01ch グルメ食べ歩き
平田牧場 コレド日本橋店
(東京都 中央区)

店名 とんかつと豚肉料理 平田牧場 COREDO日本橋店(ひらたぼくじょう)
住所等 東京都中央区日本橋1-4-1 COREDO日本橋4F 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2006年12月中旬 特厚ロースかつ膳 2500円  + 他




〜平田牧場コレドー日本橋店〜



2006年12月中旬 特厚ロースかつ膳 2500円  + 他

今回は、都内でも屈指の「美味しいトンカツ店」との呼び声が高い、巷で評判の「平田牧場日本橋コレド店」(中央区・日本橋駅)さんを訪問してみました。
ご存知、美味しい豚肉の代名詞とも言える「三元豚」を生み出した事で有名な山形県の平田牧場が経営する、平牧ファンにとっては、待ちに待った「待望の直営トンカツ店」です。

今回は、トンカツ好きの同行者二名と一緒に、三名で「夜の部」に訪問しました。
ちなみに、こちらのお店は「昼の部」と「夜の部」では、トンカツ定食などに微妙な価格差が設定されています。




お店は、コレド日本橋ビルの4階にテナントとして入居しています。
東京メトロの「日本橋駅」に直結した便利な立地です。12月も中旬と言う事もあって、廊下にクリスマスの「リース」が飾られていました。

コレド日本橋は2004年3月に、旧東急百貨店日本橋店の跡地にオープンした三十以上のテナントが入居する巨大ビルですが、正式な名称は「日本橋一丁目ビル」と言うらしいです。
なお、「コレド(COREDO)」と言うネーミングは、「CORE(中心)」+「EDO(江戸)」から来ており、「江戸の中心地」を意図しての命名だそうです。

建物内部は、日本橋と言う土地柄に加え、平日の夜と言う事もあるかとは思いますが、カップルや家族連れはあまり見かけられず、ほぼ9割超は会社帰りのOLやスーツ姿のサラリーマンのグループでした。
そのせいか、フロア全体がどこかしらビジネス街のアフター5的な雰囲気に包まれています。




店頭に置かれた「夜の部」のメニューです。昼の部はランチ用のメニューが飾られるのでしょう。

単なる「とんかつ」に終わらず、各種の豚肉料理や山形の特産品を使った一品料理も充実しています。
さらに「山形の地酒」をなんと十六種類も揃え、焼酎やワインも幅広く完備するなど、日本橋オフィス街のアフター5のニーズに応えています。




入店しますと、窓に沿ってカウンター席が続き、中央には大きな一枚いたのテーブルが鎮座していました。
ちなみに著名なグルメサイト「ホットペッパー」の店舗特集ページによれば、カウンターは27席、テーブルは20席あるそうです。
カウンター席がこれだけありますと、一人の訪店でも入り易いですね。

客席には、小壷に入ったとんかつ用ソースが二種類と、ガラス瓶に入ったサラダ用ドレッシングが二種類、それぞれ用意されています。
とんかつ用ソースは、白い壷の物が「甘口ソース」、茶色の壷の物が「辛味噌ガーリックソース」だとの事です。
サラダ用ドレッシングは、それぞれ「オニオン・ドレッシング」と「胡麻ドレッシング」との事でした。




左奥一帯に半個室のようなスペースがあります。
この日はそのスペースに近所の会社の「忘年会」のグループが入っていたようで、お酒が進んでいたのか、かなり賑やかでした。

天井が高いうえ、間接照明が使われていて、壁にはボトルが飾られるなど、雰囲気的には「とんかつ屋」さんと言うよりも、まるで「ダイニング・バー」のようです。
訪問する前は、いかにも「とんかつ専門店」的な、白木造りの和風のインテリアをイメージしていましたので、少々意外に感じられました。




