01ch グルメ食べ歩き
香味屋根岸本店
(東京都 台東区)

店名 香味屋 根岸本店(かみや ねぎしほんてん)
住所等 東京都台東区根岸3-18-18 【地図表示】
禁煙 タバコ分煙(禁煙席あり)
訪問日 2006年6月中旬  ハヤシライス 2300円 
            メンチカツ(小) 1150円 
2006年6月中旬2 ビーフシチュー 3000円
            オムライス 2000円
2006年6月下旬  パン 230円 + テールシチュー 温野菜添え 3500円
            スパゲティ・ミートソース 1730円




〜香味屋本店 その1〜



2006年6月中旬 ハヤシライス 2300円 

今回は、都内でも屈指の「美味しい洋食店」との呼び声が高い、巷で評判の「香味屋 根岸本店」(台東区・入谷駅 or 鶯谷駅 or 上野駅)さんを訪問してみました。
香味屋は創業大正14年(1925年)だそうで、既に80年以上に及ぶ、都内でも屈指の輝かしい歴史を誇る洋食店だそうです。実際、インターネット上の「洋食系サイト」「グルメ系サイト」などを見る限り、こちらのお店を「絶賛」する記述が多数見受けられます。
しかも、その表現は「東京下町の洋食の最高峰」「特別な日に来たいとっておきのお店」などの最上クラスの賛辞が惜しげもなく贈られているお店なのです。

この日は、香味屋の人気メニューである「ハヤシライス」と「メンチカツ」を目当てに訪問してみました。




東京メトロの入谷駅から徒歩5分ほど、JRの鶯谷駅からも徒歩8分ほどです。
上野駅ですとやや遠く、おそらく徒歩15分はかかることでしょう。

お店は緩くカーブした上り坂に面していて、この道は街路樹として見事な「柳」が植えられ、見た目の通り「根岸の柳通り」と言われているようです。
お店の右手15m程の場所に3〜4台分の駐車場があります。上の写真でも「駐車場」と書かれた白い案内板がチラリと見えます。





うーん・・・・派手な看板や装飾とは無縁な「大人の佇まい」のお店です。
「レストラン」と書かれていなければ、高級紳士服テーラーのような雰囲気にも感じます。

扉はガラス張りですが、スモークガラスのため、中の様子は良く判りません。
店頭にはメニューの案内板なども置かれておらず、通りすがりで入る一見客はさほど多くないような雰囲気です。

ちなみに、香味屋は、こちらの根岸本店以外に、支店として千代田区の帝劇ビルの中に「帝劇店」もあります。




入口を入ると左手に客席スペースが広がります。右手には階段があり、2Fもあるようです。

クールな外観からは想像が付かない、ウッディで温かみのあるクラッシックモダニズムのインテリアです。
席の配置もゆったりとした感じで、ゆとりが感じられて良いですね。
奥のパーティションで仕切られた先は禁煙スペースになっています。




こちらが店の一番奥に位置する禁煙スペースです。
まるで、美術館のような美しいインテリアで、とても気品のある優雅な空間です。
カーネーションが飾られた一輪挿しが、実に「可憐」です。

ちなみに、こちらのお店は昼から夜まで中休みなしで、通し営業をしています。
この日は夕方4時頃と言う、最も空いていそうな時間帯を選んで訪問してみましたが、それでも数組の客が食事を楽しんでいました。
おそらくランチタイムや夕食のピークタイムは混雑が予想されます。




着席すると「ブック」型のメニュー表を手渡されます。

メニューの1ページ目です。
こちらは「本日の特別料理」として、日替わりのお薦め料理が載っているようです。




メニューの2ページ目です。
こちらは「定食」のページのようです。三種類の「定食」があります。

右のページは「アラカルト」のページです。
「オードブル」、「スープ」、「魚料理」が掲載されています。




こちらは「肉料理」のページです。さすが高級洋食店、ほとんどが「ビーフ」ですね。
「ステーキ」ではなく、「ステーク」と発音するのが、いかにも老舗っぽいです。

右ページは「鶏肉料理」と「コールドミート」のページです。




こちらは「サラダ」と「米飯料理」のページです。
「サラダ」だけでも6種類もあるとは・・・・・さすがです。

右ページは「スパゲティ」、「サンドウィッチ」、「洋食弁当」のページです。




最後にデザートとソフトドリンクのページがあります。

いやはや・・・・・すごい料理のバラエティと、メニュー数ですね。
都内広しと言えども、これだけの種類の洋食料理を網羅しているお店は多くはないでしょう。

なお、アルコール類は別のメニュー表に掲載されていました。
アルコール類もかなり充実していました。




さて、まずは・・・・・「ハヤシライス」の付け合せとして三種類の薬味が登場しました。
この後、ハヤシライスを食べながら、一種類ずつ頂いたのですが、先に感想を述べますと・・・・・

ラッキョウは、甘酢に漬けられて、マイルドで適度な甘味が美味しいです。中国産のラッキョウはコリコリッとして、硬いことが多いのですが、こちらのラッキョウは歯応えがとても優しく柔らかいですので、おそらく国産のラッキョウでしょう。

福神漬けは甘い味付けですが、甘さ一辺倒ではなく、何かのエグ味と言うか微妙な苦味を感じました。

キュウリのピクルスは、目が覚めるほどのすっぱさで、かなり強い「酸味」です。鋭角的で、キレのある強烈な「酢」の酸味が、口中に電流のように瞬間的に迸り(ほとばしり)、唾液を分泌させます。
一片だけでも頬張ると、猛烈な「酢」の酸味が炸裂しますね。もう少し浅く漬け込むだけで良いような気がしますが、ただ、明るく、ライトな酸味なので、後には残らない感じです。





さて、いよいよハヤシライスの登場です。
スッキリとした白いお皿と、ステンレスのソースポットに入って登場です。見た目は意外にオーソドックスですが、「味で勝負」と言う事なのでしょう。
ナイフが添えられたのは、同時に頼んだ「メンチカツ」用としてだと思います。

ちなみに、左にチラッと見える「冷水」も美味しかったです。何らかの浄水器を使っているのは間違いないでしょう。





ソースポットはかなりの「深さ」があるにも拘らず、具の牛肉が沈み切らず・・・・・ソースから顔を出しています。
普通、ハヤシライスと言うと、牛肉を薄くスライスした「薄切りビーフ」を入れるお店が多いですが、こちらは「カレー」などへ使われるような塊り状のビーフがドッサリと入ります。

まずは、ご飯にかける前に「ハヤシルー」だけを少しすくって舐めてみました。


ペロッ・・・・・ペロリ・・・・・・・。



お・・・おぉ・・・・・・。

こ、こ、これが・・・・創業以来80余年の歴史を誇る、「香味屋」のハヤシソース・・・・・。


いやはや、何と言う・・・・「ハートウォーミング」な優しい美味しさでしょうか。
豊満な旨味と深いコクがありますが、その美味しさが非常に「おおらか」で、ゆっくりと「たゆたう」ような・・・・優雅で「心優しい」味わいです。
「ガツンと来る味」とか、「性急な味」などとは正反対の・・・・・ゆったりとして豊か、実に「寛げる美味しさ」です。

