01ch グルメ食べ歩き
浪花家総本店
(東京都 港区)

店名 たいやき 浪花家 総本店(なにわや)
住所等 東京都港区麻布十番1-8-14 【地図表示】
禁煙 タバコ可否不明
訪問日 2006年8月下旬 鯛焼(2個) 300円 




〜浪花家〜



2006年8月下旬 鯛焼(2個) 300円 

今回は、都内でも屈指の「美味しい鯛焼き店」との呼び声が高い、巷で評判の「浪花家総本店」(港区・麻布十番駅)さんを訪問してみました。

誰がいつ頃から呼び始めたのか・・・・世に「鯛焼き御三家」なるものが存在するそうです。
具体的には・・・・

○港区・麻布十番にある 「浪花家総本店」 (明治42年創業)
○中央区・人形町にある 「柳家」 (大正5年創業)
○新宿区・四谷見附にある 「わかば」 (昭和28年創業)

だそうですが、私はいずれも未食でした。今回、初めてこちらの「浪花家総本家」を訪問してみました。
浪花家総本店は、創業明治42年ということで、御三家の中でも最も老舗と言う事になるようです。

また、御三家の話とは別に、もう6〜7年前から「麻布十番」に絶品の鯛焼き屋さんがあると言う噂を耳にしていました。
実は、その噂のお店こそが、こちらの浪花家総本店でもあった訳です。




訪問してみますと・・・・何と、お店があった場所はビル建設中でした。
貼り出されている建築計画表によりますと、どうやら2006年5月頃に以前の建物が建替えのために取り壊され、新築工事が始まっていたようです。

実は去年の秋にもこちらのお店へ訪問したのですが、良く調べなかったため、その時は運悪く定休日に当たってしまいました。
その時はまだ、風情あふれる旧店舗を見ることができました。

仮店舗の案内が出ていましたので、せっかくですし徒歩3分ほどの仮店舗へ向かうことにしました。




こちらが地図に出ていた仮店舗です。
「仮」と言うよりも、以前からあった姉妹店の「NANIWAYA-CAFE」と言うお店で、タイヤキの販売をしているようでした。

店名の漢字は「浪花屋」でも、「浪速屋」でも、「浪速家」でもなく、「浪花家」です。店名は初代店主が大阪出身であることにちなんだそうです。
1909年創業で、何と、日本で最初に鯛焼きを考案した「元祖たいやき」のお店だそうです。
もともとは、「今川焼き」の開業を考えていた初代店主が、どうせなら「めでたい」形でと言うアイディアで、「鯛」の型で売り出したのが「タイヤキ」の始まりだそうです。

また、現在は四代目店主氏が切り盛りされているそうですが、なんと三代目店主氏は、昭和時代の懐かしのヒットソング「およげ!たいやきくん」に出て来る白いコック帽をかぶった鯛焼き屋のおじさんのキャラクターモデルになった名物店主さんだそうです。
「およげたいやきくん」は、店のおじさんと喧嘩したタイヤキが、本物の「海」へ放浪の旅に出ると言うファンタジーな内容の歌で、歌手の子門真人(しもんまさと)が歌っていた昭和50年代の一大流行ソングです。




店頭には「1個 150円」、「6個箱入り 950円」、「12個箱入り 1850円」と書かれています。

店内では、鯛焼き以外にも、ヤキソバ、お汁粉 、かき氷、あんみつ等もあるそうです。
ちなみに・・・・もし店頭に行列がなくても、電話などによる「予約注文」による大量の「待ち」がある場合もあり、特に、混雑する土日などは「たいやき」の注文が殺到し、かなりの長時間待ちになる場合もあるようですので注意が必要です。
ちなみに、私は今回平日の午後3時近くと言う時間帯だったせいか、運良く待ち時間ゼロで購入できました。

既に焼き上がったタイヤキが20個ほどレジ付近にストックされていて、2個だけ購入しましたが、まさに「アツアツ」で焼き立てそのものの状態でした。





鯛焼きを入れて頂いた白い紙袋を広げて撮影してみました。見事に「均一」に焼けていますね。
写真では湯気もなく判りづらいですが、かなり熱々の状態です。

なお、こちらの鯛焼きですが、アンコは厳選された十勝産小豆を大釜で8時間もじっくりと煮た後、1mもある大きな木ベラで手練りをしたものだそうです。
皮は、小麦粉を氷で冷やしながら溶き、その冷たい生地を一気に高温で焼き上げる事で、小気味良く「パリッ」としたクリスピーな皮に仕上げているそうです。
天ぷらを揚げる時も生地の入ったボウルを氷水に浸けて、冷やしながら揚げると「サクサク」に揚がるのと同じ原理なのでしょう。