メニューの1ページ目です。
「平田牧場」のご挨拶が書かれています。




2ページ目です。
「平田牧場」の本拠地である「山形」の酒の肴のページです。




こちらは「平田牧場」自慢の銘柄豚を使った一品のページです。
角煮や、から揚げ以外に、ソーセージやジャーキー、アメリカンドッグなど・・・豊富なバラエティです。




生ハムサラダや、しゃぶしゃぶサラダもあります。
「ご飯セット」を頼めば、定食を頼まずとも、夕食に出来ますね。




さて、いよいよ「かつ料理」のページです。
こちらは、世の多くのトンカツ好きを魅了してやまない「平牧三元豚」の定食ページです。

メニューの説明によりますと、「三元豚」とは、三つの品種の豚を掛け合わせた「三元交配豚」からのネーミングのようです。
特に肉質を重視した系統選抜により3種類の豚を選び抜き、「最高のもち豚」を実現したそうです。




メニューの左ページに写真も掲載されていました。
「かつ茶漬け」などの珍しいメニューは、写真があるとイメージがつかみ易くて良いですね。




こちらは、「平牧桃園豚」と「平牧金華豚」のページです。
平田牧場のHPを拝見しますと、いずれも自家養豚場で育てているようです。

いやはや・・・・定番人気の「三元豚」に加え、限定生産の極上「桃園豚」、そして名実ともに「幻の豚肉」と言われる非常に貴重な「金華豚」まで・・・・超ゴージャスなラインナップを誇ります。
これら、豚肉「プレミアムブランド御三家」とも言える超高級豚肉を自由に選んで、美味しいとんかつに揚げてもらえると言う・・・・まさしく、とんかつ大好き人間にとって「夢のとんかつ店」と言えるでしょう。

今回、私は、「金華豚のロースかつ」があれば、それを頼みたかったのですが・・・・無いようなので、桃園豚の「特厚ロースかつ膳」をオーダーしました。
よくよくメニューを見ますと、金華豚のロース肉は、どうやら7500円のしゃぶしゃぶコースでしか味わえないようです。
おそらく、非常に生産の難しい貴重な豚肉のため、ストック量が限られているのでしょう。

同行者の一人が、「金華ヒレかつ膳」(二枚)をオーダーしました。
こちらのメニューにも「超希少」とのコメントが付いています。




豚肉だけでなく、「大海老フライ」、「牡蠣フライ」などの海鮮かつ料理も用意されています。
「牡蠣フライ」は通年メニューなのでしょうか・・・。




平牧銘柄豚の「しゃぶしゃぶ」コースです。
私も自宅で、夕食に「銘柄豚のしゃぶしゃぶ」をする事がありますが、豚肉の味が純粋でストレートに味わえるのでお気に入りです。
ただ、それゆえ、一切のゴマカシが効かない分、本当に美味しい豚肉でないと、箸が進まないのですが、こちらの平牧銘柄豚なら、さぞかし美味しいしゃぶしゃぶに仕上がる事でしよう。

それにしても、各コースの「価格の差」を見ますと、いかに「金華豚」が貴重で、高価なのかが如実に判ります。




こちらは「串かつ」「串揚げ」などが入るコースです。
お酒とともに頂くには、ピッタリでしょう。




最後に「期間限定」の「平牧三種盛りかつ膳」メニューの案内がありました。
同行者のもう一人は、このメニューをオーダーしました。

飲み物のメニューは別にあったようですが、この日は誰も飲みませんでしたので写真は省略しました。





最初に「付け出し」と「胡麻」が出されました。
ゴリゴリ・・・・とゴマを擂りながらトンカツの登場を待ちます。

付け出しの左の物は山形名物の「ただちゃ豆」でしょうか?
食べてみますと、ツルツル、テカテカに光っている事からも判るように、結構硬くて、パリパリ、カリカリとする歯応えです。
一緒になった沢庵のこま切れがシャクシャクとして軽快な歯触りで美味しかったです。

真ん中のキュウリの漬物は、カリッ、コリッとして、紫蘇や酢などによると思われる鋭利な酸味のある味付けです。
油っ気の多い揚げ物の口直しとしては、唾液を誘う酸味が良い具合です。