ハヤシライスとしては、トマトの風味は適度に見え隠れする程度で、さほど強くないタイプのようです。
とろけたタマネギのトローンとする舌触りや、トマトの明るい酸味とキレが少ないので、そのため、何と言うか・・・・ハヤシライスと言うよりも、ビーフシチューのルーを少し緩くした・・・・と言うイメージです。

そして、味わいのベースに適度に甘味が入り、この甘味がとても口当たりを良くしています。
この甘味と、酸味と、旨味のバランスが良く、さほど苦味や洋酒っぽさは感じられません。

何かが突出せず、高い次元でのバランスの良い味を実現している印象です。
ただ、「ハヤシライス」を意識させるためにも、私的な好みとしては、もう少しトマトの香りと酸味が欲しい気もします。





ソースレードルでハヤシソースをすくってみました。
実際、ソースの中には大振りで肉厚なビーフの塊りが、「ゴロゴロ」とひしめき合っていて、肉の重みでソースレードルが動かし辛いほどの、もの凄いボリューム感です。
ケチケチしたところが全くなく、料理を通して「しっかりともてなそう」「満足してもらおう」と言うお店側の気持ちがひしひしと伝わって来ます。

牛肉には脂身がほとんどゼロで、歯を入れると「サックリ・・・・」、噛めば「モギュモギュ・・・・」と歯応えが豊か、それでいて「ふっくら・・・」とした繊維感でソフトにほぐれて行きます。
ブヨブヨする脂身やグニグニする筋が絶無なので、「高級ビーフの魅力」を、邪魔者なしでめいっぱい堪能できます。薄切りと違い、厚みがたっぷりあるので、歯応えも豊かで、がっつりと美味しい牛肉を沢山食べたい時には最適でしょう。
厚切りにもかかわらず、ソースが非常に良く馴染みきっていて、肉をソースで良く煮込んだ感じもあります。





ルーをライスへかけて一緒に食べてみますと・・・・・豊満な旨味と深いコクのハヤシソース、厚切りビーフの柔らかく高級感のある旨味、無垢なるライスの優しい味・・・・の三者が、
見事に口中で出会い、三位一体、「バランス」し合って、まさしく「完全無欠」の美味しさが現出します。

「ハヤシソース」だけでも抜群に美味しいのに加え、これだけ極上ビーフ肉がたっぷりと入っているので、ビーフの旨味がソースへ溶け出し、お互いが相乗効果でスパイラル状に旨味を高め合い、さらなる美味しさの「高み」へと登りつめている印象です。
デミグラスソースの美味しさだけでなく、ビーフ肉を「がっつり」と食べられるので、「肉料理」としての満足度も非常に高いですね。
正直、ビーフが多すぎて、食べても食べてもなかなか減らず、果たして食べ切れるかな・・・・と、途中から少々不安になって来ました。「嬉しい悲鳴」とは、まさにこのことでしょう。

シャンピニオンがクニクニとした歯触りでアクセントを添えてくれますが、タマネギは溶けてしまったのかどうか・・・・食べていてあまり目立つ感じではありませんでした。
ハヤシライスの定番である「薄切りタマネギ」があまり目立たないので、やはりどこかしら緩めのビーフシチューをライスにかけて食べているイメージを抱かせるルーですが、ハヤシルーの量がかなり多く、牛肉がドッサリと入っているので、ともかく「モリモリ」と非常に「食べ応え」が豊かです。

そして、食べ進むうちに感じたのは、素晴らしい上質感にあふれる美味しいハヤシライスですが、一方で、決して「洗練され過ぎた味」「気取っている味」ではない・・・・と言うことです。
「ルーのおいしさ」「肉質の良さ」「ボリューム」等とともに・・・・こちらのハヤシライスには、食べ物としての優しい「ぬくもり」・・・を強く感じさせられます。

一言で言うならば・・・・何とも、「あたたかな味」なのです。
しかも家庭料理的なあたたかさではなく、プロの調理人の手による・・・・「あたたかさ」と「ぬくもり」を感じる味です。
気取らず、高尚過ぎず、「ギラギラ」とした、インパクトやサプライズを狙った料理ではなく、最高の素材と一流の調理技術を擁しながらも、何と言うか・・・・「手作り感」があり、どこかしら下町の情緒が残る「親しみ」を覚える味ですね



(すべて完食)




↓続きあり






〜香味屋本店 その2〜




同上日 メンチカツ(小) 1150円 



さて、実はメンチカツもハヤシライスと同時に登場していました。
数々の人気メニューを誇る「香味屋」ですが、この「メンチカツ」をお店の一番の「名物」として挙げている方も少なくないようです。

メニューには「メンチカツ」と「メンチカツ(小)」があり、それぞれメンチカツが「2個」と「1個」の違いになります。今回はハヤシライスと一緒に頂くので、「小」(1個)でオーダーしました。
大きさはフォークなどの大きさと比較して頂ければ想像が付くかと思いますが、割と厚みもあります。
パン粉はメンチカツやコロッケには定番の「細目」で、どちらかと言えば濃い色に揚げてあります。

きちんとポテトサラダやキャベツの千切りが添えられ、メインディッシュとしての体裁になっているのは嬉しいです。
しかも、付け合せに何気なく添えられている「ポテトサラダ」などは、これまた出色の美味しさです。
さすが「洋食一筋」80年超の歴史は、ポテトサラダ一つにも、これほどの「違い」を感じさせてくれるのですね。キャベツやトマトも鮮度が良くて美味しいです。





さらに驚いた事は、何とたった一個のメンチカツに、シャンピニオン入り特製ソースがポットに入れられて添えられて来た事です。
結構、原価がかかっていそうなソースが、これまたタップリと注がれています。

スプーンに移して少しなめてみますと・・・・さほどコクは感じませんが、適度なトロミがあり、どうやらブラウンソースがベースになっているような味わいです。
「マッタリ」としたまろやかさと、「トップリ」とした重さのある味わいで、はっきりとした苦味があり、洋酒の風味がやや強めに香ります。
ブランデーなのか、マデラワインなのか・・・・までは判りませんが、この洋酒風味のやや強めの効かせ方は、食べ手によっては多少好みが分かれるかも知れません。

ただ、調味料としての「ソース」として考えると、塩分感がないせいか、優しすぎる味になっていて、味にパンチがなく、スパイシー感やキレが少ないですね。
「調味料」としてのソースではなく、「ルー」のようにして食べるためのソース・・・・と言うイメージです。





さて、いよいよ「香味屋」名物の「メンチカツ」の実食です。
ナイフとフォークでハンバーグを切り分けるように、「メンチカツ」を中央から切り分けてみました。

その瞬間、

「ザクッ・・・・・ジュワワッッ」

「ザックリ・・・・・ジュワワワッ」

「待ってました」とばかりに、透明な肉汁が良い匂いと共に一斉に「噴出」して来ました。
どうやら「衣」をカプセルとして、肉汁をその中に閉じ込めていたようなイメージです。

