです。
つまり、マグロの断面の繊維が一つとしてつぶれていない感じの、「稀有」な均質食感になっています。
包丁の技量次第で、寿司の味が変わる良い例でしょう。
炒りゴマが乗って、芳ばしさと歯触りを増幅させています。
ところで、「ヅケ」と言うと、長時間、醤油に漬け込みすぎたのか、ニカワのような「ぐにゃり」とした食感になっているお店があります。
昔はあくまで「保存」のための技術だったわけですので、それでも良かったのかも知れませんが、昨今の価値観から言えば、あくまで「ヅケ」は保存目的よりも、「江戸前」の味の演出と考えるべきではないでしょうか。
その点、こちらの「ヅケ」は、比較的「若い」「浅い」漬け込みで、ヅケの楽しさを味あわせつつ、口当たりに軽さがあり、マグロ本来の風味も上手に残しているように感じました。
ヅケにしつつ、マグロの美味しさを殺していない絶妙な「ポイント」を見事に探り当てていると思います。
ちなみに、こちらのお店の「シャリ」ですが、最初の方で白身のタネと合わさった時はやや甘口に感じられましたが、ふっくらとして、上手に炊けています。
そうして食べ進むうちに感じたのは、まるで「内助の功」の如き、そのふくよかな「シャリ」の絶妙なサポートぶりです。
「シャリ」の味が、決して、握りの味の中心に登場してしまうことがなく、常に「ネタ」という天体を中心にしてその周囲を回り続ける小さな衛星のごとき動きをしている印象です。絶妙な陰の名脇役として、縁の下の力持ちとして・・・・陰になり日向になり、タネの旨味を引き立たせる、増幅させる、その一点のみに謙虚に注力している印象です。
「タネとシャリ」の関係は、まさしく蜜月の味・・・。
また、途中で気付いたのですが、タネに応じてシャリの量と握り方を毎回微妙に変えています。
お店に言わせれば、「当たり前」のことなのかも知れませんが、一瞬にして、様々な寿司ダネの「ベスト」な形を判断し、瞬時にシャリの量を決め、握り切ってしまうセンスと技術には・・・心底、「脱帽」です。
「お椀」
握りが終わる頃を見計らって、お椀が登場します。
白味噌でやや甘口に感じるお味噌汁です。ネギがシャクシャクと香り良く、歯触りも軽快です。
中身は甘エビの頭が三つ入っていました。塩気が少なく、優しい飲み口で、舌に染み入る穏やかな味わいです。むやみに熱過ぎないのもいいですね。
ユズが一片浮いていて、最後にキラリと柑橘系の香りを奏でます。
「デザート」
デザートは「グレープフルーツのシロップ漬け」です。
ひんやりとした冷たい口当たりと柑橘系の爽やかな香りが、後口をさっぱりとさせてくれます。
実のツブツブがきれいに立ち揃った感じが新鮮で、きれいな酸味とグレープフルーツ独特の微細な苦味が心地ちよいです。
このフレッシュさ、缶詰ではなく、生のグレープフルーツを剥いて、さっぱりしたシロップに漬けたものですね。ベタッと甘すぎず、あくまでサラリとしたフルーツの甘味・・・グレープフルーツの持ち味が見事に生きています。
とても感じの良いご主人
さて、食べ終わってみての感想としては・・・・
「巻物」がなかったのがちょっと意外でしたが、すべての握りに確かな「仕事」がなされていて、さらに「旬」と言う概念をしっかりと取り入れ、見事に生かしています。
ちなみに、「客」は、何を求めてお店へやって来るのかと言えば・・・・決して「味」だけではないでしょう。
ましてや、それが「寿司」ともなれば、美味しいのは当然のこととして、さらにその先にある価値観として、寿司を通して、常に「季節感」や「旬の息吹」を堪能させてくれること・・・・。
その移り変わる「四季の味」との出会いに喜びを見出し、そして、その四季の味を見事に堪能させてくれる「握りの技術」に、深く魅了されるのだと思います。
さすがに「名店」、この辺りのポイントをとても良く判っているな・・・・と感じました。
それにしてもこちらのお寿司・・・・昼に来て、ササッと食べて帰ると言うのではなく、何と言うか・・・・お寿司だけを賞味する・・・・と言うよりも、どこかしら、お酒を飲みながらゆっくりと食べたくなるエッセンスを、そこここに感じます。
握りだけでドーンと強く主張するタイプではなく、良きパートナー(お酒)を得て、さらなる完結に至るかのような・・・・まさしく世の多くの諸兄の「愉しみ」を、見事に「心得ている」印象のお寿司です。
雰囲気のあるご主人とのトークもきっと楽しい事でしょう。
(すべて完食)
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