一番右のベージュ色の粉のような物は、「藻塩」です。藻塩とは、焼いた海藻の灰を海水とともに煮詰めて作った塩で、そのためミネラルが豊富な塩になります。
トンカツに付けて食べる事になりますが、角がなく、柔らかく円い味の塩ですね。
そのマイルドな塩味とともに、「シャラシャラ、サラサラ・・・」とする独特な粒子感があって、「顆粒」のような舌触りが楽しめます。





さて、オーダーをしてから、約20分程でトンカツ膳が登場しました。
こちらは私がメインで食べた「限定平牧桃園豚のかつ料理」の中の一品、「特厚ロースかつ膳」です。

店員さんの説明によりますと、この「特厚ロースかつ」は200gの量だそうで、普通のロースかつは130gほどだそうです。
実際、「厚み」はかなりありますが、肉の「幅」が少ないので、断面を開いて見なければ、まるで棒状のヒレ肉のカツのようにも見えます。
なお、真ん中の一切れは最初から上に向けられた形で提供されました。

味噌汁はやや味付けが濃い目です。具は豆腐と布海苔(ふのり)でした。
なお、メニューの説明によれば、ご飯、味噌汁、キャベツはお替りも無料との事でしたので、ご飯と味噌汁を一回ずつお替りをさせて頂きました。





他の二品に比較しますと、衣の色が少々濃い目なのは、特厚切りの肉ゆえに、揚げ時間が長いからなのでしょう。
実際、三皿の中では、一番最後にやや遅れて登場しました。

同行者に一切れずつシェアしましたので、私が食べたのは三切れとなりました。

ちなみに厨房を確認した訳ではありませんが、キャベツは、いかにも「機械切り」と言う食感でした。
まあ、50席近い店内が、これだけ大勢の客で賑わっていれば・・・・全ての客のキャベツを包丁による手作業で千切りをするのは、困難でしょう。
口に含みますと、キャベツの食感の荒さ、目の粗さが感じられ、キャベツの品質と言いますか、味や香りにも特段の印象は受けませんでした。

また、キャベツにかける「ドレッシング」の味ですが・・・・二種類のうち、「オニオン・ドレッシング」は、まさに「玉ネギ」の風味と甘味が感じられ、ほんのりとした甘口に仕上がっていました。
パープルっぽい色合いから判断しますと、どうやら「紫オニオン」を使っているようです。
もしかしたらですが、隠し味的に微量のニンニクも混ぜているような気がしましたが・・・定かではありません。

もう一つの「胡麻ドレッシング」は、ゴマの優しい香ばしさと、酢の爽やかな酸味が同居していて、擂りゴマによるトロリとした粘度は少なく、意外にサラサラッとしていました。





肉が、見るからに、「ギュッ」と適度に引き締まっていて実に美味しそうです。
私は、ロース肉の場合、このように「赤身」と「脂身」が、くっきりと完璧に「分離」した、「ガッツリ」タイプの肉質が大好きです。
ロース肉のうち、スジの少ない良い部分だけをカットして使わないと、こう言うカツには仕上がりません。

逆に、「赤身」と「脂身」がまるで「バーコード」のように交互に入り組んだロース肉は、歯応えがブヨブヨしてしまい、最も苦手なタイプです。


さて、まずはこの「ロースかつ」を、何も付けずに一口食べてみました・・・・。


サクッッ・・・・・ザクザク・・・・・。

ハグハグ・・・・・・モグモグモグ・・・・・・。



う、ぅ、うぅ・・・・・。

こ、こ、これが・・・・・トンカツ業界にその名を轟かす、「平牧桃園豚」のロースかつ・・・・・。


いやはや、恐ろしいほどに・・・・・凄まじいまでに・・・・・究極的に「旨味」の強い味わいです。
「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」「旨味」・・・・・何と言うパンチのある「旨味」なのでしょう。

信じがたいほどの「旨味」と言うパンチが、私の「舌」を発射台として、「ズドドドドドドド・・・・・」と、地響きと噴煙を立てながら上昇する巨大なロケットの如く・・・・・
圧倒的なエネルギー放出感を伴って、一気に「脳天」まで突き抜けて行きました・・・・。