まずは、ソースも何もかけずに食べてみますと・・・・衣は「サクサク」と軽い感じではなく、ややウェットで厚みを感じさせる「ザク、ザックリ・・・・」とする適度な重みがあります。
続けて、加熱で活性化した肉の旨味と脂のパンチが、口中で「ドバッ」と力強く炸裂します。
肉の旨味が恐ろしいほどに「ギュギュギューッ」と非常に濃く「凝縮」していて、その美味しさがもう口中に収まり切らないほどに、一瞬にして舌の上で小爆発するイメージです。

このあまりにも「未体験」の美味しさ・・・・肉質自体が良い物なのに加え、タマネギなどの「ツナギ」がほとんど感知できないほど控えられている事も、「凝縮した肉の味」を生み出すのに一役買っているようです。
そして、ミンチ肉には下味が結構効かされていて、香辛料が巧みに使われている事が判ります。

肉汁は熱々で、「ジュクジュク」と言うか、「ジュワジュワ」と言うか・・・・盛んにあふれて来ます。
肉が細かく刻まれたミンチゆえ、肉の断面積が飛躍的に大きく、噛んで圧力が加わると、肉汁がすべての断面から「ジュワワッ」と一斉にあふれ出すのでしょう。
ただ、それにしてもあまりにも多すぎますし、さほど重みのある肉汁ではないので、おそらくは、本来の肉汁以外に、油脂やダシ類などのジューシーな素材を混ぜているのかも知れません。





アップにして見てみますと、大量の肉汁がお皿へあふれ出ているのが良く判ります。
ちょっともったいなかったですね、せっかくの肉汁が流れ出さないように、ナイフで切らずに、丸のまま食べ始めるのが良いかも取れません。

ミンチ肉は粒が良く立ち、「肌理」(きめ)が非常に細かく、口中で「フワッ・・・・」と、まるで、ミンチ肉が無重力空間で空中分解するかのような・・・・・「夢心地」の舌触り、「奇跡」の口解け感です。
食感を乱す「スジ」や「軟骨」の介入が絶無です。肉の粒立ちが、完璧に揃い切っていて、歯応えに「乱れ」が一切発生しないのは、「高級ミンチ肉」を使い、さらにおそらくは手間をかけて丁寧にミンチの「二度挽き」などをしているのではないでしょうか。
また、普通、「ミンチ肉」(挽き肉)と言いいますと精肉後に骨にへばり残った安いクズ肉などを原料にしている事が多く、スジや軟骨までもが混じっていたりして、そのため安いメンチカツの多くはポツポツと異物感の混じるミンチ肉が使われていますが、こちらはまるでステーキにでも使えそうな、良い部位の正肉(しょうにく)を使っていると思われます。

そして、その夢心地の口解け感と「相反」するかのような、濃厚に凝縮した肉の旨味のパンチ・・・・このギャップが堪らないですね。
何回噛んでも「肉の味」が次々とエンドレスに湧き立って来る感じで、いつまで経っても「肉の味」を味わい尽くした感じにならず、そのためなかなか飲み込む気になれないほどです。

また、普通のメンチカツやハンバーグは牛肉と豚肉の挽き肉をミックスした「合い挽き肉」を使うわけですが、この「高級感」のある味わいから察するに、使っている肉はかなり牛肉の比率が高いですね。

「メンチカツ」と言う食べ物・・・・・均一に刻んだミンチ肉を、油で揚げて旨味をムラなく活性化し、肉汁を衣の中に閉じ込め、しかも密封してホカホカの状態を持続させられるメリットがあります。
肉を噛みちぎる歯応えはなくなりますが、こと保温と肉汁に関しては、なかなか優れている面があると改めて感じました。
「肉の美味しい食べ方」・・・・・に対する一つの解答が示されているような気持ちになります。





さて、次に、ポットに入った特製ソースをかけて食べてみました。
しかし、この特製ソース・・・・・。
せっかくですが、口当たりのモッタリと重い中濃系ソースが、メンチカツのピュアな肉の旨味を隠してしまうとともに、口当たりがややクドくなってしまう気がします。

メンチの「動物性の旨味」に「動物性のソース」が重なってしまう感じで、メンチの持ち味も埋もれてしまうと言うか、せっかくのメンチの隆々とした肉体美に無用の厚着をさせてしまうイメージです。
スーパーなどで売られているメンチカツやコロッケであれば、中濃ソースを「ドボドボ・・・・」とタップリかけて食べたいところですが、こちらの本物の肉の素材感に溢れるメンチカツに限って言えば、重くて鈍い感じの中濃ソース系は合わない気がしました。また、洋酒の風味があふれる程に感じられ、匂いだけで酔ってしまいそうな錯覚を覚えるほどです。
私は洋酒系が好きだから良いですが、洋酒が苦手な人には、やや好みが分かれるかも知れない気がしました。

そこで、最初に持って来て頂いていたビン入りの「ウスターソース」があったので、このウスターソースを使って食べてみました。
結果として、この「ウスターソース」の方が、遥かにこのメンチカツを美味しく食べさせてくれました。

サラッとした口当たりでメンチの歯触りを殺さず、しかも、スパイシーで、野菜中心の旨味と酸味なので、味をクドくさせずに、メンチカツの味の輪郭を、明るく、太く、クッキリと、一層鮮やかに「照らし出して」くれる印象です。
しかも、ライスが欲しくなる感じで、俄然、「食が進む」感じになります。

このウスターソースは、ややほんのりと甘めですが、香りのフレッシュさ、旨味の豊かさや鮮やかさからすると、おそらく自家製ではないでしょうか。実際、ソースのビンには、何のラベルも貼ってありませんでした。
ただ、お店側はサービスのつもりなのだと思いますが、ハヤシライスとメンチカツが同時に登場してしまったので、冷めるのを心配してしまい、あまりゆっくりとは食べる事ができませんでした。
両方とも「熱々」の状態が美味しい料理ですので、一口ずつ「数十秒」はかけて、ゆっくりとその真価を堪能したい私としては、メンチカツはハヤシライスが食べ終わる頃に「追加オーダー」と言う形にすれば良かったと思いました。




さて、食べ終えての感想ですが・・・・・・
こちらのお料理・・・・・まさに生粋の「日本」育ちの味だと思います。別な言い方をすると・・・・「日本人のコックさんが作っている味」と言うイメージです。
店内は客席と厨房が離れている上に、壁で仕切られていて、コックさんの姿を見ることは一切出来ないのですが、決して、フランス人とかイタリア人のコックさんではないな・・・・と確信できる、イタリアンやフレンチとは明確に距離のある日本独自の文化である「洋食」の味、日本人の価値観や嗜好に見事にフィットする味ですね。

つまり、最高級の味ではあるものの、幼い頃から慣れ親しんだ味の延長線上にある、口にしっくりと来る、とても「馴染み」がある味だと言うことです。
そして、「創作系料理店」などでフランス帰りのコックさん等が作るような、イタリアンやフレンチとの境界が不明瞭なメニュー、無国籍風の新進のメニュー・・・・などとは異なり、まさしく「これぞ日本の洋食」「これこそが伝統の洋食」と感じる、実に感慨深い味わいです。
かといって決して懐かし過ぎるとか古いとか言う味ではなく、きちんと現代の味覚水準に合わせて進歩し、その時代の日本人の価値観に沿う味になっていると思います。
店内インテリア同様に、料理もまた「クラシックモダン」の印象です。

