01ch グルメ食べ歩き
おざわ
(東京都 台東区)

店名 手打蕎麦 おざわ(おざわ)
住所等 東京都台東区西浅草2-25-15 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2006年6月中旬 生粉打ざる 800円 
           ざる 700円 




〜おざわ その1〜



2006年6月中旬 生粉打ざる 800円 

今回は、都内でも屈指の「日本蕎麦」を打つお店との呼び声が高い、巷で評判の「手打蕎麦 おざわ」(台東区・浅草駅or田原町駅)さんを訪問してみました。
実際にインターネット上でも、多くの「日本蕎麦系サイト」「グルメ系サイト」で、こちらの「蕎麦」について「語り尽くせぬ味」「これぞ蕎麦通のための店」との高評価をしているサイトが少なくありません。

もとは上野界隈にあったお店のようですが、2006年3月に、こちらの西浅草の地へ移転して来られたようです。


 浅草の裏ストリート

東武線や銀座線や都営浅草線の浅草駅から徒歩6分ほど。つくばエクスプレスの浅草駅なら徒歩1分ほどです。
田原町駅からも徒歩6分ほどで、住所は「西浅草」になります。

この界隈には浅草ビューホテルや、浅草ROXなどがあります。
浅草で老舗のラーメン店として知られる「来集軒」も50mほどのすぐ近くにあります。


 風情のある店構え

移転してまだ三ヶ月と言うことで、外装は真新しい感じです。
山吹色のノレンが風に揺れていました。壁や扉の配色とともに、いかにも「蕎麦屋」さんらしい風情を醸しています。


 手彫りの表札

艶消しのオフブラックに塗られた壁に、
柔らかな間接照明に照らされて浮き立つ表札がムードを盛り上げます。


 しっとりと落ち着いた店内

店内は、シンプルな造作で、割と照明を落とした落ち着いたムードです。
右側に見える小窓の奥が厨房スペースになります。

店内は終日全席禁煙です。
実は「蕎麦」の魅力の半分は、その繊細な「香り」にこそあると思いますので、蕎麦が美味しければ美味しいほど、やはり「店内禁煙」は嬉しい配慮ですね。


 メニュー その1

メニュー表です。
右ページが「冷たい蕎麦」、左ページが「温かい蕎麦」です。

こちらのお店の蕎麦は、「蕎麦粉とつなぎ」の比率で「3タイプ」が用意され、それぞれに太さが変えられています。

「九割」・・・・細切り
「十割」・・・・やや太
「九.五割」・・・・極太平打

その他、メニューを拝見しますと・・・・「胡麻汁」、「辛味大根おろし」、「山の芋」、「葱おろし」、「鴨汁」・・・・などなど、まさしく「蕎麦好き」には「垂涎」とも思えるメニューが、ここぞとばかりに厳選して掲載されています。
蕎麦の「おかわり」(汁なし)が用意されているなど、嬉しい限りですね。

初訪問なのですが、せっかくなので蕎麦粉十割の「生粉打ざる」をオーダーしてみました。


 メニュー その2

一品料理もとても充実しています。
蕎麦屋でゆっくりお酒を飲みたいと言う諸兄には、これだけ「アテ」が揃っていると、言うことなしでしょう。


 メニュー その3

飲み物のページを開いて、日本酒がある程度充実しているのは予想していましたが、お蕎麦屋さんで「ベルギービール」が六種類も置かれているのを見て、驚きを隠せませんでした。

実は私も一時期ベルギービールに凝っていた事があります。
この中では、「デュベル」、「オルヴァル」、「ローデンバッハ・グランクリュ」、「ヒューガルデン」の四つは飲んで事があります。特に「デュベル」(悪魔の意味)は魔性を持つビールと言われ、濃厚でズシンと来る飲み口は圧巻、そして酔いが非常に後を引き、どこまでも長く続く、個性的なビールです。
トラピストビール始め、ベルギービールは、とにかく「濃い」ですよね。