「な、なるほど・・・・」、「こ、これが・・・・」、「これが噂の桃園豚か・・・・・。」

うーん・・・・他の豚肉とは・・・・旨味のレベルがあまりにも大きく違い過ぎます。
まるで「イノシン酸のブラックホール」が口中に出現したかの如き・・・・想像を遥かに超えたスーパーヘヴィな「旨味の異次元凝縮体」テイストです。

さらに、「極厚」なので、肉汁をたっぷりと内包しているのでしょう。
まさしく、たっぷりと水を含んだ分厚いスポンジを搾るかのような・・・・旨味の奔流が決して一過性ではなく、噛めば噛むほど、ジューシーな肉汁(旨味)がドッサリと口中にほとばしり出て来ます。

また、トンカツと言いますと、大抵は、衣の香ばしさや、衣の玉子の甘味、塩や胡椒による下味などで・・・・肉の味を補強しているものですが、こちらのトンカツは「玉子の甘味」や「下味」がほとんど感じられません。
そういう「ノイズ」が一切なく・・・・ただただ「真摯」に、これほど「純粋」に・・・・活性化した「肉の旨味」だけを、舌に叩き付けて来るトンカツは初めてです。

そして、その「コークスクリュー・ブロー」のような旨味のパンチも凄いですが、上質なロース特有の非常に滑らかな舌触りも特筆されますね。
さらに、噛めば「モギュン、モギュンッ・・・」と弾力がとても豊か、それでいて決して硬すぎず、噛むごとに「サクサク、ホックリ・・・・」と繊維がきめ細かく良くほぐれて行き、そして次第にパラパラと短くこなれて、自然とノドの奥へと納まって行きます。

また、「脂身」も、舌に乗せて上あごとの間に挟み、ほんの少し圧力をかけるだけで、一瞬にして、「即刻完全液状化」してしまう・・・・口に残るスジやシコリの絶無な、最高に美味しい良質な脂身です。
ただ、脂身は結構少なめで・・・・どうやら事前の下ごしらえの際に、かなり脂身をカットしてから揚げたようですが、これほどに「絶品の脂身」であれば、むしろ是非、今の倍以上の厚みに「脂身」を残して欲しい気がしました。

この「平牧桃園豚」の美味しさたるや・・・・これぞ、まさしく「豚肉の王様」と呼ぶに相応しいと思います。
特に、ひとかたならぬ「旨味」の強さ、濃さ、パンチ・・・・過去に食べて来たあらゆる豚肉の中で、これほど、「旨味」の強烈な豚肉はなかったです。「桃園豚」の持つ優れたポテンシャルに加え、肉の熟成も完璧なのでしょう。
豚肉の「クオリティの高さ」で勝負した場合・・・・・うむむ、おそらく他のほとんどのお店を圧倒してしまう事と思われます。

ただ、今回の肉は、最も右端の一切れは、さすがにやや少しだけスジっぽさが感じられました。

また、衣は、一見すると「ガリッ」と言いそうな、厚くて硬めの衣に見えますが、実際には「サクサクッ」として、非常に軽く、とても歯切れの良いものです。
唇に触れた途端、「サラサラサラサラー・・・」と粉のように、お菓子のサブレのように崩れ、とても「明るい」食感で、歯触りを楽しくさせてくれます。

この「もろく壊れる」「ガラス細工のように砕ける」「パッと破裂する」感じの軽さと儚さを備えたデリケートな衣の食感は、万人に喜ばれそうですね。
香ばしさもあり、なかなか美味しい衣ですが、それでいて、肉を食べ始める頃には、「スーッ・・・」と姿を消し去って、決して肉の味の邪魔になったり、いつまでも出しゃ張り過ぎる事がありません。





肉の断面を見てみますと、中心部がまだほんのりとピンク色で・・・・まさに絶妙の揚げ加減です。
加熱により活性化して溶けた脂で、肉の表面が「テカテカ」と光っています。