また、こちらのお店のある「根岸」「下谷」「入谷」界隈は「子育地蔵」や「火除観音」を始め、歴史ある神社仏閣、名所旧跡がつとに多く、都内有数の下町人気エリア「谷中」「根津」「千駄木」の「谷根千」(やねせん)に勝るとも劣らない江戸下町情緒を今も色濃く残す一帯です。
そのせいかどうか・・・・・こちらのお店の料理も「高級洋食」でありながら、なんとも食べ手をリラックスさせてくれる下町らしい「あたたかな食味」に満ちています。
決して食べ手を驚かせたり、緊張させたり、圧倒したり・・・・と言うのではなく、食べていてまったく嫌味がなく、絶妙な奥ゆかしさもあり、実に「オーセンティックな味」、「親しみを感じる味」・・・・と言う感想を持ちました。
そのせいか、とても安心して食べられる感じで、まるでいつもの自分に戻ったような・・・・肩肘張らずにリラックスして、次々にナイフとフォークとスプーンが進みました。

お店を出てからも、後口も本当にスッキリ、サラッ・・・・としていて、余計な調味料や人工的な味も一切なく、塩辛さとか、油っこさとか・・・・そう言う「無粋」なものが全くなく、お腹にモタレるような感覚も絶無でした。
単に「味」だけではなく、「善意に満ちた食べ物」として、食べ手の健康や体調にまで気が配られているかのような・・・・・実に丹精込めた温かな「おもてなしの味」であり、「ハート・ウォーミングな味」です。

言うなれば、この道のプロフェッショナルが「真心を込めて」作った味・・・・です。そうでなければ、決してこう言う味にはならないでしょう。
確かな仕事を披露して、客をもてなし、寛がせてくれる・・・・・こう言う味を、本当の意味で「一流」の味と言うのだと思います。



(すべて完食)




↓続きあり






〜香味屋本店 その3〜




2006年6月中旬2 ビーフシチュー 3000円

前回の「ハヤシライス」および「メンチカツ」にあまりにも大感激してしまい、間を置かず再訪してみました。
こちらのお店のバラエティ豊富なメニューに興味をくすぐられ、他のメニューも是非試してみたくなったと言う事もあります

今回もお店が特に空いていそうな夕刻4時頃に訪問したため、店内には数組の先客がいるだけで、ゆっくりと過ごす事ができました。
豊富なメニューを前にして、あれこれ迷いに迷った末、「洋食屋」さんの定番中の定番と思われる、「ビーフシチュー」と「オムライス」を注文することにしてみました。
なお、この二皿が同時に登場してしまうと、片方が冷めてしまいますので、最初に「ビーフシチュー」のみを注文し、シチューが食べ終わる頃に「追加」と言う形で「オムライス」を注文しました。




注文をしてから、約15分ほどで「ビーフシチュー」がサーブされました。
相変わらず、スッキリとした白い無地のお皿に、やや小振りなナイフとフォークが添えられての登場です。見た目はあまり飾らず、意外にオーソドックスですが、「中身で勝負」と言う事なのでしょう。

ビーフは大きな肉塊がゴロリ・・・・と、お皿の上に鎮座し、シャトー切りのキャロット、シャンピニオン、プロッコリーと言う、ビーフシチューの定番の付け合せが脇役を固めます。
また、マッシュド・ポテトは、ホワイトソース(ベシャメルソース)と混ぜて、オーブンで焼き目が付けられ、ちょっとしたグラタン風に仕上げてあります。
さすが、なかなか芸が細かいですね。

牛肉の使われている部位は良く判りませんが、円筒形の形から察するに、おそらくスネ肉ではないでしょうか。
ちなみに、すね肉は、そのまま煮込んでもとても硬い肉ですが、市販のパイナップル100%ジュースに10分も浸しておくと、パイナップルの持つ「プロメライン」(プロメリン)と言うタンパク質消化酵素によって、驚くほど「ふっくら」と柔らかい肉に簡単に変身します。

私も家で「すね肉シチュー」を作る時は必ず、パインアップルジュースを使っています。
なお、もちろん生のパイナップルを使っても良いですが、この酵素は熱に弱いですので、缶詰のパイナップルは加熱殺菌しているため使えません。また、あまり長時間パイナップルへ漬けておくと肉がドロドロになってしまうので注意が必要です。
「ホッコリ・・・・」「ふっくら・・・・」と柔らかくなったプロック状の「牛すね肉」は筋繊維も発達していて、最もシチューには適している食材の一つです。





さて、まずは「デミグラスソース」だけを舐めてみようと思ったのですが・・・・お皿に添えられたのは「ナイフ」と「フォーク」のみで、「スプーン」がない事に気付きました。
あくまで、ソースは牛肉に絡めて一緒に食べて欲しいと言うことなのでしょうか・・・・。
仕方なく、ナイフとフォークで牛肉を切り分け、デミソースに浸して食べてみることにしました。

ナイフを入れると、牛肉は非常に柔らかく、肉の繊維を結び付けていたゼラチンが溶けた感じで、肉の繊維のささくれを美しく残しながら、「ハラリ・・・」「ホロリ・・・」とほぐれてゆきます。
5cm×4cm×4cmほどのビッグな一片を切り分け、フォークで口に運びます・・・・。
うーん・・・・これだけの大きな牛肉を、贅沢にも一口で、口中に「あふれんばかりに」頬張り、噛み締め、味わうと言う・・・・その行為自体が、胸を高鳴らせます。

舌の上に乗った牛肉は、軽く上あごと舌で圧力を加えるだけで、脂肪と筋肉繊維の部分毎に「ハラハラ・・・」「ホロホロ・・・」と柔らかくほぐれ、優しくゆっくりと分解してゆきます。
まず、「脂肪」の部分が「トローーーリ」と、液状化して舌の上でトロけてゆく食感は、これはもう・・・・例えようのない至福の味わいです。

そして、脂肪が一通り溶け終わると、舌の上には筋肉繊維部分のみが残され、それを肉汁や脂肪の余韻と共に「ホグホグ・・・」と軽く噛みほぐせば、 「ジュワ〜ッ」と口中の隅々まで濃い肉汁があふれ出て来ます。
これまた噛めば、噛むほどに、肉の旨味があふれ出て来て、美味しさの「第二幕」が上演され始めるイメージです。

ただ、牛肉自体はとても美味しいうえ、調理もパーフェクトなのですが・・・・こげ茶色をしたデミグラスソースは・・・・「苦味」が凄い「大人の味」です。
また「ブランデー」なのか「赤ワイン」なのか・・・・洋酒風味が割と強めに効かされています。このやや明確に効かされた「ブランデー」もしくは「赤ワイン」の独特な洋酒風味は、
純粋な和食の世界には絶対にあり得ない風味ですので、普段、洋食をあまり食べ慣れていない人にとっては、やや違和感を感じてしまう人もいるかも知れません。

また、肉は大きな塊りだったせいか「熱々」の状態でしたが、ドミグラスソースはやや温度が控えめでした。
おそらく冷たいお皿に広げて盛り付けられたため、冷たいお皿に温度を奪われてしまったようです。もう少しソースが熱々だと、「シチュー」としての醍醐味が一層堪能できると思います。