 メニュー その4

焼酎も人気銘柄が揃っているようです。
「蕎麦」焼酎に拘らず、「芋」や「麦」も置かれています。

最後のページに定休日と営業時間が掲載されていました。



 生粉打ざる 800円

さて、いよいよ「生粉打ざる」の登場です。
「生粉打」(きこうち)とは、100%ピュアな蕎麦粉だけで打つ、一切の「つなぎ」を使わないお蕎麦のことです。

ちなみに「うどん」は小麦粉と塩だけで打てますが、それはグルテンの多い小麦粉だからこそ容易に可能なのです。
蕎麦粉、特に一番粉などは粘りが少なく、保水性が弱いため、そのままでは麺の形にするのがとても難しいと言われ、大抵は「小麦粉」や「山芋」などの粘り気の出るものを「つなぎ」として混ぜて打っています。
しかし、これらの「混ぜ物」をすれば、当然ですが「蕎麦」の香りを邪魔し、舌触りや味わいにも影響するとして、蕎麦通の人達の中には十割蕎麦にこだわる方も少なくないようです。
「生粉打」には、タンパク質の多い三番粉を多めに使ったり、湯練りをしたりと・・・・色々な工夫があるようです。

まずはツユに浸けずに、そのまま一口食べてみました。
すすってみますと、蕎麦の表面が、機械切りのようなツルツルと無機質な感じではなく、いかにも「手打ち」&「手切り」と言う印象の絶妙にザラ付いている感じを残しています。
そして、カチカチに硬くなっている感じが全くなく、ともかく動きも、コシも、「たおやか」で、「ふんわり」としていて、もの凄く美味しいです。

軽く噛んでみますと、歯応えに「モチ、モチ、」と粘りが感じられ、量感があり、何とも豊かな蕎麦の「旨味と香り」が口中いっぱいにあふれ返って来ます。
この壮大に湧き立つ蕎麦の風味は・・・・・蕎麦の味わいがとても濃く、とても栄養豊かな印象を受けますね。
そして蕎麦で、ここまで「モチモチ」する蕎麦は初めてです。よほど蕎麦のデンプン質が上手に「アルファ化」されているようです。「アルファ化」がうまく行かないと、「モチモチ」ではなく「ヌチャヌチャ」と歯ぬかりする蕎麦になってしまいます。

均一に美しく整った長いスマートな姿形、そして細切りにもかかわらずこの無類の「モチモチ感」・・・・。
すする度に、噛む度に・・・・蕎麦職人の「匠の技」を味わっている喜びが体の奥から湧き上がって来ます。

時折、「蕎麦の魅力はコシの硬さだ!」とでも思っているのか・・・・ビンビン、カチカチに硬い、「練り固めてしまった」ような、やたらと強靭な歯応えの蕎麦を出すお店もありますが、
硬く練り固めてしまえば、味や香りも「全く湧き立たない」ですし、まるで単に「茹で足りない乾麺」を食べているようで、到底、美味しい蕎麦とは感じられません。
すすった際に「シュル、シュルン」とする硬めのエッジが立った、「ソリッド」な強いコシがあるタイプが好きだと言う人もいるかも知れませんが、
こちらのお店の蕎麦を食べると、いかに「ふわり」とする「口当たり」こそが、すべての蕎麦の魅力の「根底&根源」として位置しているかが・・・・とても良く判ります。



 生粉打ざるのアップ

二口目もツユに浸けず、そのまま食べてみましたが・・・・いやはや「美味しい」です。
特に、噛めばきちんと蕎麦の味が次々に「湧き出て来る」のには、驚かされます。

普段、街中でよく出会う蕎麦は・・・・すすっても、噛んでも、全く風味が湧き立たず、無言で「閉じこもって」しまっている・・・・と感じる蕎麦が非常に多いのですが、
こちらの蕎麦は実に「リッチ」な味と香りが、ワラワラワラ・・・・と次々に口中にあふれて来て、非常に味わいが「濃厚」ですね。
蕎麦の濃い色合いからしても、「挽きぐるみ」を思わせるような風味の濃厚さです。

もし何かに例えるのなら・・・・牛乳で言えば、まるで「特濃ミルク」の豊かなコクと旨味でしょうか。何しろ、香りも味わいも、確実に「一段濃い」のです。
この蕎麦と比較すると、世の多くの蕎麦はまるで「低脂肪乳」のようにライトな風味と薄い味わいに感じられてしまいます。

さて、十分に美味しいですが、さすがに六月と言うシーズンゆえか、秋の「新そば」のような鮮烈な香りと味わいで、次々に箸を進ませると言う感じにはなりませんでした。
ですので、三口目からは「ツユ」を使ってみたのですが、ツユはカツオ節の心地良い風味がフワフワと漂って感じられ、醤油はさほど濃くなく、明るくライトな味わい、そして割と甘味が感じられます。
江戸前の蕎麦ツユは辛口と言うイメージがありますが、こちらのお店はあまりその路線にはこだわっていないようで、どちらかと言えば甘口になるのではないでしょうか。