さて、次の一切れは「藻塩」を付けて食べてみました。


サクッッ・・・・・ザクザク・・・・・。

ハグハグ・・・・・・モグモグモグ・・・・・・。


うぅ、おおおおお・・・・・。



口中いっぱいに、所狭しと・・・・・怒涛の勢いで疾走する「究極の旨味」の「スタンビート」・・・・・。
微量の塩によってテコの原理が発生し、絶品の旨味がさらに「増幅」・・・・・まさしく、豚肉の美味しさ・・・・いよいよ「ここに極まれり」と思える美味しさです。

非常に旨味が「濃厚」なのですが、しかも、それでいて・・・・あくまでも「肉の味」であるナチュラル感覚にあふれています。
つまり、決して人工的な「加工品」にはない・・・・自然界の「生き物の食味」と言いますか・・・・
噛めば噛むほど、はっきりと「肉の組織」の構成を感じ、「肉の内側」からこのイノシン酸系の旨味がドッサリとあふれ出て来る事に気付くのです。

要は、化学調味料を肉の表面にまぶしたような、人工的で上っ面な旨味のパターンではなく、豊富な肉汁による「豚本来の味」で、これほどのアミノ酸度を達成している事に衝撃を覚えます。
そのため、旨味は非常に強烈ですが、化学調味料とは異なり、食べ終えた後の舌の上は極めてスッキリしています。

ちなみに・・・・以前に、とあるスーパーマーケットで買ったトンカツを食べたところ、化学調味料が異常に効かされていて、僅か一切れしか食べられませんでした。
しかし、僅か一切れ食べただけなのに舌に化調感がへばり付き、いくら「うがい」をしても全く取れず、まるで舌に「ペンキ」を塗りつけられたかのような強い不快感に・・・・・半日以上も難儀させられた苦い経験があります。


さて、「藻塩」の次に「ソース」を使ってみました。
二種類置かれている「ソース」の味ですが・・・・「甘口ソース」はとてもフルーティです。やや甘辛ですが、それでも結構な甘口です。
おそらくリンゴなど何種類かの果物を使ってフルーティな甘味を出しているのだと思われ、とても口当たりの良いソースです。

もう一つの「辛味噌ガーリックソース」は、トマトケチャップのようなドロッとした舌触りで、最初に味噌独特の濃い味がドバーン・・・と押し寄せ、ゴマの香ばしさが続き、最後にニンニクの辛気が風味豊かに渦巻き、湧き立ちます。
この「三段階」に渡って繰り広げられるソースの味は、なかなか重厚ですが、ラストのニンニク風味が強めで、ほとんど熱を通していない生ニンニクのように辛気が強く感じられ、舌がちょっとジリジリ、ビリビリします。
パンチのある美味しいソースですが、あまりに味噌とニンニクの味わいが強すぎて・・・・どことなく、「ジャンク」っぽくも感じられます。
擂ったゴマを混ぜて食べますと、炒りゴマの香ばしさが加わり、さらにコクのあるソースに変化しました。

しかし、これらのソースをかけてしまいますと、せっかくのプレミアム豚肉の本来の美味しさのデリケートな部分が、どうしてもソースの強い味に埋もれてしまうような気がします。
むしろ、これほど「素のまま」で美味しいトンカツであれば、微量の塩だけか、もしくは何も付けないで食べるのが「ベスト」と感じました。

茹でるだけの「しゃぶしゃぶ」でも、高価な銘柄豚肉やプレミアム和牛等は、塩やタレに浸けなくても、肉そのものに濃い旨味のパンチや良い香りがあり、非常に美味しいです。
「究極のお肉」は、それだけで既に「完成形」の美味しさだと言う事なのでしょう。

一方で・・・・逆に、美味しくない肉ほど、「タレ」や「ソース」や「化学調味料」を必要とし、それらの調味料の味に頼る事になります。





ご飯のアップです。
食べてみますと・・・・全体的にはやや柔らかめですが、きちんと「外硬内軟」の見事な炊き上がりです。

特に表面が妙にモッタリ・・・と粘っておらず、米粒がきちんと一粒ずつピンッと独立して立ち揃っているのは良いですね。
そのお陰で、サラリ・・・とした口当たりなのですが、それでいて噛めば、絶妙な火加減でほど良くアルファ化したご飯のデンプン質のモチモチ感があり、噛むほどに、次第に甘味が強く感じられて来る美味しいご飯です。