また、鯛焼きの「金型」ですが、縁日やスーパーの店頭などよく見かける、6個位を一斉に焼く平板な板状の「連焼き」タイプではなく、ひとつずつ独立した金型で手焼きする「一丁焼き」(一本焼き)を使っているそうです。

一丁焼きは、鯛焼きの入った巨大ペンチのような金型をガス火の上で「グルングルン」と回しながら焼くため、360度方向から直火が当たる事になり、高温でムラなく短時間に焼き上がり、全体が「パリッ」と焼けるそうです。
一方で、一丁焼きには熟練の技術が必要で、一つずつ焼くのに手間がかかり、あまり量産が効かないのだそうです。





裏面です。

では、いよいよ大きく口を開けて・・・・一口頬張ってみます。

カリッ・・・・パリパリ・・・・・。

サクサクサク・・・・モムモム・・・・・。



いやはや・・・・何と言う桁違いの「美味しさ」なのでしょう。

パリパリの皮目に「サクッ・・・」と歯が入った次の刹那、破れた皮目から一気に「噴出」する凝縮された甘い匂い・・・・に度肝を抜かれ、
続けて「サクサクサク・・・・モムモム・・・・」と噛み続ければ、芳ばしい「皮」とアツアツで甘い「餡子」、この二者が口中で「混ざり合って」究極の味覚ワールドが現出、
口中いっぱいに「ドッカーン・・・」と「爆発的」な良い香りと美味しさが広がります。

「皮」が非常に薄いのですが・・・・焦げ茶色の部分は「パリパリッ」としていて、色の淡い部分は「サクサクッ」としていて、角の部分は「カリカリッ」としています。
さらに、全体にしなやかに粘る存在感があって・・・・にわかには信じ難い「官能的」歯応えのバランス&妙味です。

縁日やスーパーなど売られている鯛焼きは、絶対に「カリッ」とか「サックリ」とかはせず、ホットケーキのように「フカフカ」「ブヨブヨ」とするような空気を含んだソフトな弾力のある厚い皮、もしくは、冷めていて「カチカチ」に硬い皮であることが多いのですが・・・・それらとは「全く別な食べ物」です。

そして、皮自身に・・・・何とも表現のしようがない素晴らしい「香り」があります。
小麦粉に混ぜた「玉子」の風味なのでしょうか、それとも何か秘伝の隠し味が混ぜてあるのでしょうか・・・・。
「しっとり系焼き菓子」に特有の、食欲を刺激する香りです。ちょうど、高級洋菓子店で買う「焼き立てワッフル」の生地の良い匂いと近いものがあります。
さらに「皮」自身にも、豊かな味(旨味)があり、風味があり、非常に美味しいです。

アンコは「ホックリ・・・・」「ホコホコ・・・・」として、トロけるような舌触り、何と言う「艶かしい」(なまめかしい)アンコでしょうか・・・・。
しかも、味わいに強いパンチがあり、上品な甘さに満ち、小豆の濃い旨味が「ギュギュッ」と凝縮しています。水で溶き延ばしたような「薄さ」が絶無なのです。
全く、「増量感」や「安っぽさ」が感じられません。

アズキは別名「赤いダイヤモンド」と言われるほど高価な食材なのですが、その小豆を惜しげもなくふんだんに使った本当に「本物」の「小豆餡」(あずきあん)です。
小豆をコトコトとじっくり煮詰め、上質な砂糖のみで味付けしてある「本物」です。
そのせいか、後口は見事に「サッパリ」として、全くクドくなく、食感が重くなく、キレが良いのにも驚かされます。

実際、温泉饅頭などに使われるような、風味の抜けたアンコとは比較になりません。
粉っぽいだけで、味わいの薄い、安いアンコの食味とはまったく「別次元」の美味しさです。

うむむ・・・・「皮」「アンコ」「焼き方」・・・・ともに、まさしく「完璧」です。





中央から二つに割って断面を見てみました。
真ん中から二つに折ってみますと、「パリッッッ」と小気味良いほどに、見事に割れます。

うーん・・・・この、「トロけるような舌触りのアン」が舌を覆い尽くすのですね・・・・。
小豆の粒は目には見えますが、既にとろけていて舌にブツブツと当たることはありません。

加えて、もう一つ特徴的なのは「皮の薄さ」です。どの部分を見てもほぼ1mmほどの厚さしかありません。
実は手間のかかる「一本焼き」だからこそ、この「極薄の皮」に仕上がるのだそうです。

断面に見えたアンコだけを舌ですくって少し舐めてみました。
「しっとり」として舌を包み込み、深い「コク」があり、究極的に「なめらか」な舌触り・・・・。
そして、極めて「上品」ながらも、ほんの少しだけ「強め」の甘味が美味しさを後押しして、しっかりと、確実に、甘い物好きの「舌」と「ハート」を鷲づかみにして「大満足」させてくれます。
そして、単に「甘い」だけでなく、しっかりと「旨い」のです。甘さだけではなく、「アズキ」の美味しさ、風味の豊かさが違うんですね。