また、ドミグラスソースの量はたっぷりと注がれていてとても嬉しいのですが、フォークとナイフしか提供されなかったため、ソースをすくって食べる事ができず、やはり途中から店員さんへお願いしてスプーンをもって来て頂きました。
「ビーフステーキ」ならともかく、「ビーフシチュー」と名乗るのであれば、スプーンが付いても不思議はないと思うのですが・・・・。





さて、店員さんに持って来て頂いたスプーンで、改めてドミグラスソースだけをすくって舐めてみますと・・・・・。
うーん・・・・いかにも「本格派」と言う、一切の隙のない造り込みの印象です。

ただ、あまりにも濃く「煮詰め」られていて、味が密集し過ぎていて・・・・素材感が良く判りません。味の密度が高すぎて、舌の上で「サーッ・・・」と味が広がらず、味が「フワッ・・・」と展開しない感じです。

このルーの濃さ、やはり、牛肉と一緒に食べる事で、適度にルーの味が溶き延ばされ、丁度良い味覚濃度に落ち着くように配慮されているようです。
つまり、ルーそのものを「シチュー」(汁物)として味わうと言うよりも、あくまで牛肉を食べさせるための「ソース」として考えられているような気がします。

また、前回のハヤシライスで感じた、ゆったりとした「華やか&豊か」な味わい、寛ぎながら食べられる癒しのある豊かな美味しさ・・・・の路線を想像していたのですが、
今回のデミグラスソースには、あまりにも「遊び」がない感じで、あまりリラックスできず、食べていても気が抜けない印象です。
むしろ、旨味のパンチが控えめで、苦味と洋酒風味が支配する・・・・この感じは、前回のメンチカツの付け合せで登場したポット入りの「ソース」の味に近いですね。

味の構成としては、酸味や甘味はほとんど感じられず、ともかく「苦味」と「洋酒風味」が強いのですが、一方で、デミグラスソース特有の「コク」や「旨味」はそれほどでもないようです。
特に骨髄感によるパンチはさほど強くは感じられず、肉や野菜類メインで作ったルーと言う印象です。
また、かなり低塩分な口当たりなのは健康上は嬉しいのですが、その分、どうしてもパンチやキレが控えめになり、輪郭がグイグイと前に出て主張する感じではなく、味がやや大人しめに感じられます。


さて、食べ終えての印象としては・・・・・
前回のハヤシソースを、旨味や甘味のたっぷり感に比重を置き、より「万人」向けの、口当たりの良い判り易い美味しさに仕上げた「ミルクチョコレート」とすれば・・・・・
今回のビーフシチューは、例えるなら・・・・・「リキュール入りブラックチョコレート」のイメージでしょうか。

何とも言えない「ほろ苦さ」があり、深〜いビター感と洋酒の芳香に美学を見出せる大人向けの「味」・・・・
そしてその「味」を理解し、堪能できる選ばれし「大人」のための料理というイメージ・・・・です



(すべて完食)




↓続きあり






〜香味屋本店 その4〜




同上日 オムライス 2000円



さて、ビーフシチューを食べ終わる頃を見計らって、「オムライス」が登場しました。

おおぉ・・・・?これはまたシンプルな・・・・。

と思ったら、ソースが別のソースポットに入って登場して来ました。


ちなみに、初めて訪問する「洋食屋」さんでは、「オムレツ」を頼めば、そのコックさんの力量はほぼ判ると言う人がいます。
卵を溶いて焼くだけ・・・・と言う単純さゆえ「ごまかし」が効かず、卵の扱い、フライパンの扱い、火加減、焼きの技量・・・・・のすべてが「露わ」になってしまうと言うことなのでしょう。

特に、玉子の表面をいかに焦がさず、いかに滑らかに「ピカピカ、ツルツル」の見事な「鏡面状態」に仕上げられるか・・・・が腕の見せ所のようです。
そのため一流の洋食レストランでは、必ず、顔が映るほど「ピカピカ」に美しく磨き込まれた「オムレツ専用」のフライパンを用意していると言います。





ちなみに、オムライスには大きく分けて二種類の流れがあります。

(1)ピカピカ、ツルツルの鏡面仕上げの薄焼き玉子で、きっちりとケチャップライスをくるんだ「伝統派」「正統派」タイプのオムライス。

(2)半熟のプレーンオムレツをケチャップライスへ乗せて中央から割り広げ、半流動性の分厚い玉子で覆った「トロトロ」「フワフワ」タイプのオムライス。

輝かしい洋食の歴史を誇るこちらの「香味屋」さんでは、当然の如く、「伝統派」「正統派」タイプのオムライスが登場しました。
焦げムラや焼きムラもなく、ほとんど気泡やスもなく、均一な厚さに焼き上げられた見事な薄焼き玉子です。
何もソースをかけない状態ですので、玉子の甘い香りが鼻腔にあふれ返り、非常に美味しそうです。





まずは、ソースポットで、別添えにされて来たデミグラスソースだけを少し舐めてみると・・・・
うーん・・・・やはり、大人の「ビター・テイスト」です。

かなり「ズーン・・・・」と来る深い苦みのあるデミソースですね、もちろん他にも様々な味が混じっていますが、この苦味だけを表現すると、まるでコーヒー粉をそのまま舐めているようなイメージに近い気がします。
おそらくは、甘いチキンライスや玉子と、味のコントラストを描くように、意図的にややソースの苦味が強められているのかも知れません。

次にドミソースをかけて、いよいよオムライスを一口頂いてみました。
薄焼き玉子は、お店によっては1〜2mmの厚みしかないパリパリの薄焼き玉子を出してくるお店もありますが、こちらの玉子は3〜4mmほどのしっかりとした厚みがあるとともに、裏面はトロッとする絶妙な「半熟」状態になっています。

食べ進んでいくと、実は、このトロッとした裏面が、中のチキンライスを良く絡めて、玉子とライスに味わいの一体感を生んでいる事に気付きます。
しかも玉子に適度な厚みがあるので、スプーンで一口分をすくった時の、口に入る「玉子とライスの量のバランス」が抜群に良いですね。
玉子の香りや味わいも非常に濃く、これは相当に新鮮で黄身の濃厚な良い鶏卵を使っているな・・・・と言う印象です。

ケチャップで味付けされたライスは、お店によっては、やたらと「ベタッ」としていたり、「モッチャリ」とご飯粒同士がくっついてしまっている事が多いのですが、こちらは「ふっくら&パラパラ感」が残り、食感に「重さ」や「粘性」が全くないです。
また、甘いケチャップに含まれている過剰な砂糖分のせいで、ケチャップライスがやたらと甘すぎてしまうお店も少なくないですが、一切そのような「ジャンク感」もありません。





食べ進んで行きますと・・・・なんと、中から、大振りなチキンがゴロゴロと出て来てきました。これは嬉しいサプライズです。
この大振りチキン肉も、「ホクホク」「ホッコリ」とする歯応えと、チキンの淡白で上品な旨味があふれ返り、非常に美味しいです。
タマネギも大振りに切られ、シャンピニオンも負けじと大振りです。