ただ、以前に感動した「ぽん多本家」(台東区)のような、米の一粒一粒が「プチプチ、プッツリ・・・・」と弾けて、ギュギュッと凝縮していた旨味があふれ出すような・・・・感じは受けませんでした。
例えれば、高級料亭などで出されるような、高価な価格帯の米に特有の「光り輝く純白の」「ブリリアントな」ご飯の美味しさと言うよりも・・・・実に気取りのない、もっとずっと「日常的な美味しさ」に感じられます。

ここで、改めて感じたのは、同時に頂いた「味噌汁」も・・・・・高度な職人技を感じる「汁物」と言う味ではなく、もっと柔らかで、やや甘口で、やはり「身近な寛げる美味しさ」に感じられた事です。
つまり、こちらのご飯と味噌汁は・・・・修行した「プロ職人」の手による料理と言うよりも・・・・・どこか、家庭的な魅力、オフクロの味的な、下町的な・・・どこかしら「温かな美味しさ」と言う印象があります。

良い意味で、普段、「自宅」で食べていて美味しく感じる「ご飯と味噌汁」の再現と言うか・・・・
フレンドリーな美味しさで、肩肘張らない、「ホッ・・・」とできる、とてもリラックスできる馴染みのある美味しさです。





こちらは同行者の一人が注文した「限定平牧金華豚のかつ料理」の中の、「金華ヒレかつ膳」(二枚)です。

金華豚自体が、かなり「小型」の豚と言う事もあってか、ヒレ肉のボリュウムはさほど大きくはないですね。
肉が白っぽくなく、赤みが強い色をしています。

ただ、少々気になったのは・・・・カツを「斜め」に切っている事・・・・そしてさらに・・・・それを「広げて」盛り付けている事です。
カツを斜めに「笹切り」状にするのは、カツの断面積を大きく見せ、目の錯覚を利用して、カツを分厚く見せるテクニックの一つですね。
また、一つのカツを「大」と「小」に切り分け、「大」を目立つように上側に置くなど、この辺りの「盛り付けテクニック」は、なかなか研究されているようです。

せっかくのトンカツを、より魅力的にアピールするのは大切な事ですが、しかし、斜め切りにした切り口を広げて盛り付けてしまうのは・・・・
見栄えは良いですが、カツの「表面積」が大きく露出し、冬の冷たい空気に触れ続ける事で、肉が冷め易くなってしまうと思います。





一切れをシェアして頂き、食べてみましたが・・・・歯応えが「サックリ」と軽い感じではなく、「モギュモギュ」と硬めで、肉が引き締まっている感じです。
とても筋肉質で、やや歯応えがあり過ぎると言いますか・・・・全くトロける感じがなく、よーく噛んで食べる感じになります。

金華豚のメニューの解説には、「高級和牛のような美しいサシが入る・・・・」と書かれていますが、揚げる過程で脂肪が溶け出してしまうのか、決してジューシーではないですね。
実際、見ての通り、先の特厚ロース肉と比較しますと、肉の表面が溶けた脂で「テカテカ、ツヤツヤ」と光るような事が一切ありません。
そして、下ごしらえの際に肉を叩いているのか、肉の繊維の溝(亀裂)が大きいのですが、その溝の中にさえ脂っ気(肉汁)が絶無です。

うむむ・・・・もともと、脂の少ない「ヒレ肉」なので、ある意味予想通りとも言えますが・・・・ジューシー感がなく、バサバサして、やや火が通り過ぎたかのような、乾いた食感と受け取る人も居るかも知れません。
ただ、「ギュッ」と肉が引き締まっている感じなので、最初は判りづらいですが、よくよく噛んで行きますと、さすがに肉の味は濃いと感じました。
塩で食べるとサッパリとして美味しいですが、ソースだと重くなりすぎてしまう気がします。