また、アンコに砂糖だけでなく、少量の「塩」を入れると、対比の原理で一層「甘さ」が引き立つ・・・・と言う事は良く知られていますが、実際は、塩を入れすぎてしまい、ややしょっぱく感じられるお店も少なくありません。「過ぎたるは及ばざるが如し」でしょう。
ですが、こちらのお店のアンコは塩気が一切舌に触らないのは「さすが」です。

そして、この絶品アンコに負けず、薄い皮がまた絶品です。
「サクッ」としながら、同時に絶妙な「粘り」をも備えていて、噛み締めると微妙に「しなる」ようなしなやか感も持っている「皮」なのです。
そのため、これほどの薄皮にも拘らず、実にリッチな「歯応え」が楽しめるのです。この一見矛盾しそうな二つの「食感」を非常に高い次元で見事に両立させています。

この「薄皮」と「アンコ」の絶品コンビを同時に頬張れば・・・・まさしく甘い物好きにとって、「至福」の時間が流れます・・・・・。

「トロトロ」のアンコの中に「サクサク」の薄い皮が混じって、まるで「パフェ」か「ソフトクリーム」の甘いクリームと「ウエハース」のコンビを食べるようです。
「甘味」と「旨味」と「香り」と「歯応え」の波状攻撃の世界です。





二個目のタイヤキです。

んん?一個目の鯛焼きと微妙に形が異なりますね。こちらの方が頭が小さいようです。
おそらく、一個ずつ焼く「一丁焼き」なので、金型のデザインが何種類かあるのかも知れません。

ちなみに・・・・この業界では、一つずつ丁寧に焼く「一丁焼き」の鯛焼きを、希少な天然の鯛になぞらえて、「天然物」の鯛焼きと呼び、
ズラリと並べて一度にたくさん焼く「六連焼き」などの鯛焼きを、量産の効く養殖の鯛になぞらえて、「養殖物」などと呼んだりするようです。





二個目の裏側です。

アンコが透けて見えるほど、皮が薄いのが良く判ります。
皮目に歯を入れた途端の「一瞬」は、まさに究極。芳ばしくてクリスピーな皮を「サクッ・・・・」と歯が割り込んだ瞬間、爆発的な香りが噴出して来ます。

二個目も、一つ目同様の爆発的な美味しさです。
端の部分は「カリカリッ・・・・」、中心部は「サクサク、サックリ・・・・」で、違った食感が奏でられます。

そして、いかにも「出来立て」「作り立て」ならではの美味しさですね。
本当に風味がフレッシュでビビッドなのです。こう言う美味しさは「焼き立て」「作り立て」だからこそ可能な領域の美味しさです。
工場で焼いて、セロファンで包装して、箱に詰めて・・・・となってしまうと、皮もアンコもこう言う食味は保てないでしょう。





断面を見てみますと、やはり、一つ目同様に薄い皮です。
見事に「カリッ」としていて、「フニャリ・・・・」とか、「グニャリ・・・・」などの、「ふやけた」もしくは「しけった」食感が絶無です。

相当に「高温」で一気に「サックリッ」と焼き上げている感じです。
まさに炭火で焼いた、焼き立ての「パリッ」「サックリ」とした「薄焼きせんべい」のような・・・・「こんがり&サクサク」感の見事さに感心してしまいます。

そして皮が薄い分、必然的にアンコの体積がアップします。
タップリと入ったアンコは「つぶし餡」タイプです。餡はしっとりとして、決して硬くなく、むしろやや緩めの優しい口当たりです。
やはり、漉し餡ではなく、アズキの原形が残る「粒餡(小倉餡)」でもなく、この「潰し餡」が鯛焼きの定番でしょう。

ナチュラルな甘味が後を引いて、非常に「上品」ですね。
これだけ濃厚でありながら、クドさが全くなく、味が重くなく、甘味と旨味にあふれている・・・・相当に良質な餡子と言う事がまじまじと判ります。
それでいて、決して庶民の食べ物である事を忘れず、取り澄ました「高級な味」なのではなく、気取りのない「庶民の世界の美味しさ」「大衆の幸せの味」に満ちています。


実はこの後、もう一度お店へ戻って、さらに追加で「二つ」買って、その場でペロリと食べてしまいました。大満足です。

私は、もともと甘いものがあまり好きではないので、普段は滅多に甘い物は食べないのですが・・・・それ程に、「究極」の美味しさでした。
お茶などと一緒に頂けば・・・・・まず、10個位は楽に行けそうです。

「鯛焼き」も極めれば、これだけ人を感動させる「美味」になる・・・・事を教えられました。



(すべて完食。)










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