すべての具がラージサイズで、特にチキンが大振りで量も多いので、食べていてとても「リッチ」な気持ちになって来ます。
この辺りの「具」の大ボリューム感は、前回の「ハヤシライス」と共通のコンセプトを感じます。

ただ、「玉子」「ライス」「具」の三者のバランスを考えますと、私が普段食べている庶民派オムライスは、「玉子」と「ライス」の二つがほとんどを占め、「具」は申し訳程度の極少量と言うパターンが多いですので、
それらと比較すると、「具」の存在感がやや大きく主張していて・・・・この「具」が存在を主張する感覚は「斬新」な気もします。
「オムライス」と言うネーミングのとおり、特に「ライス」をモリモリ食べたいと言う方には、具の存在ウェイトが大きすぎると感じられるかも知れません。

また、苦味の効いたデミグラスソースは、玉子やケチャップライスと混じる事で、確かに「ほど良い苦味」と感じられるようになりますが、
このデミソースが、大人の「ビター・テイスト」を醸しているため、甘いケチャップライスを使い、さらに甘いトマトケチャップをかけた「甘さ重視のオムライス」とは、ほとんど「別な料理」と言うイメージです。

ただ、あまりに「立派すぎる」と言うか・・・・家庭料理で出されるオムライスならではの「ホッ・・・・」とする「手作り感」や、裏通りの喫茶店などで出される「チープ感」「下町感」などが漂う、
いわゆる子供の頃に食べていたノスタルジックでほのぼのするような、素朴な「オムライス」の味とは異なるイメージです。

あくまで私的な価値観ですが、洋食の中でも、「オムライス」や「カレーライス」は、オフクロの味と言うか・・・・どこかしら家庭料理のイメージが付いて回る料理のような気がしています。
そのため、あまりにも高級な造りになり過ぎてしまうと・・・・むしろ、やや戸惑いを感じてしまう面があるような気がします。

そう言う意味では、こちらの「オムライス」は、玉子の香りや旨味が濃く、ゴロゴロ入った具の鶏肉やマッシュルームのリッチなインパクトもあるので、絢爛豪華な雰囲気があり、
いかにも一流の洋食シェフの仕事を感じさせる隙がない造り込みなので・・・・フラリと独りで入って食べると言うよりも、どちらかと言うと「記念日」や「大切な日」などに「かしこまって食べる」料理として頂く事で、より一層の真価を発揮するオムライスだと思います。
すべてに「一流の洋食」としての重厚さと調理技術を感じさせ、「大人の食事」としての品格のある味わいに満ちています。



(すべて完食)




↓続きあり






〜香味屋本店 その5〜




2006年6月中旬 パン 230円  + テールシチュー 温野菜添え 3500円

先日、「御茶ノ水小川軒」(文京区)と「厳選洋食さくらい」(文京区)でオックステールを食べましたので、こちらのお店のオックステールシチューにも興味が湧き、再び訪問してみました。
また、前回のビーフシチューのデミグラスソースで感じた、やや強めの苦味と洋酒風味が、単なる「味のブレ」なのか、「常なる味」なのか、確認してみたいと言う気持ちもありました。

ちなみに、「テールシチュー」はメニュー本体ではなく、「本日の特別の料理」リストの中に掲げられています。
合わせて、別オーダーで「パン」を注文しました。




注文してから、15分ほどで登場した「テールシチュー温野菜添え」です。
今まで「純白」の器ばかりが登場した、こちらのお店でしたが、初めて「絵皿」で登場です。

絵皿で登場する理由は判りませんが、デミソースをかけてしまうと、「普通のビーフシチュー」なのか、「牛尾シチュー」なのか判りづらくなってしまいますので、
その両方が同時にオーダーされて提供される時などに、間違いを防ぐためかも知れません。
今回はマッシュド・ポテトが若干アレンジされていますが、シャトー切りのニンジンやプロッコリー、デミソースの盛り付けなどは前回のビーフシチューと同一のものです。

また、ビーフシチューと同様に、ナイフとフォークだけが付帯して、やはりスプーンが付いて来ませんでした。
そこで、さっそくスタッフの方へスプーンをお願いすると、すぐに持って来て頂けました。





オックステールは、大きな塊りが「ゴロリ・・・・」と一つだけ鎮座しています。
前回と比較すると、ややドミグラスソースの量が控えめな気がします。

まずは、ドミソースだけを舐めてみました。味のイメージとしては、前回の訪問の時とほとんど同じ味に感じられました。
舌触りがとても濃密でパンチがあり、ドッシリとした重力を感じる「グラビティ・テイスト」ですが、加えて、やはり、「洋酒」と「苦味」がしっかりと効いています。
それにしても、ここまで洋酒風味を豊かに香らせるドミソースも珍しいのではないでしょうか。

初回訪問時に頂いたハヤシソースにも、おそらく同じドミグラスソースを使っていると思うのですが、さほど「洋酒風味」や「苦味」が主張しなかった事を考えますと、おそらくオーダー毎に小鍋にドミグラスソースを取り、一回一回、赤ワイン等をブレンドして、料理毎にソースの味を調整しているだと思います。

付け合せは、前回のビーフシチューと同様かと思ったのですが、よくよく見ると、マッシュポテトの調理法が異なります。
今回のものは、裏漉ししたマッシュポテトに茹でたポテトを粗く砕いたものをブレンドし、更にベーコンが混ぜてありました。
ホクホクする柔らかなマッシュポテトと、歯応えの残る茹でポテトの二種類の食感が楽しめ、ベーコンの旨味がコクを添えていて、美味しいです。





牛尾を、「骨」の側から見てみました。
「骨」の周囲をグルリと厚みのある肉が取り巻いています。シャンピニオンが二枚見えて判りづらいですが、真ん中の丸いものが尾骨です。

また、こちらのお店の特徴の一つとして、この「シャンピニオン」(西洋マッシュルーム)を多用することが挙げられると思います。
こちらのお店で頂く料理は、今回で五品目ですが、そのすべての料理に大振りのシャンピニオンが必ず使われていました。
「メンチカツ」も、添えられたソースの中に入っていましたし、オムライスもライスの中に沢山入っていました。





さて、いよいよオックステールをほぐして食べてみます。
「ホクホク」、「トロトロ」に煮込まれていますので、フォークでつっつくだけで簡単に身が骨から外せます。
うーん・・・・見た目からして、「赤身肉」、「脂肪」、「ゼラチン質」が入り混じるこの複雑な形状、これこそが「テール肉」の特徴であり、醍醐味です。

さて、ほぐした身を、いよいよソースにからめて食べてみます。

ハフハフ・・・・・ホグホグ・・・・・・。


おお・・・・柔らかいながらも適度な筋肉繊維を感じ、複雑な部位が入り混じって織り成す、味わいの「七変化」の妙味、そのコントラストが素晴らしいです。
要は食感が、単なる平べったいサーロインやフィレのように「単調」ではないのです。「円筒」状の尾の肉は、まるで良く出来たミニチュア模型のように、微に入り細にうがって、「尾の組織」が複雑に入り組んで独特な食感が形成されています。