今回、わずか一切れとは言え、長らく念願だった「金華豚のトンカツ」を食べられて、良かったです。
ただ、この金華豚のヒレ肉かつを食べて思った事は・・・・こと、「脂肪」の少ない「ヒレ肉」の場合、豚の銘柄や価格に基づく「味の差」は、割と生じにくいような気がする・・・・と言うことです。

つまり、どうやら「豚肉の味の差」とは、実は「脂身の味の差」に大きく左右されるようです。
そのため、脂肪のない「ヒレ肉」の場合は・・・・「高級豚」と「安価豚」の差が、私のような素人にはやや感じにくいのかも知れません。





こちらは、もう一人の同行者がオーダーした期間限定メニューの「平牧三種盛りかつ膳」です。

やはり、先の「金華ヒレかつ」同様に、目に見える断面の面積は大きいのですが・・・・「幅」が少ないために、実際のボリュウムは・・・・さほど大きくはないようです。
高価な豚肉とは言え、豚肉生産者による「直営店」ならではの、中間マージンを排した「お得感」をPRする意味でも、もう少しボリュームが欲しいような気がしないでもありません。
また、やはり切ったカツを広げて盛り付けているため、冷たい空気に触れ易く、やや肉が冷め易くなってしまうと思います。





三種類のカツのうち、一つだけ、「三元豚のしゃぶかつ」を一つシェアして頂きましたが、薄切りになっていますので、歯応えがとても「ソフト」で、「しんなり」として感じられます。
薄切り肉は、歯応えがとても「優しく」、アゴの弱い方にも食べ易くなりますが、やや肉汁が流れ出してしまいがちだと思います。

肉の味自体も十分に美味しいのですが、ただ、先の「桃園豚の特厚ロース」の直後と言う事もあってか、あまり大きなインパクトは感じられなかったような気がしますが、
巻き込んだ大葉(紫蘇の葉)の独特な香りが影響していて、肉のクドさがなくなり、とてもサッパリと頂けます。

他にも、メンチやヒレかつなど、柔らか系や脂少なめ系の肉を組合せている事から、「ガッツリ」とカツを食べたいと言うよりも、ふくよかで柔らかなカツを上品に食べたいと言う人に向いているメニューと感じられました。
どちらかと言えば、女性や年配者などを意識したメニューにも感じられます。




さて、食べ終えての感想ですが・・・・・
一言で「とんかつ屋」さんと言っても、安価で大衆的な豚かつを提供するお店から、高価な究極の豚カツを追究するお店まで・・・・・様々なお店が存在する訳ですが、
こちらのお店は、高価なプレミアム豚を全量使いながらも、席数の多さやメニューの多さ、ツマミ類やお酒の種類の多さから考えても判るように、ベテラン店主さん一人が、長年の修行で培った「芸術的な職人技」を駆使して、じっくりと調理したこだわりの「とんかつ」を堪能させる・・・・と言うお店とは、どうやら別路線と言う印象を受けました。

カツが厚く見えるようにカツを斜め切りにしたり、切り口をわざわざ客に見せるようにカツを広げて盛り付けるなど・・・・冷めにくさよりも、盛り付けの美しさを優先している事からも判るように、調理や盛り付けにどこかしら商業マニュアル的な部分も感じられます。
また、重要な脇役であるご飯や味噌汁、キャベツや漬物などですが、ランチタイムは1000円位からとんかつ定食メニューがあるようですので、どうやらその辺りの価格帯メニューでも赤字にならない事を念頭に、クオリティコントロールがなされているような気がします。
つまり、一部のトンカツマニア向けの間口の狭いお店と言うよりも、あくまで、巨大商業ビルの中のテナントとして、日常的な幅広い客層を想定した、万人向けの経営方針と言うイメージを受けます。
要は、美味しいプレミアム豚肉を、適正な価格で気軽にワイワイと、老若男女を問わずより多くの人が安心して楽しめるお店・・・・と言う感想を持ちました。