醤油が黒々としてコクが強く、キリリッとした締りとキレのある辛口の江戸前タイプの「濃いツユ」が好きな私にとっては、やや薄くてソフトムードで甘く感じられてしまいます。
言うなれば、こちらのツユ・・・・力強さと荒々しさのある「男っぽい味」ではなく、どこかしら繊細でナイーブ、柔らかさと甘さのある「女性っぽい味」に感じられます。
そのため私には、味がやや「緩く」感じられ、もう一つ味が「ググイッ」と押して来るパンチが感じられない気がしますが、この辺りは単に食べ手の「好み」次第と言う事になるのでしょう。

薬味は白ネギと山葵が少々と言うシンプルなものですが、むしろこの辺りには「蕎麦」の品質に絶対の自信がある証拠のような印象を受けます。
そして、この手の「求道者」的な蕎麦としては、量も多めで、食べ応えがあり、まるで「文武両道」を思わせる素晴らしい蕎麦だと思います。


(すべて完食。)




↓続きあり






〜おざわ その2〜



同上日 ざる 700円 

さて、「生粉打ざる」がとても美味しかったので、もう一品頼む事にしました。
「粗挽太打ざる」もとても気になったのですが、ここはやはりメニュー筆頭の「ざる」を頼んでみました。

ちなみに、後でメニュー写真を見て気付いたのですが、こちらのお店は「蕎麦のみ」(汁なし)でのお替りが可能なのですが、
冷たい蕎麦のメニューページである右側ばかり見ていたため気付かず、結果として「ざる」一式を頼んでいます。



 ざる 700円

さて、「ざる」が登場して目の前に置かれると、思わず息を飲んでしまいました。
な、な、何と言う・・・・・あまりに見事な「極細切り」でしょうか。しかも、非常に「長め」で、蕎麦の切れ目がほとんど見当たりません。

まずは、箸で掴み上げてみて再びびっくりしました。
箸で掴み上げた時の感触からして、他店のお蕎麦とはまるで違いますね。何より極細切りでスマート、さらにかなり長めなので・・・・その感覚たるや、素晴らしくデリケートで実に繊細、ともかく細やかでナイーブ・・・・。
まるで、美しい「芸術品」「工芸品」を手に取った時と同様の感動を覚えます。

すすってみると・・・・「ハラハラハラ、ハラリ・・・・・」と、何とも「五月雨」(さみだれ)が唇に降り注いで来るかのような、なんとも「軽やか」で「デリケート」なタッチ・フィールに、一瞬にして「悶絶」しそうです。
そして決して「ツルツル」と光沢のある均質な表面ではなく、いかにも手切り蕎麦らしい微細な「ヨレ」感があり、機械による大量生産では味わえない実に「ヒューマン」な美味しさを演出しています。
これだけの長い極細麺なのに、麺同士がパラパラとリズムを奏でながら個別に動いている感じで、団子状に固まらず、全く「くっつかない」のです。

何と言うか・・・・決して「香り」や「味」だけではなく、この「フワリッ・・・」とする優雅な感触、この無類のたおやかな「食感」で、直接に脳に訴えかけてくるような桁違いな美味しさを持つ蕎麦です。
まるで「魔法」か「催眠術」のような・・・・洗脳されるかの如き、実に「心地良い」口当たりです。
そして、これほど極細で、かつ、長いと、「茹でる」のも、「冷水締め」も、非常に難しいと思うのですが、こちらのお店の仕上げはまさしく「完璧」です。



 ざるのアップ

やはり三口目から「ツユ」に浸して食べてみました。
「ツユ」は「生粉打ざる」と同じものだと思いますが、ツユに浸けることで、蕎麦の分離がさらに良くなり、口当たりの「パラパラ感」が一層アップします。

蕎麦は、「フワ、フワ、」として、「細切り」独特の非常に「繊細&精緻」な口当たりが、舌やノドを絶妙にくすぐるような素晴らしい美味しさです。
すする度に、まるで無重力のように軽く「フワ、フワワ〜・・・・」と口に入って来て、舌に軽妙にタッチしながら、蕎麦の香りが口中いっぱいにあふれる感じです。
そして、いざ飲み込めば・・・・極細で、ストレートで、たおやかで、長い蕎麦・・・・が「スルーリ・・・・」とノドを「滑って」胃の中へ落ちてゆく様は、まさしく「比類なし」の快感です。

