01ch グルメ食べ歩き
こいけ
(埼玉県 秩父市)

店名 手打そば こいけ(こいけ)
住所等 埼玉県秩父市野坂町2-14-34 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2005年12月下旬 せいろ 850円
            田舎そば 850円




〜手打ちそば こいけ〜



2005年12月下旬 せいろ 850円 + 田舎そば 850円

今回は、都心からも近く、「美味しい蕎麦の里」として有名な埼玉県の「秩父」を訪問してみました。
現在、秩父地域は、約七十軒以上ものそば屋さんがあり、秩父や長瀞を訪れる観光客にも「秩父そば」ブランドとして高い人気があるとのことです。

実際、秩父農林振興センターのHPによれば、秩父は「蕎麦の里」として町興しをしているようで、特に秩父市を横断する国道140号線を「そば街道」にしようと、そば屋さんの組織や地元の商工会などが中心となって動いているようです。
秩父地域で生産される蕎麦の品種は、昔から栽培されている秩父在来種で、蕎麦本来の上品な香りが強く、食味が優れているそうです。

ちなみに、こちらの「こいけ」さんの店主氏は、蕎麦界でつとに高名な「一茶庵」の創始者であるとともに近代蕎麦の始祖として崇められている故・片倉康雄氏が開いていた東京・池之端の「一茶庵蕎麦教室」で、片倉氏の助手を務めていたと言う、非常に輝かしいキャリアをお持ちの方だそうです。
そう言う意味では一茶庵の源流を知る貴重な存在であり、秩父だけにとどまらず、全国区レベルで有名なお店だと言えるでしょう。

また、国内産の蕎麦粉を使った「生粉打ち」に頑としてこだわり、蕎麦処である秩父でも、小麦粉による「ツナギ」(増量)を一切使っていない数少ない十割蕎麦を食べさせてくれるお店としても知られています。


 お店は国道140号沿い

お店に到着しました。西武秩父線の「西武秩父駅」から徒歩6分ほど、秩父鉄道線の「御花畑駅」からも徒歩8分ほどの距離です。
お店の前は、通称「秩父そば街道」として知られている国道140号線です。
看板が道路から少し引っ込んでいますので、車で伺う場合は通り過ぎに注意しましょう。


 一軒家タイプの店構え

お店は瓦屋根の一軒家タイプです。ノレンに小さく書かれた「こいけ」の文字が渋いですね。
お店の前は数台ほどの駐車スペースですが、左手に広めの駐車場があります。


 テーブル席

店内のレイアウトはL字型にテーブル席が配置され、その真ん中に小上がり席があります。
テーブルも椅子もシンプルな無垢材です。
年末なので「年越そば」の貼り紙がありました。


 座敷席

四角い卓を囲むような形の小上がり席です。
いかにも地場っぽい雰囲気があります。大型の石油ストーブが置かれていました。


 厨房スペース

お店の右手側に厨房スペースがあり、配膳用の木製のお盆が積まれています。
ガラスケースには白地の器が飾られています。何かの由緒ある器なのでしょうか。


 和紙に書かれたメニュー

和紙に書かれた「お品書き」が渋いです。
さすが、一茶庵の流れを汲むだけあって、「変りそば」や「三色もり」があります。
また、秩父の手打ち蕎麦のお店で、「うどん」が置いてあるのは割と貴重だと思います。

「せいろ」をオーダーしました。後で「田舎そば」も追加しました。


 麺打ち台とそば挽き機

麺打ち台スペースの壁にかかる沢山の麺棒が壮観です。手前には石臼を使った蕎麦挽き機が置かれていました。
ガラスケースに多数積まれた本は売り物なのでしょうか。



 「せいろ」 850円

さて、オーダーをしてから約7分ほどで、いよいよ「せいろ」の登場です。

うむむ・・・・やはりと言うべきか、見た目は、色といい、形といい、そば粉の種類といい、「一茶庵本店」(栃木県)の「せいろ」と非常に良く似ていますね。
麺の長さはややこちらの方が長めでしょうか。ちなみにツユはとっくりに入らず、直接、蕎麦猪口(そばちょこ)に入れられて来ました。

蕎麦の色が、やや、うっすらと緑色がかって見えますね。
これは、収穫してからさほど時間の経っていない見事な「新そば」を使っている証拠だと思います。



 せいろのアップ

見た限りでは、蕎麦の一番粉と二番粉をブレンドした蕎麦粉で打っているようです。
蕎麦の表面が非常にスマートで、ザラザラ感が全くないですね。

そのためか、蕎麦の香りはさほど強くなく、フラットで滑らかな表面で、瑞々しくウェットな舌触りなので、
洗練された口当たりと、スルリとしたノド越しの良さを楽しむタイプに思います。



 麺のアップ

まずは、ツユに漬けずに食べてみますと、すすり心地は「はっきり」としていて、やや「くっきり」と麺の動きの軌跡が伝わって来ます。
噛んでみますと、蕎麦粉の結合が密接で「ピッチリ」としている感じで、実に端整に打ち込まれている印象です。
私的にはもう少し「フワッ・・・」と空気を含ませたような軽い感じがあると、さらに口当たりが良くなるような気がしますが、この辺りは単に好みの問題でしょう。