そして、何とも言えない馨(かぐわ)しい匂いが尾肉から感じられます。
この馨しい芳ばしさは・・・・まるで、紀州備長炭が燃焼する香りが漂う、焼き立ての「鰻の蒲焼」の焦げたタレと油の香り・・・・を連想させられる素晴らしく良い匂いであり、食欲をビンビンに誘われる芳ばしさです。

生の状態のオックステールは独特な臭みがあるそうですので、調理の過程でいかに臭みを取るかが決め手らしいのですが、一切の臭みを感じさせないどころか、ここまで「芳醇な香り」「馥郁な匂い」に仕上げてしまう調理のテクニックの見事さに、ただただ感服させられてしまいます。

また、オックステールの醍醐味である「ゼラチン」もしっかりと堪能する事ができました。
ホグホグと肉汁があふれる旨味に混じって、「ネット〜リ」、「トロトロ〜ン」と柔らかくなった「ゼラチン質」や「軟骨」が舌の上で溶解していく口解け感が素晴らしい美味しさです。
しかも、こう言う「柱状」「短冊状」のゼラチンは他の肉の部位ではなかなかお目にかかれないですね。まるで、口の中でとろける最高級の「羊羹」(ようかん)のような・・・・舌の上で、「トロリ・・・」、「ネトリ・・・」として、食べ手の身も心も同時に蕩けるほど・・・・陶酔する美味しさの感覚です。





さて、別途オーダーした「パン」は三種類が盛り合わされて、ビーフシチューとほぼ同時に登場していました。
夕方の3時頃の中途半端な時間での訪問でしたので、どうやら焼き立てではないようで、いずれのパンも室温になっていました。

まずは、左端の「バターロール」から頂いたのですが、バターの風味が豊かで美味しいです。
ただ、割とオーソドックスで、さほどの特徴は感じられず、少しだけ食べて、後でオックステールシチューのドミグラスソースを拭って食べるためにとって置く事にしました。

右端の「黒パン」は、黒い色なのでココアか何かを使っているのかと思ったのですが、全くココア風味はせず、食べてみますと「ボソボソ・・・・」とする食感ですが・・・・何かのツブツブが練り込まれていています。
このツブツブ・・・・噛み砕くと、まるで「ミント」や「ハッカ」のような強い香りが揮発し、とても爽やかで健やかな香りが口中を「一陣のそよ風」の如く駆け抜けて行きます。
このボソボソする食感と、クールミントな芳香のコントラストが斬新ですね。

何が練り込まれているのか興味を持ち、ホールスタッフの方へ尋ねてみましたところ、「キャラウェイシードです。以前はホテルで焼かれるパン等にはよく使われていたのですが・・・」とのことでした。
また、パンの濃い茶色は何による色ですかと尋ねましたところ、「カラメルで色を付けております」とのお返事でした。
よく、ホールスタッフの方へ料理の質問をしても、即答できないお店も少なくありませんが、このようにスタッフ全員が、料理の内容にきちんと精通しているのは「さすが」です。

ちなみに、後日、この「キャラウェイシード」について少し調べてみましたところ、「ザワークラウト」などで、キャベツの匂い消しとして良く使われるハーブの一種で、「和名:ヒメウイキョウ」の種だそうです。
息をリフレッシュし、視力を強化する働きがあるそうで、そのため「恋人を失わない」魔法の力があるハーブとして古くから信じられているとか・・・・。
また、消化促進の働きもあり、パンでは、特に「ライ麦パン」と相性の良いハーブだそうです。





さて、今回の三種のパンの中では、中央の細長い「ロールパン」が、何とも「出色」の出来栄えでした。

厚い皮は「カパカパッ」に乾燥していて、パンに力を入れると、「パキッ」と乾いた音を立てて、簡単に切れ目に沿って折れます。
すると・・・・何か「ムニュー・・・」と粘って広がる白い物が現れ、まるで「コロネ」のように中身には何かクリームが入っているように見えたのですが、実はこれは、何とパンの一部なのでした。パンを左右に引っ張ると、この帯状の中身も「モッチーリ・・・・」と伸びて、驚くほど良く粘り、なかなかちぎれません。

食べてみますと、外側の厚い皮は、表面は「カパカパ」、「パリパリ」と乾いた食感で、ちょうど「カンパン」のような歯応えです。
この厚みある皮を、歯で「パキッ」「パカッ」と「割る」ようにして食べると、細かなヒビが入って「パリポリ、パリポリ・・・」と細かく砕け散り、まるで「ラスク」か「おせんべい」を食べるようです。
そして次第にこなれて来ると「ザクザクザクザク・・・・」軽い歯応えが連続し、さらには「サクサクサクサク・・・・・」と、まるで「サブレ」のようなサラサラの食感に変化します。

うーん・・・・まるで、「クラッカー」か「ビスケット」などの「お菓子」を食べている気持ちにさせてくれる感じで、これほど「噛む」のが楽しいパンは「初めて」です。
フランスパンのように、硬くて「グニッ・・・」と粘る皮の食感とはまるで異なります。
ともかく良く「割れる」「クラックする」大変に楽しい食感で、まさに「クラック」(ヒビを入れて割る)する醍醐味を堪能できる「クラッカー」の王様のような食感なのです。

さらに、この「皮」とコントラストを描くように、中身の部位は大変に良く粘る「つきたてのおモチ」のような状態で、舌に「モチモチ・・・」と絡み付き、歯に「しっとり・・・」と粘り付いて来ます。
「カパカパに乾いた」表皮と、「ムッチ〜〜リ」と良く粘る中身のコントラストがとても「新感覚」で美味しいです。おそらく、外側の部位と、中身の部位とで「小麦グルテン」の量を大幅に変えているのでしょう。
油脂があまり使われていないため、焼いたバターの芳ばしさはないのですが、良く噛んでいくとデリケートな甘味が湧き立って来て美味しいです。

今回は、冷めていてもこれだけ美味しいのですから、ぜひ一度、このパンを「焼き立て」「アツアツ」の状態で食べてみたいです。おそらく、想像以上のアミューズメントを持つ無類の食感を楽しませてくれることでしょう。





さて、「サプライズ」たっぷりの上質でユニークなパンの美味しさも素晴らしかったですが、同時に添えられた「フレッシュ・無塩バター」も、これまた「衝撃」の美味しさでした。

まずは、ステンレスの容器に「霜」が付いているのが見えますでしょうか?
容器ごとヒンヤリと冷たく冷やされているのですが、その「温度管理」が絶妙で、バターがカチカチに硬くなるほどの低温ではなく、まさしく「最適」な温度をきっちりと管理して、提供して来ます。実は「バター」は温度で食味が非常に大きく変化しますので、この「適温での提供」が非常に重要なのです。

どんな味のバターなのか、何気なく、一つをそのまま、舌の上に乗せて食べてみて・・・・数秒・・・・まさに「驚愕」してしまいました。

ヒンヤリと冷やされたバターは、最初こそ、ゆっくりジワジワと溶け始めるだけで、何も起こらないのですが・・・・・3〜4秒もすると、バター全体が口中の体温で温められ、ある温度を超えた途端に、まるで「手品」か「魔術」のように、一瞬にして、「サーーー・・・・」と、淡雪のように溶けて行き、まさに「一瞬にして」、口中から見事に姿を消し去ってしまいます。
この・・・・数秒のカウントダウンの後、「一瞬」にして起こる「無類の口溶け感」は・・・・まさに「超快感」のイリュージョン、ほとんど「エクスタシー」の世界ですね。