この極細の「ざる」蕎麦の何よりの最大の魅力はこの「ノド越し」の素晴らしさにあるでしょう。
そもそも「蕎麦の魅力」の一つは「ノド越し」と言われていますが、実際、このような高い次元での「ノド越し」を持つ蕎麦と言うものは・・・・・実は、ありそうでいて、なかなか無い物です。

ただ、極細で、かつ、長い蕎麦のせいか「ツユ」を非常に良くからめ、「生粉打ざる」の時以上にツユの味が良く乗って来ます。
そのため、私的にはさらに甘味が目立つようにも感じられました。



 蕎麦湯アップ

頃合いを見て「蕎麦湯」を出してくれます。
こちらのお店の蕎麦湯は、良くある四角い湯桶タイプではなく、お店のネーム入りのポットに入れられて登場します。

そのため、保温性は良いと思いますが、どのような蕎麦湯なのか直接に目視する事は出来ませんでした。
こう言うアイテムが登場するところも、どこかしら「伝統のスタイル」にこだわらない、「若さ」や「独創性」を感じるお店ですね。

「ツユ」を熱い蕎麦湯で割ると、一層、ダシの鰹節がフワリと香り、デリケートな甘味が感じられるようになりました。
熱々ですが、品の良い甘味があるのでとても口当たりが良く、ぐいぐい飲めます。無粋な塩分感もなく、ドロリとし過ぎる重い感じもなく、とても美味しい蕎麦湯でした。

この美味しい蕎麦湯を頂くだけでも、お店側の「真心」や「姿勢」と言うものが、しっかりと伝わって来る気がします。



さて、食べ終えての感想ですが・・・・・
二枚を食べてみて、いずれも非常に素晴らしい「絶品蕎麦」でしたが、敢えてその個性を形容するならば・・・・・うーん・・・・・


「味わい」の「生粉打」・・・・

「ノド越し」の「ざる」・・・・


と言うところでしょうか。
蕎麦好きを自認する方には、ぜひ両方ともご賞味頂きたいところです。
また、これほどのレベルの高いお店ですと、今回食べられなかった「粗挽太打」も大いに気になるところです。

しかも、しかも・・・・・時季は「六月」にして、この蕎麦の風味の素晴らしさ。
では、秋の「新そば」の出回る季節になれば、果たしてどれほどの究極蕎麦と出会えるのか・・・・いまから非常に楽しみでなりません。

ただ、中量級のシルクタッチな歯触りを持つたおやかな「蕎麦」自体は、私の好みのストライクゾーン「ど真ん中」で大満足なのですが、
黒々としてキリリッとした辛口の「濃いツユ」が好きな私にとっては、ツユが多少「緩く」感じられ、やや「甘味」が気になるような気もしました。

蕎麦の食感が「柔らか&たおやか」と言うことや、ツユがやや甘口と言うこともあって、全体的に食味が「ソフト」過ぎるような気もしますが、おそらくはこの辺の味付けは、こちらのお店ならではのポリシーなのでしょう。
現代風に若い女性やファミリー客などにも広く喜ばれそうな・・・・若くてライト、意図的に「ほんわか&ふんわり」としたツユに仕上げている印象を受けます。
そう言う意味では「老舗店」とは一線を画す、いかにも「若手」「新進」のお蕎麦屋さんの味と言う印象であり・・・・「大らか」な味わいのように思います。


ちなみに、巷の蕎麦屋さんの中には、結構な値段を取りながら、何の工夫もなく、量も少なく、スーパーで売られている袋入りの「乾麺」の蕎麦と、まるで「区別が付かない」「甲乙つけ難い」ような・・・・蕎麦を出すお店も少なくない気がします。
今や、100円ショップに行けば、わずか100円で三〜四食分のお蕎麦(袋入り乾麺)が手軽に買える時代です。そういう乾麺でも、きちんと茹で上げれば「なかなか」な味ですし、市販のツユやネギを加えても、蕎麦一食が100円以下と言うことになります。
それを、わざわざ専門店まで出かけて行って、7〜8倍もの値段を出してまで食べると言う事は、つまり、それなりの「意義」を客は求めている訳です。

もし、「手打蕎麦」の看板を掲げるのであれば、ぜひこちらのお店のように、箸で持ち、一口食べただけで、「明らかに違う」、「これぞ本物」と確信できる・・・・これ位ハイレベルな「手打蕎麦」を是非とも出して欲しいと、願ってやみません。



(すべて完食)











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