また、香りにも、味にも、食感にも、「庶民」っぽさが少ないと言うか・・・・どこかしら、「気位の高さ」を感じさせるお蕎麦です。
山間部にある「秩父」のご当地テイストと言うよりも、まるで、東京の「一流レストラン」で一流のコックさんが作る料理のような雰囲気を感じます。
そういう意味では、素人出身者には絶対に作れないタイプの蕎麦だと思います。



 上品なツユ

「ツユ」は、味のカドが立たず、「まったり」とした円さのある「かえし」(醤油)がしっかりとコシを据えている感じのツユです。
それでいて、黒々とした醤油の「重さ」に支配されたツユではないですね。
この辺りに、やはり一茶庵系の流れを汲むイメージを受けます。

ミリンの風味や甘味はうっすらと控えめで、強い塩分感もなく、カツオ節の風味がほんのり心地よく漂う、これまた上品なツユです。
もちろん「蕎麦」との相性も上々で、その味わいは・・・・ラフな「普段着」ではなく、まさに「礼装」に身を包んだような端整な味わいです。



 「田舎そば」 850円

続いて、「田舎そば」です。
うーん・・・・これまた、「一茶庵」の田舎そばのビジュアルと非常に良く似ています。

ただ、実際に、箸でつかんでみると・・・・心持ち・・・・こちらの方が、「のっそり」とした非弾性的な手応えで、
念入りに強く圧延されていると言うか、麺が「重そう」「ヘヴィ」な印象を受けます。

また、蕎麦の「色」は、先の「せいろ」のうっすらと緑色がかった淡い色と比較すると、ややブラウンがかった暗色系の落ち着いた色合いです。
田舎そばと言うことで挽きぐるみされ、「甘皮」の色が混じるためでしょう。
この甘皮は、蕎麦の実の殻の下にある薄皮のことですが、字の通りやや甘味が感じられ、適量混じる事で蕎麦の香りと甘味が増します。



 田舎そばのアップ

いざ、食べてみますと・・・・蕎麦粉の粒子が非常に細かくグラインドされている感じです。
そして、やはり先の「せいろ」同様に、蕎麦粉の密度が「ビッシリ」と高い感じで、組織が良く結着し合い、単に「硬い」と言うのではないのですが、「重くて」「強靭」と言う言葉が良く似合う気がします。

噛み切ろうとしても「ムッチリ・・・」と非常に良く粘り、コシが持ち堪えるので、かなりの「粘り腰」と言うか、軽い感じでは噛み切れない印象です。
そのため、歯応えが、見た目の太さ以上に「がっつり」として感じられます。
かなりの圧力をかけて練り込んでいる感じで、これほどに「ストロング・スタイル」「重量級」の蕎麦も珍しいですね。

かなりの存在感を持つ歯応えですが、その分、蕎麦の旨味や香りも麺の中に閉じ込められているイメージで、あまり明るく華やかに湧き立つようなタイプではないようです。
外皮部分を入れた挽きぐるみタイプではないこともありますが、特に蕎麦の香りが少なめに感じるのは、太さゆえの「断面積」の少なさ、凹凸のないスムーズな表面による「表面積」の少なさ、粘りによる噛み砕きづらさ、などが関係しているような気もします。



食べ終えての感想としては・・・・・
「せいろ」は、ご当地蕎麦のような・・・・カントリー風テイストや素朴な感じは影を潜めていて、どこかしら、都会的な「品位」や一流の「格式」を感じさせる味わいですね。
東京で言えば、下町ではなく、「銀座」や「赤坂」辺りにあるような、高級感のあるお店で出されそうなお蕎麦のように感じられます。
そして、「味わい」的には、決して蕎麦の方から判りやすく切り込んで来てはくれないと言うか・・・・その真価は「分かる人には分かる」と言うイメージです。
やや食べ手を選びそうな、なかなか「上級者向け」「玄人志向」のお蕎麦と言う印象を受けました。

「田舎そば」は、一茶庵本店の「田舎蕎麦」と比べると、粘りが増し、ややヘヴィな口当たりを増している感じですが、別屋号で独立してから、既に何十年も経っている事を考えれば、あえて比較するものでもないのでしょう。
また、メニューには秩父の手打ち蕎麦屋さんとしては、珍しく「うどん」も置いてあり、おそらくは「うどん」もご主人が手打ちされているのだろうと想像しますが、どことなく、こちらの「田舎そば」も蕎麦と饂飩のハイブリッド・テイストのような食味にも感じられました。
特に「ノド」を通り過ぎる際の存在感の放ち方は「蕎麦」としては独特なもので、しばらくはノドにその通り過ぎた「痕」の感覚がしっかりと残る感じがあります。
そう言う意味では、この田舎蕎麦にハマった人にとっては、他のお店の、どのお蕎麦を食べても、噛み応え、ノド越しともに、「物足りなく」「ひ弱に」感じてしまうのではないでしょうか。

お店は古い民家を改装したものだそうで、なるほど、地元に溶け込んだ気取りのない佇まいですが、一歩店内へ入ると、店内の空気感には、凛として「ピーンッ・・・・」張り詰めたものを感じます。
今回、訪問させて頂いた「秩父」のお蕎麦屋さん数軒の中では、こちらのお蕎麦は、最も「高級な格式」、「職人気質ぽさ」のあるお蕎麦・・・・と言う感想を持ちました。



(すべて完食)










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