そしてその後は、まるで「幻影」か、「残像」のように、ただただ純粋な乳脂肪のピュアな「旨味とコク」だけが舌の上に広がって残っています。
しかも、このバターは「無塩バター」なので、まさしく「フレッシュ・ミルク」そのものの非常に鮮烈な美味しさ。その味わいは、一切の雑味が絶無で、見事に新鮮な「牛乳」の旨味のエキスだけを濃縮してその内側に閉じ込めたような・・・・実に非凡な「ピュア・ミルク」感です。
鼻腔にはデリケートなミルクの風味だけが、仄か(ほのか)に香って残ります。

普通に使われているバターはフレッシュさが少ないうえ、「味」が出るように多めの塩分が添加されているため、バターだけで舐めるとかなりクドい感じがあるのですが、こちらのバターは、凄まじくフレッシュな「純脂肪」オンリー、本当にスッキリとした後口で、舌に一切何も残りません。
やはり、本物の高級バターは、これほどまでに凄まじく美味しいのだ・・・・と、改めて確信させられる気分です。
正直、このまま「デザート」代わりに食べ尽くしたいほどで、パンに付けてしまうのがもったいなく感じてしまうほどの美味しさでした。

この超絶美味の「無塩フレッシュバター」・・・・・お店の方に確認をした訳ではないため、あくまで私的想像の範囲ですが、おそらくは・・・・・こと「乳製品」においては、私の最も敬愛する「よつ葉乳業」製のよつ葉バターではないでしょうか。
実は私は自宅用バターとして、過去、ありとあらゆる国産バターを使ってみましたが、結果として「四つ葉バター」が頭抜けて気に入り、以来ずっと「四葉バター」オンリーなのですが、それに極めて近い同じテイストを感じるのです。
少なくとも他の国産バターでは・・・・このレヴェルの究極的「純フレッシュミルク・テイスト」、まるで淡雪のような「イリュージョン的口解け感」を持つバターは一度もお目にかかった事がありません。

ちなみに、「無塩バター」の原材料は100%「牛乳のみ」、一切の添加物がない食品なのです。
植物油を無理やり化学的に変性させて作り出した化学食品の「マーガリン」とは、まさに「雲泥」の差ですね。
昔は健康に良いと宣伝されていたマーガリンですが、最近になって、実は一部のマーガリンでは加工する過程で有害な「トランス脂肪酸」が多く生成される事実が判明し、アメリカでは「トランス脂肪」追放の市民運動も起きるなどしています。
本物の「無塩バター」は、ちょっと大きなスーパーへ行けば、普通のバターとほぼ同価格で売られています。

上記の三種のパンと、この超絶美味バターが付いて、わずか230円とは・・・・超大バーゲンプライスなのは間違いないでしょう。
「ライス」よりも、「パン」の方が非常にお得だと思います。やはり本格派の「洋食屋」さんでは、「パン」が一押しですね。





さて、「テールシチュー」のデミグラスソースは、パンで拭ってきれいに頂きました。
残された牛の尾骨は、やはり海洋生物の「クリオネ」を連想させるユニークな形です。
かなり大きめの尾骨のサイズからも、今回使われていたオックステール肉の大きさが想像できると思います。

ちなみに、洋食の命と言われている「デミグラスソース」ですが、当然ながらお店によってその味付けは異なっており、むしろ「お店の個性」が正直に現れていると思います。
三回、こちらのお店へ訪問して確信したのは、こちらのデミグラスソースは、「ビター感」と「洋酒風味」が味の双璧を成しているということです。
苦みばしった味、馥郁たる洋酒の芳香・・・・・この「デミグラスソース」を使っているメニューの多くは、いかにも「大人の味」路線を標榜している味・・・・・だと思います。



(すべて完食)




↓続きあり






〜香味屋本店 その6〜




同上日 スパゲティ・ミートソース 1730円

さて、予定にはありませんでしたが、まだお腹に少しの余裕がありましたので、もう一品頼んでみることにしました。
色々と迷ったのですが、本格的な洋食店で、まだ「スパゲッティ」を一度も食べていない事に気付き、
高級洋食店の本格スパゲッティとは、どのような味なのか興味が湧き、注文してみました。





メニューを見てみますと、こちらのお店では、「スパゲティ・イタリアン」「スパゲティ・ナポリタン」「スパゲティ・ミートソース」「スパゲティ・ミートボール」の四種類のスパゲティがラインナップされています。
トマトソースを使う「ナポリタン」も定番ですが、ハヤシライスの美味しさを思い出し、ここはやはり本格派のデミソースを使うであろう「ミートソース」で注文してみました。

とても品良く盛り付けられた「スパゲティ・ミートソース」ですが、上に粉チーズと刻まれたパセリの葉が乗っています。
スパゲッティに、「パルメザンチーズ」(パルミジャーノレジャーノ)の容器を添えて出してくれるお店は多いですが、こちらのお店では、最初からチーズがトッピングされて登場しました。

ただ、チーズが溶けかかっているところを見ると、スパゲッティに良く使われる「パルミジャーノ」ではなく、「モッツアレラ」辺りなのでしょうか?





食べてみますと、「ミートソース」には挽き肉がたっぷりと使われて量感が豊か、味わいに肉類系のしっかりとしたコクがあり、それら肉や野菜の旨味と共に、絶妙なトマトの酸味が効いて、明るさを添えています。
ただ、先のシチュー類で感じたようなデミソースの苦味や洋酒風味は、ほとんど感じられませんでした。色合いからしても、デミソースではなく、別なトマトソースを使っているのかも知れません。

また、さすが、高級洋食店だけあって、「ミートソース」は言わずもがなの美味しさですが、「スパゲティ」自体も非常に美味しいですね。
高級感のある口当たりで、素晴らしいハリのある歯応えと共に、麺自体に馥郁とした旨味や甘味があります。
どうやら茹でた後に、軽くサラダオイルで麺を和えているようです。くっつき防止、乾燥防止、すする際の滑らかさ、などが期待できます。

また、ミートソースの挽き肉のコクとともに、溶けたチーズがとても舌に良くからみます。
そのため、食感や旨味がやや「コッテリ・・・」とも感じられ、溶けたチーズによる僅かな粘り気も加わり、決して上品なだけでなく、割と濃厚で骨太な味わいも併せ持っています。

つまり、ファミレスなどで良くお目にかかる、いかにもファーストフードチックで「ライト」なスパゲッティの食味ではなく、味にはしっかりとした濃厚な素材感と、「ヘヴィ」な量感があり、
きちんとした一つの「料理」としての「存在感」と「威厳」が感じられる仕上がりなのです。
ただ、全体的にはボリュームがそれほど多くはありませんので、他のメニューとの組合せを楽しめる余裕もあると思います。



(すべて完食)











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