また、今回、非常に幸運にも、「桃園豚の特厚ロース肉」と「金華豚のヒレ肉」を同時に食べ比べる事が出来たのですが・・・・普段は「ヒレ肉派」の私でも、今回は圧倒的に「桃園豚の特厚ロース肉」の方が美味しいと感じました。
と言うよりも、「桃園豚の特厚ロース肉」の怒涛の旨味のパンチは、過去に食べて来たロース肉の中でも、確実に「最高峰」の、比類のない素晴らしい美味しさでした。
正直、「ロース肉って、本当はこんなに美味しかったのか・・・・」と愕然としてしまい、目からウロコが30枚は落ちた気分です。

では・・・・なぜ、今までの私は「ロース肉嫌い」だったかと考えますと、ズバリ、幼い頃に何度か食べた「品質の悪いロース肉」のカツを食べた経験がトラウマになっていたからです。
そのロースカツの脂身はブヨブヨして、臭くて、まずくて、しかもスジ張っていて・・・・食べていて気持ちが悪くなってしまいました。
何とか、まずくて臭い脂身を避けて食べようとしても、赤身と脂身が複雑に入り組んで全体に混ざり合っていて、嫌でも脂身が口に入って来ました。
それ以来・・・・トンカツと言えば、注文するのは必ず、脂身の全くない「ヒレカツ」オンリーになってしまったのです。

動物の「脂肪」とは・・・・その肉体の「貯金箱」、その生体の「履歴書」に該当します。
カロリーを貯金するのも脂肪ですが、同時に不純物や有害物質のほとんどは「脂肪」に蓄積するからです。
時折、新聞などで、マグロ、イルカ、クジラなどの大型の海洋生物について、体内から基準値を超える「水銀」や「ダイオキシン」や「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」などの猛毒物質の蓄積が報告されていますが、そのほとんどは筋肉組織や骨ではなく、ズバリ、「脂肪」と「内臓」に蓄積しているのです。

これと同様に、質の悪いエサや添加物、劣悪で不衛生な環境・・・・で育てられた不健康な「豚」や「牛」も、同様にネガティブ要素がすべて「脂肪」に溜まってしまい、「脂肪が不味い」「脂肪が臭い」のだと思います。

私は、今まで「ロースかつ」は美味しくないと思っていたのですが、それは単に「不味くて臭い」脂肪を持った品質の悪いロース肉を食べていたからだったのでしょう。
つまり過去、「本当に美味しい脂身」を持つ「ロース肉」を、私はほとんど食べていなかったのです。
それで、ロース肉はすべて美味しくないと思い込んでいたのですから・・・・何事も「無知」と言うのは恐い事です。

しかし、ここ数年で積極的にトンカツの新店を開拓したことで、美味しいロースかつに出会う機会にも恵まれ、徐々にロース肉を見直していたのですが、今回のこちらの「桃園豚の特厚ロース肉」が、まさしくロースかつの真価を知る「決定打」となりました。

以前に豚肉に詳しい知人から、「高級な豚と、安い豚の美味しさの最大の差は、赤身ではなく、ズバリ、脂肪の味の違いにある。だから高い豚肉を味わうならヒレ肉ではなく、脂肪の多いロース肉を食べると良い」・・・・と言われた話を改めて思い出しました。
実際、物の本によれば、「肉の味」とは、「脂肪の味」でほぼ決まるそうで、例えば、「牛」「豚」「羊」などの肉の味も「タンパク質」そのものの味は「大差ない」が、「脂肪」の味が大きく異なるゆえに、味わいや価格に大きな差が出るのだと言う栄養学者もいます。


結論として、今後は・・・・あくまで一応の目安ですが、
普及価格帯のトンカツ定食ならば脂身のない「ヒレかつ」を選び、逆に、高級価格帯のトンカツ定食ならば脂身のある「ロースかつ」を選ぶ事が・・・・
私の「とんかつ食べ歩き」の一つの指標となりそうです。



(すべて完食)










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